秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

菜菜子の気ままにエッセイ(もんてきたかえ・2023)

2022年12月22日 | Weblog
祖谷山に、今年も師走がやってきました。お爺さんお婆さんは、今年も健在です。
お爺さんは、囲炉裏の中の灰を、灰かき棒で混ぜながら、掃除をしておりました。
お婆さんは、小さな段ボールを2つ並べて、荷造りをしておりました。
『ジョージとヒデオに送る荷、しよんこ?』
「そうよの、蕎麦と餅と、こんにゃくじゃわ」

『今年はだれっちゃあ、もどらんのじゃのぅ』そう、言いながら、お爺さんは、
首に巻いた手拭いで、囲炉裏の縁を拭いておりました。

「爺さんよ、そんがにして、手ぬぐいでどこでも拭くけん
雑巾やら手ぬぐいやら、わからんようになるんじゃわ、
まっこと洗うしのことも、ちったあ、考えろよ」

『婆さんよ、婆さんは洗いよらんわの、洗いよんのは、洗濯機じゃわ!
婆さんは干しよるだけじゃわの』

「まっこと、こにくちげえに言う、じさまじゃの、いまに、わたしが、
おらんようになったら、わたしの有り難みわかるんじゃわ!蕎麦も餅も食えんようになるぞよ」
『なんちゃあ、食えるわの、婆さんが作らんでも、オラは祖谷八景の若い衆にもらえるわの』

お爺さんは、掃除をした囲炉裏の置いたアミで、ジャガイモを焼いておりました。
網の上に吊ってある自在は、すっかりと煤を被り、歪な形になっておりました。

「爺さんよ、ジョージがいよったぞよ、村におるきんって油断したらいかんぞって、
こんどの流行りのウユルスは、キツいっていよったぞよ」
『婆さんよ、ウイルスじゃわ。ウユルスじゃあないぞ』

「まっこと、そんがなことは、すぐにシャンシャン言うの、
ひとのヒジひらいばっかりして、ここの古い婆さんと一緒じゃの」

『婆さんは、わがで好いて来たんじゃきん、しよないわの、
オラは畑してくれるしなら、誰でも良かったんぞ』

「好いてきたんじゃないわ、食い扶持が一人でもおらんようになったら、
親が楽になるとおもて、ここに来たんじゃわ。70年も爺さんと、つろこって、わたしは難儀したわ」

『婆さんよ、婆さんはそんがに言うけんど、ジョージの娘がいよったぞ、
じいちゃんとばあちゃんがおったけん、お父さんが生まれて、わたしが生まれたけん、
じいちゃんありがとうって、おらはそれ聞いて、まっこと涙でたんぞ、孫は可愛げえなぞ。

顔見たら、小遣いわたすきん、銭は、なしんなるけど、
オラは小遣いやるけんど、婆さんはなんちゃあやらん。婆さんは、いよいよの、けちじゃの』

「わたしは、ケチじゃないぞよ、爺さんみたいに、よその子供見ても、
すぐに小遣い渡しよったら、銭おおとっても足らんわ。
葬式代あてごうとかな、ジョージやヒデオに迷惑かけるきん、始末するんじゃわ。
病院代はいるし、クスリもいるし、右見ても、左見ても、銭のいることばっかりじゃわ。
わたしらみたいな年寄りの先の見えとるもんに、高いクスリやは、いらんわ。
若いしらが、ちっとは、面白いとおもて生きとかな孫やは、酷いわ。
わたしは、いそげえな、クダにつながれてまで、生きときとうはないわ、
むかしはそんつらんもんはなかったわ、寿命じゃいうて、みなで、きれいに泣いて別れたわの」

お婆さんは、そう言うと、荷物を十文字に縛りました。
お婆さんは、荷物を二つ作り終えました。
「やんがて、郵便の栗本のあにさんが、取りにきてくれるわ。
有難いことよ。あにさんには、芋焼いとるけん、今日の駄賃じゃ」
お爺さんは、焼いた芋の皮の焦げを、手ぬぐいで拭いておりました。
降り積もっていた雪も、次第にお日様が溶かしておりました。
祖谷山の師走は、ゆっくりと流れておりました。

          草草

未来を想像して 未来に希望を持ち
自分自身を追い込む程の 
努力は辞めよう 
歴史から消された事実
報道に操られる現実
更に 国民が支配される現実
大切なことは 手を伸ばした空間で
自分が 楽しいと思える時間
自分の時間は こころは
誰にも支配されない
全ての答は 昭和に在る
あのモノクロの時代に 輝いていた
幾つもの人々の時間と 温もり
もんてきたかえ の声と共に。
            
          かしこ





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菜菜子の気ままにエッセイ(犬とウサギと時々メダカ)

2022年12月18日 | Weblog
前略。
下書きしていたウサギのイラスト。
用紙いっぱいのスペースを使い、耳と目と鼻をアップにした、
かわいいイラスト。本人は大満足!
文句の付けようが、無い!

