今年の祖谷山も、厳しい冬の洗礼を受けながら、師走が訪れていました。
お爺さんとお婆さんは、今年も健在でございました。
ニュースは今年最強の寒波到来を繰り返し、流しておりました。
お爺さんは、囲炉裏の前で、藁を編んでおりました。
お婆さんは、庭先の少し積もった雪を、竹ぼうきで掃いておりました。
『婆さんよ、まだてんごのかわ、しよんこ?』
「じいさんは、まだ、正月飾りしよんかえ?家に祀るのは、
とうにできとろがえ?だれぞに、あげるんかえ?」
お婆さんは、箒を戸口に置き、家の中に入ります。
頭に被っていた、手ぬぐいを戸口に置きます。
『ばあさんくらいじゃわ、手ぬぐい、やっぱり放さんのは、
しものしが、おったら、ふう悪いぞ!』
「なんちゃあ、ふう悪いことないわの、しもの衆や、だれっちゃあ、こんがな山に来んわのー」
『ばあさんよ、ジョウジとヒデオは、戻るんこ?なんぞ、言うてきたんこ?』
『まだ、もどるか、もどらんか、考えよんじゃと』
「考えるって、わがんくに、もんてくるのに、何を考えよんぞ、銭か?銭ないんか?」
『銭はいらんわの、あのしらは、車でもんてくるきん、なんちゃあ、銭は使わんわの』
「ほんなら、考えんでももんたらええわの?なんぞ?おかしげえなことを、言うのうや、」
『また、流行ってきたんじゃと、新しい、いそげえな菌じゃと』
「キンって、コロリってイヨッタ病気か?」
『爺さんよ、コロリじゃないわの、コロナじゃわの』
「コロリも、コロナも、なんちゃあ変わらんわの!
ほんで、またウツシタラいかんけん、戻らんっていよんこ」
『そうじゃと、しらんまにうつるきん、わたしらに、
うつしたら、大ごとになるって、考えよんじゃと!』
『そうじゃ、おらは、こないだ、教えてもろたんじゃ、祖谷八景の泊まるくしよるアニさんに、
教えてもろたんじゃ!戻るまえに、ピーピー検査ってしたら、それでの、
かかってないってわかるんじゃと。ほんでの、ピーピー検査してから、
もんたらええわの、それじゃ、婆さんよ、はよ、ジョージらに、教えてやれや』
「爺さんよ、ピーシーアール検査って言うんじゃわ。まっこと、こないだ、
前の在所に出かけて、ひい、暮れるまで戻らんかったのは、
祖谷八景にいとったんかえ。どうりで、遅い筈じゃ!」
『おらは、そば粉たのんどいたの貰いにいたんじゃわ。
わんくは、今年はそばは、みな、出来なんだったけんの、
ほんで、アニさんがくれるっていうてくれたんじゃわ。』
「爺さんが、そば撒くの、わすれとったきん、そんがなことになるんじゃわ!」
『ほんでの、そば粉貰うまで、祖谷八景のアニさんが茶を酌んでくれての、
しゃべりだしたんじゃわ。あのアニさんは、喋りだしたら話し長いんじゃわ。
長いけど、筋道通ったええ話しするんじゃわ。面白かったぞ!
あのしは、馬鹿正直者じゃけん、ヘラコイことして、儲けるしらとは違うぞ!ヘラコイことして、儲けたし、ようけおるんぞ!区長さんイヨッタわ』
「祖谷八景のアニさんより、爺さんがよけ、喋りよるでえ、爺さんも、くち、だるうないかえ?」
『くち、だるうなったら、なんちゃあ、食えんわの』
「爺さんよ、わがで、ジョウジに電話せえろよ。ジョウジの番号は①になっとるわ。
受話器あげて、①押したら、ジョウジがでるわ」
お婆さんはお爺さんの座る場所まで、電話機を持って行ってあげました。
お爺さんは受話器をあげ、電話を触っておりました。
『もし、もし、ーーーーー 』
『ジョウジか、ーーーーー』
『聞こえんぞーーーなんぞ言えよーーー』
「爺さんよ!電話機の1 じゃないわの!
