万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

裁判員の守秘義務は必要?

2009年05月21日 17時52分16秒 | 社会
陪審制「発祥」の国 英国 生涯、内容口外できず 事件・裁判報道も規制(産経新聞) - goo ニュース
 個人の犯罪行為に対して刑罰を定める刑法が公法に分類されている理由は、それが、”公共の安全”、つまり治安の維持と結びついているからです。ここに、刑法の、犯罪者を裁くという役割と、社会秩序を維持する役割という二つの役割が見えてきます。陪審員や裁判員に対する守秘義務の如何の問題は、この二つの役割の間の摩擦と無縁ではないように思えるのです。
 
 陪審制度発祥の地のイギリスでは、上記の記事にあるように、陪審の評議について、陪審員は一切口外してはならないという厳しい法規制があります。一方、アメリカの制度では、憲法で保障された言論の自由に鑑みて、陪審員には守秘義務が課されておらず、報道機関に対しても自由な発言が許されています。言わば、イギリスでは、刑事事件の被告を中立・公平な立場から裁くことに重点が置かれており、アメリカでは、報道などを通して国民に情報を提供し、社会内部の問題として共に解決することに関心が払われているようです。刑法と社会秩序の関係をどのように捉えるかによって、守秘義務のあり方も180度異なるのです。

 さて、我が国の裁判員制度では、司法の民主化を掲げて国民の裁判参加を義務付けた点を考えますと、社会性を重視したアメリカ型を採用し、守秘義務の撤廃、あるいは、緩和した方が、制度導入の趣旨には合っていると言えるかもしれません。もし、中立・公平な裁判の実現を優先させるならば、職業裁判官による裁判であっても構わないのですから。

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コメント (4)
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