万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

巨悪を退治できない国際社会

2007年07月22日 17時23分46秒 | 国際政治
 ”悪”とは、それがまだ小さいうちは簡単に摘み取ることができますが、ある一定の大きさを超えると、それを退治するのがひどく困難になるものです。何故ならば、”悪”に敢然と立ち向かう側も、自らの犠牲を覚悟しなくてはならなくなるからです。このため、”悪”は、それが巨悪であるほどのさばる、というパラドクシカルな結果になるのです。
 
 国際社会を見ましても、この側面は顕著に観察されます。通常兵器しか備えていない小国とは違って、物化学兵器などの大量破壊兵器を保有している国に対しては、正面切って対決することに及び腰になるケースが少なくありません。巨悪と化した国家は、大量破壊兵器を保有したあかつきには、相手の犠牲を盾にとって脅迫カードを切り、一方、対する側は、犠牲を厭う国内世論が反対して身動きがとれなくなる場合もあるのです。

 さて、我々は、どのように巨悪と対峙するべきなのでしょうか。自らの犠牲を最小限としながら、巨悪を排除する手段を真剣に考えませんと、いつの間にか、邪悪な者の支配する世の中になってしまいます。巨悪には巨悪の弱点がありますので、例えば経済制裁や情報戦などにり、巨悪を自己崩壊に導くなような方法も準備しておく必要があるかもしれません。それでもだめなら、戦うしか道はなくなります。 

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