万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

救い難い悪循環に陥る中国―対中感情の悪化

2012年06月29日 11時04分33秒 | アジア
「民意破壊しているのは誰」 尖閣問題で人民日報が批判(朝日新聞) - goo ニュース
 世論調査によると、8割を越える日本人が、中国に対して悪い感情を抱いており、過去の調査と比較すると、その比率は上昇傾向にあるそうです。この対中感情の悪化を憂慮してか、中国共産党の機関紙「人民日報」は、早速、「民意を破壊しているのは誰か」というタイトルの論評を掲載しました。対中感情の悪化の原因は、日本国の政治家にある、と。

 中国側の論評では、悪化原因として、東京都による尖閣諸島の購入計画や都議の視察などを挙げていますが、そもそもの原因は、70年代における中国側の尖閣諸島に対する突然の領有権主張とその後の既成事実化にあります。ここ数年を見ましても、尖閣諸島沖での中国漁船と海保との衝突事件や海洋監視船の派遣など、中国側の挑発とでも言うべき事件が後を絶ちません。日本国では、中国ほど厳格に情報が統制されているわけではありませんので、中国側が日本側に仕掛けた行動の大半は、日本国民の知るところとなっています。ですから、”日本国の国民は実際には親中であるにも拘わらず、一部の政治家の行為によって反中に誘導されている”とする中国側の見方は成り立たないのです。日本国を政治家=悪と国民=善とに分離する方法は、日中戦争以来の伝統的な中国の分断戦術ですが、民主的で自由な国家である日本については、もはやこの見方は通用しません。中国側の批判は、日本国民の感情をさらに悪化しこそすれ、改善には何らの貢献もしないのです。そして、中国政府は、自らが自国民の民意を破壊していることに対しても、無自覚でもあります(日本を悪者に仕立て、反日感情を煽る…)。

 このことは、論評の問いかけ―「民意を破壊しているのは誰か」-の回答は、中国自身であることを物語っています。責任逃れのための国内向けの論評なのでしょうが、自己保身のための言い訳しかできない中国は、対中感情悪化へ対応がさらなる感情悪化を呼ぶという、救い難い悪循環に陥っているように見えるのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする