秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

祖谷の山々に想う

2009年06月29日 | Weblog
早朝5時過ぎから登りはじめて約2時間ほどで中腹にたどり着いて
汗ばんだ額をぬぐい冷たい水で喉を潤し一息ついた栗栖は周辺の景色を
眺めていたが、曇り空に薄い藍色をした剣山、次郎笈がシルエットの
ように浮かび上がっていた。

登山道の両側から延びた木々が頭の上で握手して飾り窓越しに眺めやる
祖谷の山々に自然と敬虔な祈りを覚えた栗栖は暫し瞑想に耽った。
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祖谷の山々に想う

2009年06月26日 | Weblog
懐かしそうに昔の匂いは無いものかと辺りを探りながら、目と鼻を
うろうろさせてみたがもう何十年も経っているであろう祖谷の山々は
変わり果てて面影も残って無い様子に、栗栖はがっかりもしたが何か
さばさばしたようで、構わずどんどんと樹林の中を歩いた。

以前この辺りに可愛らしい綺麗な紅のヤマシャクヤクが群生していて
驚かしてはいけないと遠くからそっと眺めて花たちと静かな会話を
楽しんでいたものだが、それも束の間で街からどっと押し寄せて写真は
撮るは、踏み荒らすはして、可哀想に花たちは次々と消えて無くなった。

来栖が山を下る頃には土地の人たちの話では絶滅するのは近いと云っていた
が、眼の前には際限も無く闇を穿く冥界のようになっていた。

山頂に近づくにつれてあたり一面四方八方から登山道らしい道が交差して
以前は一本か二本の登山道であったのに、ずいぶん変わったものだと感心
して、闇の向こうから来る人に尋ねたところ何十年か前彼方此方で綺麗な
花たちが絶滅した頃と間なしに団塊の世代と云われた人たちによって無茶
苦茶に付けられ、山を台無しにしてしまったそうであるらしい。

栗栖は苦笑していた、道理で頭の上を闇が際限も無く流れて冥界である
ことを示唆していたわけだ。
祖谷の山々の風景や花々を密かに葬ってきたどうしがすれ違ったような
うすら寒さを背中に感じて栗栖は慌てた。


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祖谷の山々に想う

2009年06月24日 | Weblog
山の贈り物とhideさんの作品
作品A



作品B

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祖谷の山々に想う

2009年06月21日 | Weblog
「坊主、早う寝んか、明日は早いんだろう」7歳の息子に栗栖は声をかけた
が、とうちゃん何か話をしてよとせがまれて、そうだな、坊主には難しいかもな
と云いながら話し出した。

むかしむかし、そう遠くない昔だがな山のなかには綺麗な花々が仰山咲いて
仲良く生活して楽しく暮らしていたもんだ、花粉を運んで子孫を増やしてくれる
蝶や虫たちも花と仲良くしていた良い時代だったな。

それがあるとき、街からハイテクに包まれた蝶が来てな、群生している花々に
カメラでパチパチ写してインターネットに載せはじめたのよ、そしたらどうだ
我も、われもとどっと押しかけて来たのさ、中にか新聞でツアーを募集して
やってくる始末でな、あっというまに踏み荒らされて花の仲間が半分になって
しまったな、その場所から消えてしまった花たちが彼方此方で出始めたわけさ。

なにしろ、ハイテク蝶たちには花も太刀打ちできないよな、花たちはお願いする
しかなかった、どうかわたし達を表に引っ張り出さないでください、わたし達は
静かにそっと暮らしたいのですから、スポットライトを浴びて華やかになりたい
とは思いません。どうか見つけないでください、知れることなく静かな生を
送らせてくださいとお願いするしかなかったわけだな。

でもな坊主、そうは問屋は許さないな、貪欲なハイテク蝶は喰らいついたら
放す訳もないね、そんなわけで山の中から花々が消えてしまう時代がくるかも
しれんな。

栗栖は半分眠りこけながら「どうだ坊主眠くなったか、」
「とうちゃん、落ちがないよ、落ちがないと面白くない」
「そうだな、落語、漫才のような落ちは無いけどな、まあすべてのものには
死が待っているということだな。
坊主、間違うたらあかんぞ!生があるから死があるんじゃあないぞ
死があるから生があるんだぞ!」

7歳の息子はいつの間にか寝息を立てていた、たわいもない寝顔をながめながら
栗栖も眠りにおちた。
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祖谷の山々に想う

2009年06月20日 | Weblog
はて、それは奇妙な風景であったが、すっきりしているというか
何ともさばさばしたものであったのだが、広大な範囲で死んでいる。

栗栖は何十年ぶりかで、東祖谷の山々を眺めていたが背筋に戦慄が走るのを
どうすることも出来ず、蹲ってしまったものである。
山が死ぬなんてことがあるのかと思ったが現に目の前に佇んでいる山々は
死んでいた。栗栖は躊躇していたが山に足を踏み入れてみて驚いた。

人々が数珠繋ぎになり、うな垂れて歩いているではないか、栗栖はそのなかの
一人に聞いてみると風景も花も無いので写真が撮れないから手持ち無沙汰で
面白くもない、で前の人の足跡を見て歩いているらしい。
栗栖はなんとも奇妙な光景を眺めて、すっきり、さばさばしたものである。
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祖谷の山々に思う

2009年06月11日 | Weblog


祖谷の山々が時空の彼方に消え去るのは何時の日だろう
ボロボロに傷み、汚れ、疲れ、断末魔の雄たけびを上げて
滅亡するのは何時の日だろう。

美しい木々、花々も失せて、昔日の面影なく、慈愛の心なく
黒い塊の醜い残骸となって消え去るのは何時の日だろう
すでに兆候は現れているようだ、そう遠くない何時かの日だろう。
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祖谷の山々に想う

2009年06月05日 | Weblog


  二人で歩いた 祖谷の山旅
  春には可憐な 花が咲き
  君は花に   微笑かけて
  僕は山に   風を感じた

  二人で歩いた 祖谷の山旅
  新緑けむる  峰峰に
  山の夢二人の夢 話したね
  熱き想いを  瞳に秘めて

  二人で歩いた 祖谷の山旅
  山に抱かれ  歩く幸せ
  花いっぱいの お花畑で
  恋しい想いを 打ち明けた

  二人で歩いた 祖谷の山旅
  夕暮れせまる 三嶺の小池
  ひとり佇み  君を想う
  明日は君に  逢えるだろう
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逆転の風景

2009年06月04日 | Weblog


無音の切迫感が太い幹を貫いて天空に突き刺さったが空虚の感触に
うろたえたものだが、いまさら何をほざいて訴えているのやら
黙っていれば良いものを、いったい誰に話しかけているんだ、さあーて
あなたの後ろのあなたに呼びかけているのでしょうよ。

いまどきそんな風流なことを話す御仁が山里に居るものかと聞いてみると
ああーあのひとは遂、先だって亡くなりました、今頃は三途の川を渡って
いるころでしょう。
なあんだ、死んでいるのか、死んでいるのに話し声が聞こえるのかと訝ると
それは逆転の風景ですよ、ほれ、天空に刺さっているでしょう。
一瞬わたしは頭から足先までをうろうろと眺め回したが地面と天空の境目が
判らずあたふたと探しても埒が明かずに、ままよ、どうにでもしてくれと
ふて腐れた顔を死神は苦笑してお前さんも踊れ、それが応分の報酬というもんだ。

生あるものの往生など何時とも知れぬ、今日か、明日かと訊ねても愚かなことよ
と云われて、それもそうだと神妙に観念して否が応でも踊らにゃなるまい。
大向こうを唸らす器量など元からありもしないが地獄に一抹の涼風でしょう。
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老木

2009年06月02日 | Weblog
わしも充分に生きてきたな往生際が悪いと云えばそれもそうだな
まあ、もう少しの辛抱だそのうちあっという間に往生するだろうて
しかし最近はほんとに騒々しい争いが絶えない山中になったものだな。

前は静かだったな、すべてが生き生きとして植物と動物はお互いに
助け助けられて生きてきたな、それがどうだ、あっという間に人間が
地球を汚して自然の調和を乱して平和をぶち壊してしもうた。

ここ数十年は酷いものだ、おかげで植物同士が生き残りを争うようになり
動物も食糧難で植物を余分に食べるようになった。
植物も免疫力が弱くなり病害虫に罹るものさえ出始めた、それもこれも
人間さまのおかげというもんだな、横暴な振る舞いはこれからも続くだろうな
それというのも人間中心の共存などの思考が支配的だから、どうも自然界の
上のほうに位置して居たいらしい、居心地がいいのだろう。

わしももう少しの辛抱だ、この騒々しい山中を眼をひん剥いて眺めながら
生を終えるとしよう。
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