作成日前夜、娘達に、自信満々で、写メして、ラインで送った!
『母ちゃん、これはかわいいわー』
『ウシトラマンより、ずっと良いわー!』 
と返信が来る筈だと、思っていた。

すぐに、直接電話が、かかってきた。
『アッハッハー、ちょっとまって、笑いすぎてせこい〜母ちゃん、ちょっと待ってー』
スピーカーから流れてくる、長女の下品な笑い声!

まだ、笑っている。
その下品な笑いを、旦那様と共有したいのか、
『ちょっと見て、これ、母ちゃんが、ウサギの顔って!なあなあ、はよう、見てー』
と言いながら、まだ、笑っている。

『母ちゃん、これは、ウサギじゃないわ!犬じゃよ。
ウサギは、もっと耳が長いし、耳と耳の間が、狭くてまるいんよー』
と言いながら、まだ、ひきつりながら笑っている。 

『母ちゃん、よかった、送ってくれて、そのままこれを明日書いとったら、やばかったわ!』 
「え〜、母さんはウサギのつもりだったけどなぁー。
また、考えないかん、また、寝れんようになる」

で、本日土曜日。 
いつもの場所で、いつもの作業。真っ白なシートを広げて、とりあえず、コーヒーを飲む。
「これは、どんな?ウサギが、駆けていく、それの下に小さいウサギ描いたら、ええんじゃないん?」
テラオが何か言いながら、紙に下絵を描いていた。

丸を描いて、その下に短い何か、シャッシャッと、描いていた。
チラッと見た。
『お地蔵さん書っきょん?』
「なんでやー!これは、まるじゃわの!」
力いっぱい、反撃していた。
とりあえず、まん丸をシートの中心にかかなければならない。

大きな○を、正確に書かなければ始まらない。
原始的なやり方で、○を書く。 
道具は、シートを包んでいた、ビニール紐一本。そして、マジック一本。人間コンパスだ。
シートの中心に紐の先端を持って、普通に立つテラオのあにさん。

私はマジックを紐の先端に結び、左膝の痛みに耐えながら、
丸い○を書く為に、必死で円を書いていく。
「ひも、ゆるんみょるぞ!引っ張らないかんぞ!」
汚い祖谷弁が、ホールに響く。

泣きそうになりながら、必死で耐えた。必死で耐えて、キレイな○が完成した。
次はウサギのカタチ。このバランスが一番難しい。
ずっとシートの中心を見ながら、じっとバランスを考える。
テラオは、お菓子を食べていた。
コーヒーも、飲んでいた。

毎年、この最初の一筆が、一番オソロシイ!これまでの悪夢が、走馬灯のように蘇る。
エイヤー!とココロに気合を入れて、一筆を進めていく!
テラオは、何やら段ボールを取り出して、切っていた。

することがないから、切り絵でも始めたのか?とチラッと見ていたら、
ウサギのカタチの様な物を、段ボールを切っていた。
くり抜いた部分に、スプレーで吹き付けていくんだと、判った。

途中でブログの主様が電話をかけてくれた。順調に進んでいますか?
と心配してくださり、有難い電話。
テラオは、汚い祖谷弁で、何かしら憎たらしい言い方で、返事をしていた。
主様が、ウサギに突き飛ばされたらええわーと、言っていた。
『途中で引っかかって、落ちんわ』
と、主様と共感した。

ペンキの乾きが、悪くて、全てを終わらせるのは、明日になる。
制作に2日を要したのは、初めてのことだ。暇だから出来る、なんて贅沢。

東京の出稼ぎから11年ぶりに、故郷に帰ってきてくれたC子ちゃんも寄ってくれた。
それぞれに歳を重ねながらの11年。積み重ねた時間を活かせた、
楽しい時間をつくれたら、残りの人生も、クスッと笑える。
なんか、ちょっと細やかにワクワクする。

テラオのアニさんの辞世の句も書いて貰った。
書道甲子園ならぬ、書道高支援!

黄色と青を全面に押し出し、色にメッセージを込めている。
どうだ、娘達!母ちゃんは、たまには良い仕事をするんだよー!

一晩で豪雪に見舞われた、祖谷地方。幹線道路でも、除雪車フル回転!
こんな大雪は、数年ぶりでございます。今年も無事に終わり、本当に安堵致しました。

追伸・下の方で泳いでいるのは、ちりめんじゃこでも、メダカでもありません。ウサギでございます。
         草草



































































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初冬のあかり

2022年12月01日 | Weblog
12月初冬のころ、もう、すでに、年末を迎えるのか
年老いてゆく毎日を何とかやり過ごして、身体機能は
衰えてゆくのみ、逆らいたい気持ちはあるものの、こればかりは
受け入れざるを得ない

枯れ木のように、朽ち果て、枯れ葉のように風に舞い彷徨いながら
後、何年、じっと自分を見つめて、心豊かに、時を刻むことが
出来るであろうか
笑顔と楽しみを糧に毎日を過ごして行こうと思う










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