隣のおばちゃんのお家の片付けも全て終わり、完全に気配の消えた「空き家」になった。
おばちゃんの家の片付けと共に、我が家の車庫に少しずつ物が増えた。
車庫の自転車の前カゴに突き刺した色褪せた半世紀前の国旗。
片付けの途中で、出てくる幾つものガラクタを見つけては、おばちゃんはその物に纏わる想い出をスラスラと話し出す。
「この国旗よ、○○のおっちゃんに言われて父ちゃんが買うたんじゃわ~」
※○○のおっちゃんとは、私の父のことでありんす。
「ある、ある。私の家にも同じ国旗あるよ~ずっと物置にしまってあるよ」
「○○のおっちゃんがのぉ、△△さんよ~!国旗ばカウバイッ、国旗ば飾るばいっ!って言うて
父ちゃんを誘うて一緒に銭もないのに、国旗買うたんぞよ~」
「○○のおっちゃんは、朝も早ようから起きての、お日さんにパンパンって手合わせての、国旗飾る日は、わんくの父ちゃん外から呼んでの、
△△さんっ、今日は国旗の日ばいっ、国旗ば飾るばいって国旗飾りよんぞよ~あのしらは、そんがな事ばっかりしよったわ~」
※国旗を嬉しそうに掲げていた父を私も覚えております。
「わたしらの年代はのぉ、お金出しても物が無かった時代だったんじゃわ、今でこそお金さえ出したら、何でも買えるけど、物が無かったけん、
こんがな布切れや集める癖ついての、可笑しかろ~まっことコンガにゴミばっかり集めてのうや~」
と言いながら、ゴミ袋に押し込んでいた。
想いに区切りを付けた物は、その時点でゴミになる。
「これ、使うか?」
「これもまだ使えるぞっ」
おばちゃんに差し出された数々の品物を、
「使う!使う!」
と言いながら頂く私は、戦後を知らない。タダのケチである。
おばちゃんの捨てようとした国旗を頂いたのは、おっちゃんと父の姿が愛しく脳裏に浮かんできたからだ。
照れ屋でお酒が好きで、お人好しのおっちゃんと、父のやり取りを聞いた時点で、
その色褪せた国旗に私の想いが移り込み、只のゴミで無くなってしまった。
がむしゃらに働き、築いた家や物を処分しなければいけない時代。
終活の文字がやたらと紙面を飾る。
人口も減り、夜道を歩く人もいないのに、外灯がLED電球になり、明るすぎて逆に気持ちが悪い。
普通の仮面を付けながら、病んだココロで形成されたフザケタ社会になった。
そんなある日。相変わらずコンビニのお釣りの小銭を数えながら、運転席のドアを開けようとした。
運転席に見知らぬオッサンが乗っているっ!!
間違えた~
隣の車に乗ろうとしてしまった!
大丈夫か。ワタシ?
とりあえず、大寒の日曜日。故郷の祖谷は寒い1日でした。
みんな、頑張ろうね~何を頑張ればいいのかって?ワタシに聞くなっ!
草 々