万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

東京裁判は法の支配への過渡期にあった

2014年02月09日 15時29分08秒 | アジア
ライス補佐官、際立つ「親中」…防空圏批判なし(読売新聞) - goo ニュース
 安倍首相の靖国神社訪問を捉えて、中韓は、またも東京裁判におけるA級戦犯合祀問題を持ち出し、日本国の軍国主義への回帰とばかりにプロパガンダを張っております。アメリカもまた、中韓の”歴史戦略”に呼応するかのように、同盟国である日本国に対して不快感を示す場面が散見されるようになりました。

 以前のブログでも指摘したように、第二次世界大戦の戦後処理は、個人の戦争責任を問う戦争法廷が新設される一方で、従来の講和条約形式も踏襲されています。中韓の”歴史戦略”とは、歴史上の裁判の判決を絶対視することで、日本国を永遠に”戦犯国”として位置付け、講和条約や基本条約によって完全に終結させたはずの関係を、前者を根拠に蒸し返そうというものです。つまり、対日外交カードとして温存させ、韓国に至っては、あわよくば、請求権まで日本国に認めさせたいのです。もっとも、国際軍事裁判は個人を対象としておりますし(国を裁いているのではない…)、中韓は、東京裁判に参加もしていなかったのですが…。一方の日本国側にも、中韓が、”東京裁判”を外交カードとして利用している以上、この裁判の不当性を訴える動機が生じます。言われるままでは、日本国は永遠に中韓からの圧迫を受け続け、首相等が靖国神社に公式に参拝することもできず、最悪の場合には、国連憲章の敵国条項を盾に尖閣諸島を奪われることにもなりかねないからです。そして、国際法を無視し続けてきた中韓が、どの国よりも軍事裁判の判決を重視しているのは、この裁判が、勝者が敗者を裁くという形態であったからに他なりません。ここでアメリカが、中韓の”歴史戦略”に同調し始めますと、日米同盟は崩壊へと向かい、欠陥裁判であった東京裁判を根拠に、中国の武力行使が正当化されるという馬鹿馬鹿しい事態が生じるかもしれないのです。かくして日本国は、”東京裁判”を否定すればアメリカの反発を買い、”東京裁判”を認めれば、中韓からの圧迫と搾取に直面するというジレンマに苦しむことになったのです。それでは日本国は、この危機的な状態から、どのようにして脱出したらよいのでしょうか。

 問題提起を通した脱出方法の一つは、東京裁判が、国際社会における法の支配への過渡期にあったことを主張することです。1946年当時にあっては、国際司法制度は未整備であり、軍事法廷は決して公平ではありませんでした。戦犯の判決を受けた人々の刑の執行と赦免を以って、判決を完全に過去のものとするれば(実際に、法的には終了している…)、中韓は、この判決を現在の外交カードとしては使用できなくなります。それでも中韓が、判決の効力の永続的な拘束性を主張するならば、ICJ等に対して東京裁判の再審を求めるのも有効な手段です。戦後68年を経て設置される軍事裁判の再審では、当時知られていなかった事実も判明しているのですから(再審請求の根拠でもある…)、判決は違ったものになるかもしれません。最近の米中接近による”東京裁判”の永続化と絶対視は、戦勝国による戦争法違反を不問に付した68年前の誤りを、現代においても繰り返させる危険性があります。”東京裁判”を法の支配の確立に向かう過渡期の出来事として過去の時点に釘付けにし、将来に向けての反省材料とする方が、はるかに国際社会の平和と安全にとって有益であると思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村

 
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする