秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

菜菜子の気ままにエッセイ(祖谷弁で、今に思う独り言)

2020年04月26日 | Weblog
前略。
昨今の状況でのいつものハードなお仕事を終えて、スーパーに寄る。
私の行動パターンは、シンプルであります。

夕方の食料品売り場か、時々立ち寄るダイソーか、ドラックストア。
が、最近、その小さな町の小さなスーパーで、普段は見かけない雰囲気の方々を見つける。

明らかに、地元ではない。
『垢抜けている』から、すぐに判る。
そして、着ている服が、普段着にしては、お洒落だ。

で、垢抜けない人生を送る私の、あれは二十歳の頃の夏。
同級生4人で一台の車に乗り、剣山に遊びに出掛けた。正確に言えば、見ノ越まで。

その時の同級生3人は皆、大阪と徳島市内に就職していた。故郷への帰省だ。
男子1名に女子3名。

男子が、運転手。車は普通車中古2ドア。私は後部座席に座っていた。
数年の間に、同級生達は、祖谷弁を忘れたのか、会話のイントネーションがどこか違っていた。

数年まで、自分のことをオラと言っていた男子は、何故か軽快に
『ワシッ』と言っていた。
ワシッは、格好つけるみたいに、意気揚々にハンドルを握る。

「うんてん上手〜」と、女子が無駄にワイワイ騒ぐ。
騒ぐ女子は、免許を取得していない。

私は、後部座席で、垢抜けた彼女達の変な阿波弁のイントネーションに、さらされていた。
「菜っちゃん、変わらんねー」
と言われて、変わらなければいけなかったのか?ワタシは、何の言葉で話したら良いのか
気を遣って、黙って後部座席で大人しくしていた。

祖谷は、村の面積が広い。
名頃集落は、1番奥に位置する。
当時では殆ど面識の無い、知らない村人達だ。
あの時代はあちこちで、道路工事をしていた。

車の中で、その土木作業員の方々を見ながら、珍しい光景でも見るように
彼女達は、キャーキャー盛り上がっていた。
私は、見慣れた日常だったから、無駄にはしゃぐ必要も無かった。多分、顔は仮装行列の時の表情。

名頃に差し掛かった時に、道路工事をしている、現場を通りかかった。
一本のホースみたいな黒い線が、道を遮っていた。

意気揚々に運転していた男子が、その前で、止まった。
「ごっついなあ?何しょんだろ〜」
「踏んだらあかんよ〜」※みたいな、会話だった。

彼女達も、男子も、誰も作業員に聞けないまま、車は停止したままだった。
一人のおばちゃん作業員が、私達の車に気がついた。観光客を見るような
低姿勢で、お辞儀をしながらこちらに近づいてきた。

ワタシは運転席の窓が開いていたので、後部座席から身を乗り出して、大声でおばちゃんに聞いた!
「おばちゃん〜すみませんー!!ホース踏んでもかんまんでー」
おばちゃんは、表情を緩めて、

「かんまんでよー、通ってよー」
と言ってくれた。
車は無事に発進したが、間髪入れずに

『もうー菜っちゃん!わたしらが、祖谷の人間ってバレたでえー!』
『おららが、地元ってバレたじゃないかー、ふう悪かったわ!後ろから、いがるなよー!』

…祖谷弁…忘れてないじゃないか!!
イントネーションも、祖谷弁じゃないか!!

    『もんてこいよ』
と言ってあげられない。今の状況。
観光客が激減し、排気ガスの少なくなった道を察知するみたいに
異常に増えた野生動物の幹線道路への侵入。

田舎は大丈夫だろうと、早朝から普通に入ってくる県外ナンバー。
経済優先のこの国のリーダー達。
痛みを全く共有することなく、火事場泥棒みたいに、画策ばかりを繰り返す。

こんな時に、何の役にも立たない、議員なんか、要らない。
「緊急事態国会議員特別寄附金法案」とか、成立させて、
手厚い手当てを投げ出して、こんな時にこそ、庶民に還元して、暮らしを守れないものか。
最大の危機に於いて、このお粗末な展開。

昔、校舎のトイレの前の手洗い場の蛇口に吊るされていた、
オレンジのネットに入っていた、形のチグハグだった石けん。
あれのあった意味が、つくづく判った。議員さんより、石鹸の価値が高いっ。

昔の方々の経験に基づいた苦言に間違いはないように、素直に忠告に従おう。
田舎は大丈夫。昼時にはどこかは営業してるとか、自分本意で田舎を舐めてはいけません。

みんな、自粛して、ギリギリを通り越して、頑張ってます。だから、今は
『絶対に、来たらいかんぞー』
以上、わたくしからの、今時の苦言でございました。

追伸・満員電車は、三密ではないのか?
満員電車は、行動範囲ではないのか?

県外ナンバーばかりに捉われて、変な方向に向かって攻撃しあって、
人間同士が操られて、おかしいと思わないの?

みんな、冷静になろう。冷静になって、頭を冷やそう。
そして、私は叫ぶ。秘境の片隅で一人叫んでみる。
コロナの どつぼれよ〜〜〜!
             
           かしこ
















































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自然の可憐な花たちは

2020年04月24日 | Weblog
感染症一色の小さな人間の世界に自然という大きな世界の一部分である小さな可憐な花たち



































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往く春を惜しみ、ただただ、歩く

2020年04月16日 | Weblog
ただただ、歩くだけのこと、廃家の庭先にひっそりと、咲き始めたナルコユリの花
いまは無き住人を偲んでいるかのように、イタドリを齧って酸っぱさを味わい
生きている実感に気づいて、小梅の青い実を思う













































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菜菜子の気ままにエッセイ(みつまたの季節の独り言・後編)

2020年04月02日 | Weblog
幼少期から私は、
大人を常に観察する、癖があった。
観察しては、時々真似ていた。

山の人達は、挨拶を特に重んじる。今では、そう言う風習はかなり薄れたけれど
今でも昔の方々は、丁寧に挨拶をして下さる。若い人達は、面倒に感じる方々が多い。
「こんにちわ〜」
「ええ天気じゃなあー」
「元気にしよったかえー」
「ありがとうござんす。おかげさんでー」
「ほんなら、休んでしてのーさようなら」

昔はそのような、丁寧なご挨拶が、叔母さんの家に続く畦道で、飛び交っていた。
わたしは、誰を真似たのか忘れたが、何を勘違いしたのか?小学生なのに、そのようなご挨拶を、大人と交わした。
「まあー、菜っちゃんかーうえに遊びにいっきょんかー」
「はい。こんにちわー」

オカッパ頭は、立ち止まって、丁寧に会釈する。
「皆は、元気にしよるかえー」と父母のことを聞かれ、オカッパ頭は、言った。
「ありがとうございますー。お陰で元気にしてますー」
「まぁー。偉いのー、ちゃんと挨拶出来てー」
オカッパ頭は、褒められると、有頂天になる。
何回も何回も有頂天を繰り返した、或る春の、みつまたの季節。

「今日も上にいっきょるかえー」
「はいっ。こんにちわー」
「まあー、まっこと○○ちゃんと、同じ顔になったのー、キョウダイは、えらいもんじゃのうー」
畑仕事の手を止めて、或る人が、そう言った。

○○ちゃんとは従姉妹の名前である。
叔母さん夫婦の長女の、従姉妹のことである。
何気なく、その場を離れ、いつもの様に一日を終えバスで帰り、ポツンと母にその日のことを話しながら、聞いてみた。
「あのな。へんなことを、言われた。同じ顔になったって。きょうだいって何?」
そんなことを、母に聞いた。

「いらんことを……言う」
母は背中を向けたまま、小声でそう、返答した。
ある日を境にして、従姉妹が実の姉だと聞かされた、子供心に感じた訳の判らない妙な戸惑い。
昔は子供の出来ない夫婦に、親戚同士で、養子縁組をしていた。村の人達は、其々の事情を知り尽くしていた。

が、口にしなければ、絶対に秘密に出来る。
私に話したその人の顔は、嘲笑うように見えた。
何十年の歳月を見送り、今だから判ることがある。

買い物カゴに何かを持たせて、私をお遣いにやった理由。
父母は、姉の暮らしを、何かしらの方法で常に、知りたかったのではないか。
そして、姉を感じたかったのではないか。

光陰流水。
産まれた子供を養女に出した、父母の口には出せなかった葛藤。
養女に出された姉の人生に於いての、深い胸中も察することが出来る年齢になった。
父も母も、姉の幸せを、ずっと願いながら、暮らした筈だ。

客観的な私とは真逆で、姉はお人好し。私はあんなふうに、酒酔い相手に、優しくはなれない。
高知市内で、小さなカラオケ店を一人で何十年も営んでいる。

或る日。
常連のお客様が、一人でやって来た。お客様は、一人。
……で、お客様。
「ママさん、マイッタ!マイッタ!仕事を減らされた〜今月の生活、メドがたたん〜」
「おんなじ、おんなじ。ウチも暇でメドがたたんがでぇー」
「ママさん、聞いて、聞いて」
○△□○△⭐︎○△□○
暫く、お客様の愚痴を聞く姉。

「元気、出しなやー、気分転換しいやー、今日のビール代は、いらんけんねー頑張りなやー!」

何十年もお客様に愛される理由が、判る。人柄は、窮地に立たされた時に、思い切り、現れる。
兄弟、姉妹。

いつかは、どちらかが、先に逝く。
同じお腹で育ち、産まれ、幼い時間を過ごし、其々に大人になり、歳を重ね、必ず互いに迎える最期。
母に感謝している。
姉を産んでくれていた事に、感謝している。

