万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

韓国文大統領の日韓慰安婦合意批判の意図とは?

2018年03月01日 15時46分09秒 | 国際政治
韓国大統領、日本を批判 慰安婦問題は「人道犯罪」
 本日3月1日は、韓国にとりましては、日本統治時代の1919年に大規模な独立運動が起きた日であり、祝日と定めています。毎年、この日には大統領による演説が行われるのですが、今年の文在寅大統領の演説は、竹島問題も然ることながら、慰安婦合意で決着したはずの慰安婦問題を蒸し返したことで日本国内では失望感が広がっております。

 文大統領曰く、「加害者である日本政府が『終わった』と口にしてはならない」とのことのようです。しかしながら、日韓慰安婦合意の文面には、当時の尹外交部長官の言葉として、「(イ)で表明した措置が着実に実施されるとの前提で、今回の発表により、日本政府と共に,この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。」と述べられています。“(イ)で表明した措置”とは、10億円に上る日本政府拠出の慰安婦財団の設立を意味しますので、韓国政府も日本国政府と共に『終わった』と述べているのです。

 また、日本国が“加害者”であるとする韓国側の前提も、客観的な立場からの事実確認を欠いているのですから(実際には、朝鮮人慰安所事業者が直接の加害者…)、一般の日本国民からしますと冤罪を受け、無念やるかたない思いがするのですが、国連での韓国の康京和外相の対日批判と言い、平昌オリンピックが閉幕した途端、韓国の対日姿勢は先鋭化しております。一体、韓国の方向転換の背景には何があるのでしょうか。

 そこで推測されるのは、北朝鮮との間の密約です。開会式では南北両国が統一旗の下で仲良く合同選手団がスタジアムを行進しましたが、閉会式では、両国は、ばらばらに行動したそうです。この光景は、両国の不和を表しているようにも見えますが、政府レベルでは、両国間の融和路線は維持されている可能性はあります。何故ならば、開会式での“分離”は、(1)北朝鮮に対して批判的であった韓国世論への配慮、(2)日米を含む文政権に対して猜疑的な関係諸国への遠慮、あるいは、(3)北朝鮮からの何らかの要求があったかもしれないからです。

 特に国際社会において今後の朝鮮半島情勢とも関連して問題となるのは、(3)であった場合です。文大統領は、南北首脳会談の実現を切望しており、この点に関しては、受託を与える側となる北朝鮮の方が優位な立場となります。となりますと、北朝鮮側が、既に何らかの条件を韓国政府に対して課している可能性も否定できず、その条件とは、反日政策への転換であったのかもしれないのです。北朝鮮としては、日韓関係が悪化すれば、日米韓の結束の一角を崩し、朝鮮半島有事に際して日本国の自衛隊の参加を阻止する土壌となりますし、南北両国とも、日本国を“南北共通の敵”に仕立て上げれば、平昌オリンピックで生じた国内の対北嫌悪感情を改善し、世論を南北融和路線に引き戻すことができると考えても不思議はないのです。

 以上は憶測の域を出ませんが、仮に韓国が北朝鮮側の意向を受けて反日に転じたとしますと、これは同時に、韓国が米韓同盟をも蔑にする可能性を示唆しています。真に北朝鮮を敵国と見なすならば、米国を中心とした同盟関係を瓦解させるような政策をとるはずがないからです。一連の動きの背後には、軍事大国と化した中国の思惑もあるのでしょうが、韓国の反日姿勢への転換は、今後如何なる事態が発生するにせよ、日本国は、もはや同国を一切信頼してはならないことを意味しているのではないでしょうか。

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