万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

朝鮮戦争終結なら中朝同盟も終了すべき-朝鮮半島の非同盟地帯化案

2018年04月29日 14時49分18秒 | 国際政治
北朝鮮が核実験場を5月中に廃棄、米韓メディアに公開へ
朝鮮半島情勢については、未だの予断を許さないものの、米朝首脳会談では、アメリカ側も満足する合意、即ち、北朝鮮の非核化が実現するとする期待が高まっております。トランプ米大統領が合意に向けた自信を示す一方で、北朝鮮側も、核施設の5月中の廃棄を約すると共に、朝鮮戦争の終結と不可侵の確約さえ得られれば、核を放棄する意向を表明しています。

 北朝鮮に逃げ道や極秘開発を許すような中途半端な妥協には警戒を要するのですが、先代とは違い、スイスで教育を受けた金正恩委員長が、国際経済勢力とも手を結び、自己保身と鉱物資源等の経済利権の独占を優先するならば、“完全、検証可能かつ不可逆的な核廃棄(CVID)”に応じる可能性は決して低くはありません。そして、このシナリオが現実のものとなる時、考えるべきは朝鮮半島の将来像です。

 アメリカが、朝鮮戦争の終結を望むには、それ相応の理由があります。東西冷戦下の朝鮮戦争の当時にあっても、アメリカの若者たちが、海外で起きた戦争において命を落とす不条理さが問題視されており、トランプ大統領としても、できることならば自国民が韓国のために犠牲を払う状況は避けたいことでしょう。また、米韓同盟から生じる財政負担についても批判的でしたので、朝鮮戦争が終結されれば、在韓米軍の駐留費も削減することができます。そして、“北朝鮮の非核化”に留まらず、北朝鮮、否、その背後に控える中国の“朝鮮半島の非核化”の要求に応じるならば、韓国に対するアメリカの“核の傘”も外す必要があり、それは、米韓同盟の終了を意味するかもしれません。“韓国疲れ”も指摘されているアメリカの立場を慮れば、米韓同盟の終了も致し方ないと言わざるを得ないのです。

 朝鮮戦争の終結と同時に米韓同盟も終焉を迎えるとなりますと、最も懸念される事態は、軍事、並びに、経済大国と化した中国による朝鮮半島全域における支配の確立です。親北派の韓国の文大統領は、民主主義、自由、法の支配といった諸価値よりも“平和”を重視しており、歴代中華帝国から冊封を受けていた朝鮮半島の歴史を振り返れば、中国の傘下入りは吝かではないことでしょう。しかしながら、日本国にとりましては、自国の防衛線が一気に西水道まで下がるのですから、安全保障上の重大な転機を迎えます。日本国までもが中国の支配下に入るような事態ともなれば、アメリカもまたもはや太平洋を維持することはできず、国際秩序は一変することでしょう。しかも中国は、国際法を踏み躙る無法国家ですので、国際社会は軍事力がものを言う野蛮な世界に逆戻りするのです。

 となりますと、日本国こそ、野蛮と対峙する文明の最前線に位置することとなるのですが、独裁国家中国の世界支配を阻止するためにも、その前段階となる朝鮮半島全域の中国支配を未然に防ぐ必要があります。そこで考えられる方法の一つは、朝鮮半島の緩衝地帯化であり、米韓同盟の解消と中朝同盟の終結とをセットとし、半島全域を非同盟地帯化です。つまり、“朝鮮半島の非核化”のプロセスに緩衝地帯化を組み込み、最終的に、米中ロの何れの国も朝鮮半島に決定的な支配力を及ぼすことを防ぐのです。

 目下、メディアをはじめ国際社会の関心は米朝首脳会談に集中しておりますが、既に、その先を考える時期に至っているのかもしれません。たとえ同会談で合意に達したとしても、国際社会は、人類が培ってきた諸価値を破壊し、法の支配ではなく人の支配、否、独裁者の支配を是とする勢力の拡大という忌々しき事態に直面するかもしれないのですから。“平和”という美名の下で米朝合意が強欲な無法勢力に利用されぬよう、米朝首脳会談に臨むトランプ大統領には、是非とも、有効な予防策を講じていただきたいと思うのです。

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