万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

あまりに酷い菅政権の国民軽視と権力の私物化-入国禁止問題

2021年01月09日 12時56分44秒 | 日本政治

 新型コロナウイルスの急速な拡大を受けて、日本国政府は、Go Toトラベルの停止と共に、海外からの入国者を原則禁止する措置をとることとしました。ところが、例外措置として、中国や韓国を含む11カ国からのビジネス関係の入国だけは認めるというのです。しかも、この特別措置、菅首相の強い意向が働いた、即ち、首相の‘鶴の一声’というのですから驚かされます。

 

 同措置が報じられますと、ネット上は騒然となり、批判の書き込みが殺到することになったのですが、おそらく、国民の凡そ全てが納得しないどころか、言い知れぬ怒りさえ覚えていることでしょう。緊急事態宣言の発令と時期が凡そ重なったため、営業時間の短縮や移動の自粛など、国民に我慢を強いる一方で、自らの地位や利権に関わる海外勢力に対して甘い菅首相の対応には、誰もが失望を禁じ得なかったのです。

 

国民からの反発を受けて、日本国政府も、申し訳程度にビジネス往来に関しても入国時のPCR検査の義務付ける方向に転じたものの、PCR検査は、感染初期段階では陰性となるため、同検査では、感染者の入国を100%防ぐことはできません。せめて2週間の待機期間を設けるべきなのですが、政府は、何としても中国からの入国を認めたいようなのです。弥縫策では国民世論の反発は収まらず、さらなる内閣支持率の低下も予測されるのですが、菅首相の‘正体’は、既に国民の多くによって見抜かれているように思えます。それでは、何故、菅首相の真の姿が国民に‘ばれ’てしまったのでしょうか。

 

第一の理由は、政府の説明に合理性に欠けているからです。例えば、日本国政府は、例外とされた11カ国からの入国を禁じる条件として、相手国の市中における変種株の感染拡大が確認されることを挙げています。その一方で、本日のニュースによりますと、新型コロナウイルスの封じ込め成功を内外に誇示してきた中国では、中国河北省の省都である石家荘市で新型コルなウイルスを理由として都市封鎖が実施されたそうです。

 

このことは、中国政府の発表とは異なり、同国では、変種株ではないものの、未だ新型コロナウイルスの感染拡大が収まっていない現状を示しています。WHOによる武漢調査を拒絶した理由にもコロナ対策を挙げていましたので、中国は未だに深刻なコロナ禍にあるのでしょう(もっとも、中国のコロナ対策は調査団拒絶の言い訳かもしれない…)。原種であれ、変異種であれ、新型コロナウイルの感染拡大が続いている、あるいは、都市封鎖が実施されている国からの入国を全面的に禁止されるべきは、合理的に考えれば当然のことです。入国禁止対象国には、変異種の市中拡大が未確認の国も含まれますので、日本国政府の対応は、一貫性がないのです(このままでは、たとえ中国にあって感染が爆発的に拡大しても、変異種でない限り、入国禁止措置をとれないことになる…)。

 

それとも、日本国政府は、中国政府の‘克服宣言’を鵜呑みにし、同国を安全国(現在レベル2)と見なしたのでしょうか。仮に、中国のコロナに関する感染情報を入手していなかったとすれば、日本国政府の情報収集能力は致命的に低いということになります。国民の多くは、ますます日本国政府と中国政府の両者に対して不信感が募ることでしょう。逆に、感染状況を正確に把握していながら例外措置の対象国としたのであれば、国民に対する重大な背信行為となります。中国に忖度し、日本国民を危険に晒したのですから。

 

そして、第一の理由に関連して第二に挙げられる理由は、菅首相が自らの‘強い意向’を以って例外措置を設けた点です。つまり、国民に対して合理的な理由を示して説明するのではなく、首相は、政策決定に際して自らの個人的な意思を通したことになります。公職にある者が権力を恣意的に行使したとなりますと、それは、権力の私物化を意味します。世論が反対している政策を首相が国民に押し付けたとなれば、国民の多くは、菅首相が国民のために働いているとは見なさず、何らかの私的な利益や人脈のために動く人物であると判断することとなりましょう。

 

また、第三点として挙げられるのは、特例国に対して入国禁止措置をとるには、相手国との交渉を要するとしている点です。入国管理に関する権限は、国家の主権的な権限であり、専権でもあります。国際法にあっても、安全保障や治安と並んで、自国の公衆衛生を脅かす場合には、国家に対して制限措置を認めています。入国禁止に相手国との交渉や合意を必要不可欠の要件とするならば、日本国政府は、永遠に中国からの入国を拒否できなくなるかもしれません。中国側は、日本国との交渉を拒否する、あるいは、決して合意を与えない可能性があるからです。相手国との交渉の必要性は、何としても入国禁止措置を回避したい菅政権の言い訳のようにも聞こえます。

 

かくして保守政党の政治家を装ってきた菅首相は、その真の姿が社会・共産主義に連なる親中派、かつ、ある特定の世界金融財閥とも通じるグローバリストであることを、日本国民の前に晒してしまったように思えます。そして、一事が万事、今後とも、独裁傾向を強め、同様の手法で国民を騙そうとするかもしれません。アメリカは、大統領選挙をめぐって大荒れの状態が続いていますが、日本国民も心して政治をウォッチし、国民の参加を強めてゆきませんと、気が付かぬ間に民主主義が消滅する事態に直面しかねないと懸念するのです。


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