万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

原発ゼロと自動車のEVシフト-電力供給をどうするのか?

2017年10月08日 14時37分36秒 | 国際政治
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2040年までにガソリン・ディーゼル車の禁止を掲げたフランスやイギリスに次いで中国も自動車のEVシフトを加速させており、今日、各国の自動車メーカーも、開発競争に凌ぎを削っております。家電メーカーのダイソンまでも参入するとの報道もありますが、EVシフトへの道は、必ずしも平坦ではないように思えます。

 EVの最大の利点とは、“環境にやさしい”ことです。ディーゼルが主流であった欧州諸国では、自動車の排気ガスによる大気汚染は深刻であり、ガソリン自動車の運転規制にまで及んだフランスのEVソフトも、基本的には環境対策として理解されます。温暖化ガスとされる二酸化炭素のみならず、その他の有害物質も輩出しないのですから、クリーンな自動車の登場は“良いこと尽くし”のように見えるのです。しかしながら、燃料電池や安全性など、既に指摘されている様々な問題点に加えて一つ盲点があるとしますと、それは電力供給の問題です。

 政府は、現在、EV購入者に対する補助金制度を以ってその普及を後押ししていますが、現段階では台数が限られていますので、電力の問題については、然程に意識されていません。しかしながら、今後、急速にEVが普及するとしますと、否が応でも電力問題にぶつかることとなります。動力燃料としてのガソリンの消費が急減する一方で、電力需要は大幅に伸びると予測されるのです。この時、果たして、各国とも、十分な電力供給体制を準備することができるのでしょうか。

 仮に、再生エネ法の下で電力を増産しようとすれば、電力料金はさらに跳ね上がり、一般国民の家計を圧迫します。現状でさえ、若年層が自動車保有に消極である理由は、その経済的負担にあるとされており、EV保有のコストが上昇すれば、近い将来、一部の富裕層しか自動車を所有できない時代が到来するかもしれません。しかも、再生エネの乱開発により、日本国の景観は、太陽光パネルの大量設置によって著しく損なわれることになるかもしれないのです。また、家庭用太陽光パネルの普及という道もあるものの、それでは、アパートやマンションといった集合住宅に住む人の負担には変わりはありません。もっとも、余剰になったガソリンを火力発電に転用して電力供給量を増やす方法もあります。しかしながら、これでは、二酸化炭素の排出量がむしろ増加して大気汚染が進み、“クリーンな自動車”のメリットは半減します。

 今般の衆議院選挙では、希望の党は、原発ゼロを公約の柱の一つに据えています。加えて立憲民主党といった他の野党もこの政策方針にあるのでしょうが、EVの普及に伴う電力問題ついては触れてはいません。仮に、EV普及に伴う電力不足が現実化するとしますと、原子力発電は有力な選択肢となるはずなのですが、この選択肢を最初から放棄してしまって大丈夫なのでしょうか。今日の状況を見ておりますと、政治と経済、そして社会も、どこか現実から浮遊したような“プラン”だけが先走っているように思えるのです。

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