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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国説―エジプトの混乱は民主主義が原因?

2013年07月04日 15時41分25秒 | 国際政治
同胞団与党党首も拘束=メンバー300人に逮捕状―各地で暴動、死傷者・エジプト(時事通信) - goo ニュース
 中国の共産党系の機関紙である環球時報によれば、エジプトの混乱の原因は、民主主義の導入にあるそうです。果たして、この見解は、正しいのでしょうか?

 世界を見渡してみますと、民主化によって安定を得た国の方が多く、完璧ではなく、改良の余地が残るにせよ、民主主義体制は、人類が試行錯誤の末に到達した統治体制と言うことができます。エジプトの混乱は、民主化への移行に失敗したのであり、民主主義の導入そのものが原因ではないのです。重要なことは、何故、エジプトが民主化の入り口で躓いたのか、その要因を探ることです。エジプトの場合、モルシ前大統領を輩出したムスリム同胞団が、民主主義に対する理解が浅かったという問題があります。民主化とは名ばかりで、”ムバラク独裁”から”モルシ独裁”への移行であれば、たとえ選挙を経て選出された大統領であっても、国民の不満が高まるのも当然です。また、エジプトでは、ムバラク大統領時代から、政治を軍が支える体制が敷かれており、今回のクーデタは、民主化以降も軍の影響力が根強く残っていたことを示しています。国内の政治的な対立が、安易に軍事力によって解決されてしまう土壌が、エジプトにはあるのです。さらに、イスラム諸国共通の問題として、政教分離に対する国民の考え方の違いが、イスラム派と世俗派の間に深刻な亀裂を生んでいます。これらの他にも、おそらく、エジプトの地政学的な立場など、様々な要因が絡んでいることでしょう。

 中国の見解は、エジプトの混乱の責任を民主主義に押し付けることで、国内の民主化要求を抑え、合わせて一党独裁体制への支持を取り付けることなのでしょうが、今後、一党独裁体制を強化したところで、中国が抱える問題が解決されるとは思えません。中国に必要なことは、民主主義を頭から否定するのではなく、エジプトの経験を教訓に、混乱を回避するソフト・ランディングの民主化手法を編み出すことであると思うのです。

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コメント (4)
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