うるう年の月末最終午後6時。職場の窓から見える、吉野川が真っ白。
見事な雪が 降り始めていた。
『菜菜さんっ、祖谷に帰れんようになるよっ!早くおいて、帰りなよっ!!』
「こんなん、雪のうちに入りません~大丈夫です~♪」
と 軽~くほざいたから、バチが当たった。
木々に積もった、雪の華を観賞しながら、ちんたらと西祖谷まで、スイスイと積雪の路面を、走っていた。
途中で這う様に走る、ノーマルタイヤらしき車を2台追い越して、ココロの中で、その運転手に、呟いた。
『山の冬は、しぶといのじゃ~ちょっと良い天気が続いたからと、油断するなよ~このド素人が~』
と 軽~く呟いたから、
バチが当たった。
…
…
かずら橋を過ぎた辺りから、
正式に話せば、東祖谷に入った辺りから、様子が一転。
前方が 見事な猛吹雪!!
辺りは真っ暗。
ライトを高めにしても、どうにもこうにも、
前が 吹雪で見えない。
前方をゆっくりと走っていた、プリ○ス?も、広い場所で、ウインカーを点け、止まった。
仕方がないから、追い越して、吹雪の中を前進する。
頭の中で、色んなことを、考えた。
早い話が 覚えている カーブを思いだしながら、
(勘)だけを頼りに、運転した。
前屈みになって、前を必死で見ても、現状はなんら、変わらない。が、なぜか 前屈みになって 前を見て走る。
見てと言うより、前を睨んで走る。
凄まじい吹雪が舞う。
停止。
一瞬、前方が見えたら、見えた場所まで、スピードを出して、走る。
再び 猛吹雪。
街灯がチラッと見える。
あの家の前のカーブは、右だから、右に緩やかに。
この辺りは クネクネ道だから、ゆっくり這うように、走る。
ほとんど (勘)のみ。
遠くで民家の灯りが見えるのに、なんて 孤独な時間。一人で 遭難ごっこをやっているみたいな、悲壮感。
でも、走る。
後方のプリ○スのライトは、全く見えなくなった。
対向車に 二台あった。
なんか、ちょっと 安心する。遭難ごっこの同志がいるって、めちゃくちゃ 心強い。
※お互いに、このシチュエーションでは、何の役にも立たないが。
小島トンネルの灯りが、見えた!
あそこまでは、ほとんど真っ直ぐ。
灯りを目指して、吹雪に激突していく。
小島橋は、真っ直ぐだから、気分絶好調で、ガンガン走る。
再び 猛吹雪。ストップ。
おまけに 工事中で、道路のラインが、正確に掴めていない。
が 走る。こんな事になるのが判っていたら、真面目に工事現場を見学していたのに~と反省した。
一瞬視界が開けたら、そこまでダッシュする。
自動販売機の灯りが、見えた!
このカーブは、余裕でクリア~
ここを過ぎたら、龍宮トンネル。
めちゃくちゃ 嬉しかった!
長い歳月、小島トンネルも、龍宮トンネルも、何百回も走っておりますが、
『トンネル~ありがとう~』
って 初めて心の底からトンネルに、感謝した。
所要時間、1時間40分。吹雪との、格闘を終え、無事に家に 帰り着いた。
日中も、マイナス気温に包まれて、まだまだ、冬は終わらない。
オッサン化した、本能で、頑張って 通勤します。
祖谷の暮らしを 伝えられなくて、ゴメンなさいませ~
か し こ