ワンタッチダイヤルの1番じゃわ!ごじゃあ押すなろよ!たいがいに覚えないかんぞよ!」
『いそげえな、外国の言葉やこし、使うなよ』
お爺さんは、じっといつまでも、電話機を見て、呟きました。
『ばあさんは、だんだん、めんどうになる。 くわばら、くわばら 』
大晦日。
親子4人が、祖谷山に集まりました。
笑い顔に、笑い声、愛する者同士、同じ空間で一つの時間を共有し、
それ以上の幸福はないと、皆が判っておりました。
幸福とは、愛する者と過ごす時間だと、皆が判っておりました。
貴方は誰と 生きたいですか。
良いお歳をお迎え下さい。
心豊かに、お迎え下さい。
かしこ
お爺さんとお婆さんは、今年も健在でございました。
ニュースは今年最強の寒波到来を繰り返し、流しておりました。
お爺さんは、囲炉裏の前で、藁を編んでおりました。
お婆さんは、庭先の少し積もった雪を、竹ぼうきで掃いておりました。
『婆さんよ、まだてんごのかわ、しよんこ?』
「じいさんは、まだ、正月飾りしよんかえ?家に祀るのは、
とうにできとろがえ?だれぞに、あげるんかえ?」
お婆さんは、箒を戸口に置き、家の中に入ります。
頭に被っていた、手ぬぐいを戸口に置きます。
『ばあさんくらいじゃわ、手ぬぐい、やっぱり放さんのは、
しものしが、おったら、ふう悪いぞ!』
「なんちゃあ、ふう悪いことないわの、しもの衆や、だれっちゃあ、こんがな山に来んわのー」
『ばあさんよ、ジョウジとヒデオは、戻るんこ?なんぞ、言うてきたんこ?』
『まだ、もどるか、もどらんか、考えよんじゃと』
「考えるって、わがんくに、もんてくるのに、何を考えよんぞ、銭か?銭ないんか?」
『銭はいらんわの、あのしらは、車でもんてくるきん、なんちゃあ、銭は使わんわの』
「ほんなら、考えんでももんたらええわの?なんぞ?おかしげえなことを、言うのうや、」
『また、流行ってきたんじゃと、新しい、いそげえな菌じゃと』
「キンって、コロリってイヨッタ病気か?」
『爺さんよ、コロリじゃないわの、コロナじゃわの』
「コロリも、コロナも、なんちゃあ変わらんわの!
ほんで、またウツシタラいかんけん、戻らんっていよんこ」
『そうじゃと、しらんまにうつるきん、わたしらに、
うつしたら、大ごとになるって、考えよんじゃと!』
『そうじゃ、おらは、こないだ、教えてもろたんじゃ、祖谷八景の泊まるくしよるアニさんに、
教えてもろたんじゃ!戻るまえに、ピーピー検査ってしたら、それでの、
かかってないってわかるんじゃと。ほんでの、ピーピー検査してから、
もんたらええわの、それじゃ、婆さんよ、はよ、ジョージらに、教えてやれや』
「爺さんよ、ピーシーアール検査って言うんじゃわ。まっこと、こないだ、
前の在所に出かけて、ひい、暮れるまで戻らんかったのは、
祖谷八景にいとったんかえ。どうりで、遅い筈じゃ!」
『おらは、そば粉たのんどいたの貰いにいたんじゃわ。
わんくは、今年はそばは、みな、出来なんだったけんの、
ほんで、アニさんがくれるっていうてくれたんじゃわ。』
「爺さんが、そば撒くの、わすれとったきん、そんがなことになるんじゃわ!」
『ほんでの、そば粉貰うまで、祖谷八景のアニさんが茶を酌んでくれての、
しゃべりだしたんじゃわ。あのアニさんは、喋りだしたら話し長いんじゃわ。
長いけど、筋道通ったええ話しするんじゃわ。面白かったぞ!
あのしは、馬鹿正直者じゃけん、ヘラコイことして、儲けるしらとは違うぞ!ヘラコイことして、儲けたし、ようけおるんぞ!区長さんイヨッタわ』
「祖谷八景のアニさんより、爺さんがよけ、喋りよるでえ、爺さんも、くち、だるうないかえ?」
『くち、だるうなったら、なんちゃあ、食えんわの』
「爺さんよ、わがで、ジョウジに電話せえろよ。ジョウジの番号は①になっとるわ。
受話器あげて、①押したら、ジョウジがでるわ」
お婆さんはお爺さんの座る場所まで、電話機を持って行ってあげました。
お爺さんは受話器をあげ、電話を触っておりました。
『もし、もし、ーーーーー 』
『ジョウジか、ーーーーー』
『聞こえんぞーーーなんぞ言えよーーー』
「爺さんよ!電話機の1 じゃないわの!
ワンタッチダイヤルの1番じゃわ!ごじゃあ押すなろよ!たいがいに覚えないかんぞよ!」
『いそげえな、外国の言葉やこし、使うなよ』
お爺さんは、じっといつまでも、電話機を見て、呟きました。
『ばあさんは、だんだん、めんどうになる。 くわばら、くわばら 』
大晦日。
親子4人が、祖谷山に集まりました。
笑い顔に、笑い声、愛する者同士、同じ空間で一つの時間を共有し、
それ以上の幸福はないと、皆が判っておりました。
幸福とは、愛する者と過ごす時間だと、皆が判っておりました。
貴方は誰と 生きたいですか。
良いお歳をお迎え下さい。
心豊かに、お迎え下さい。
かしこ