何の世界を生きているのか、何の為に生まれて来たのか、訳の判らない今の世界で、
共に昔を語りながら、時に大笑いする。そんな相手をこの世に存在させてくれた母に、感謝している。

みつまたの花の季節の、ほろ苦い思い出。
伝えたい言葉は、今日の内に伝えよう。
伝えた相手も、全て消えてしまうけど、私達は、魂の中を浮遊しながら、彷徨っている生き物だから。

其々に大切なものに、
其々の大切な人に、
ありがとうって言葉は、何て素敵な魔法なんだろう。

          かしこ






























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菜菜子の気ままにエッセイ(みつまたの季節の独り言・前編)

2020年04月01日 | Weblog

前略・
ミツマタの花が、彼方此方に咲いている。小さな花弁をたわわに付けながら
一つ一つの花の淡い黄色の二色は、昔の季節の祖谷山の暮らしの中の風景の一部だった。

幼少期、学校が休みの日には、両親に頼まれた用事を兼ねて、一人で
バスに乗って叔母さん(ヴヴヴ星人)の家に度々遊びに出掛けて行った。
当時は、道路事情も悪く、舗装されてない祖谷道は、アトラクション並みに揺れた。

両親は、山の暮らしで手に入らないような物品をお土産に持たせ
その替わりに山で採れた野菜を私が持って帰る、そんな感じだった。

ビニールで編み込んだような、四角い固い買い物カゴは、子供にはとても不似合いだった。
あの籠は、当時は大人のオバさんの持ち物だった。
おまけに、父は籠の中の物が、直接見えないように、必ず新聞紙で蓋をしていた。
未だに、あの蓋の意味が、判らない。

ボンネットバスに揺られ、似たような景色を見ながら、自分の降りたいバス停で間違いなく
下車することは、小学低学年の私には、結構な勇気を要した。バスの中は、知らない乗客で溢れていた。
乗車したら最初に目的地の切符を車掌さんから購入する。
その車掌さんがバス停に停まる度に、ドアの開閉をしてくれていた。 四○交通全盛期の時代だ。

とにかく、私は、クソが付くほどの
「真面目」だった。

他の乗客を、無駄に待たせてはいけないっ!
なるべく、時間をかけないで、一発で下車するんだっ!
バスが、目的のバス停に停まる前に、座席を離れ、ブレーキと同時に、素早くバスから降りるっ!
当時は、目的のバス停まで30分位で、着いたと思う。

そろそろ着く時間感覚と、目印にしていた家々の景色のみで、下車する感覚を養っていた私。
何しろクソ真面目だったから、着いてからでは遅いっ!
着く前に、座席を離れたいっ!
オカッパ頭は、頭をフル回転させていた。
忘れ物はないか?
座席の下に、何も落としてはないか?

そろそろ、あのカープを曲がれば、目的のバス停〜!
よしっ、降りよう!
前方の搭乗口目掛けて、ダッシュ!
車掌とチラッと目があった。
「まだっ!まだっ!ひとつ早い〜」
片手で、制止された。

オカッパ頭は、そのままの態勢で座席にバックする。
車掌さんが、失笑するのが見えた。
失敗は、許されない。
オカッパ頭は、考えた。

バス停に着いたときに、車掌さんの顔を見て、確実に下車しよう。
「まだ、早い」と、声をかけてきたと言うことは、この車掌さんは、わたしの降りたいバス停を、把握している証っ!
なら、この車掌さんを信じて、バスが停まってから、下車すればいいっ!

全てを、車掌さんのカオの筋肉に、委ねた。
車掌さんのマイクから、アナウンスが流れた。目的地のバス停だ。
チラッと車掌さんを見た。
チラッとコチラを見て、頷いた!
今だ!
オカッパ頭は、座席を離れたっ!
ドアが、開いたー。
素早く、おかっぴき?みたいに、下車するっ!

無事に、バス停に着く。
無事に着くまでに、2回も間違えて降りようとした、オカッパ頭。
他人に気を遣う性格が、もたらせた悲劇だ。

バス停を降りると、叔母さんの家に続く、急な細い山道が、左方向から続いていた。
オカッパ頭は、買い物カゴを両手で持ち直し、山道を歩きだす。

子供の足で、20分から30分位で、叔母さんの家に着く。
急斜面を登れば、開けた集落のあぜ道に差し掛かる。
茅葺き屋根の家と、竹で組まれたハデの並ぶ風景。

スミレの花が足下に散りばめられる様に咲く。
畑に広がる、ミツマタの黄色。
畑の中で農作業に勤む集落の大人たち。
それは、何気ない挨拶から、始まった。

続く。



































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