万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

企業戦略の”選択と集中”は正しいのか?-短期戦略と長期戦略

2014年10月18日 15時29分23秒 | 日本経済
 昨日も、日経新聞の社説では、日本企業再生の処方箋として、選択と集中をしきりに勧めておりました。収益性の高い部門に投資を集中し、その他の部門は速やかに切り離すように、と…。しかしながら、この戦略、果たして正しいのでしょうか?

 選択と集中の手法とは、GEの最高責任者を務めたジャック・ウェルチ氏が提唱したものであり、2000年以降、企業の経営方針として全世界で採用されてきました。おそらく、日本企業はこの方法の採用が遅れている、とする認識があるのでしょう。しかしながら、入社時に花形部門であった部署が、退職時には、リストラ対象部門となっている事例は少なくありません。また、以前は、日陰であった部署から、突然に新たな革新的技術やヒット商品が生まれることも少なくありません。市場や産業構造が変化しないと仮定すれば、短期戦略として”選択と集中”を実行することは、企業の最大のパフォーマンスを実現することになるのでしょうし、実際に、それを達成した企業もあるのでしょうが、前提を市場や産業構造は時間の経過とともに変化するもの変えますと、企業の変化への対応性という面において、”選択と集中”にはリスクがあります。恐竜の如く、何らかの劇的な変化に晒された場合、ひとたまりもなく絶滅する可能性があるからです。無駄なように見えても、企業内部に様々な成長の芽を育てていた方が、あるいは、周囲の環境の変化に柔軟に対応し、サバイバルには成功するかもしれないのです。

 短期的戦略の採用は、長期的戦略としては失敗することもあり、合理性や収益性の最大化が、時には、組織としての寿命を縮めることもあります。”選択と集中”の戦略については、変化への対応力の弱さの側面から、慎重に検討する必要があるのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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