前略。
あっと言う間に、凧の季節。
今年こそ、今年こそ!ちゃんとした絵、書くぞー!
アイデアの図案を1ヶ月かけて、丹念な時間をかけて、頑張ろうー!
‥‥‥と、思っていたのに、ノートに書いたのは、昨夜。
大昔、夏休みの宿題は、前半の一週間でやり切っていたオカッパ頭は、
半世紀を生き、こんなに適当な大人になってしまった。
天気予報は見事に当たり、今年も雪が舞っている。寒そうな雪だ。
今年は若者達から、この厳しいご時世なのに、カンパを頂いて、
その気持ちが有り難くて、ジーンと沁みております。
その若者達は、本日の制作作業にも、参加してくれました。
ヤーと、チーくん。
祖谷の地域住民が少しでも不安なく暮らせるようにと、
ボランティア活動を始めた3人組だ。
チーム名は、なんちゃらかんちゃらと言っていたが、ごめんなさい。
オバサンは忘れました。
本当に本当に、今年は楽チンで、作業は終わりました。
私は早い話しが、殆ど身体を使いませんでした。
くちだけを、使いました。
出来ない癖に、くちだけは出す。
年寄りの典型的なパターンです。
『君たちは、ペンキ塗りの職歴があるんじゃないん?』
並の、筆遣いです。普通素人さんは、油性ペンキを上手に塗れませんが、
スッスッと、塗っておりました。
楽しいー楽しいーと、連呼していました。
彼等は、娘の同級生です。
私もとりあえずは、子を持つ親。
だらし無い姿を、見せてしまったら、娘達に申し訳ない。
そんな親心が、強く働きました。
だから、必死で我慢したのです。
11時になって、お腹が空いて、いつもならテラオの兄さん相手に、
『なあなあ、お腹空いて死ぬわ!昼にしよう!昼食べてから、もんてきたかえを書こうや!』
と、ダラダラとした口調で言うのですが、本日はそんなだらし無い風情は見せられません。
彼等が休みそうなタイミングを、観察しておりました。
12時を過ぎても、なかなか筆を置きません。
ヤーは、ひたすら塗っては全体を見てバランスを考えていました。
性格が判りやすいです。チーくんは手慣れた手つきで次のペンキの缶をあけてます。
彼等が頑張っているのに、私だけがジーとしていては、申し訳ない。
とりあえず、現場の写真を撮りました。
定年間近の役職を持つオッサンが、仕事をしない訳が、初めて判りました。
くちだけを挟む理由が、初めてわかりました。
『おばちゃん、言うてくれたら、僕らが動くけん』
と、ヤッくんが言ってくれました。
「おばちゃんは、今はまだ、身体障害者じゃないから、大丈夫〜」
と心で呟きながら、楽を覚えていく感覚に、目覚めました。
こんな風にして、楽を快感にして、杖を身体の一部にして、膝を這う為のアイテムにして、
要介護になっていくのか。なんか、納得。
作業は、本当にスムーズに終わり、久しぶりにテラオの兄さんと馬耳雑言?を言うこともなく、終了しました。
なぜか、やっくんが最近ハマっている、モルックというゲームを、4人で楽しみました。
数字が書いてある積み木を、合計点を目指し上手に倒して、二人一組で対戦するゲームです。
数字を見ただけで、競艇しか浮かばない私は、現金を掛けないで楽しむゲームと言うものに、興味が湧きません。
しかし、そこは、人の親。
ぐっと、我慢して、一緒に楽しみました。やっくんが、
また、一緒にしような!と、誘ってくれました。
『お金を掛けんの?』
と心で呟いて、決して口にしませんでした。1日で、おばちゃん、おばちゃんと何度も言われて
、一瞬で5年は歳をとった気分になりました。聴覚から、人は歳を再確認し、試着室の鏡で現実に突き落とされます。
こんな不穏な、世界だから。
色んな願いを込めて。
病気と闘う人。
現実と闘う人。
老いと闘う人。
自分と闘う人。
無力な自分に、愛想を尽かしながら、
私は伸ばした手の幅でしか、何も出来ない。
出来ることを、焦らないで、自分風に生きて行こう。
故郷は、とても古びておりますが、
何色にも染まらないままに、
祖谷は、じっと年月を重ねています。
心 穏やかに
今年も もんてきたかえを、
私達は 届けます。
草草