秘境という名の山村から(東祖谷)

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菜菜子の気ままにエッセイ(人差し指日記・前編)

2022年08月15日 | Weblog
前略。
フリーターの次女が、そのまま10日間帰省してくれた。
スムーズに筋と表面の傷口が治るように、私は指先に圧がかからないように、
常に左手を胸の高さにキープする。

人差し指は、アルミの添え木のようなもので固定され、一日おきに村の診療所に消毒に通う。
三角巾を断ったことが、悔やまれた。無駄に肩が凝る。正常な右腕も凝る。 

とにかく、左指が何故か全体に痛い。ズキズキした痛みが、指先に集中している。
抗生物質が5日間処方されている。気温が高い分、傷には最悪の環境だ。
中でバイ菌が増殖しているのではないか?

整形の先生、ずっと話しながら処置していたけれど、上手に縫っているのか?
こういう場合、想像力が豊かな分、かえって厄介になる。
とにかく、左手が使えない。

次女が、言ってくれる。
『母ちゃん、何でも用事言ってよ』
『母ちゃん、遠慮せんと言ってよ』
「ありがとう、ホンマに迷惑かけるなあ。ごめんよ」
当日の夜は、次女にシャンプーを手伝ってもらい、乾かしてもらい、
医者の指示通り、左手はクッションに乗せ、頭側に置き、どこかの奥様気分で、眠りについた。

あくる朝、セミの声で目覚める。
5時半に習慣のように目が覚め、再び頑張って1時間眠る。
次女は、熟睡している。遮光カーテンの窓越しに鳴いているセミの声なんか、全く届いてないみたいだ。
起こさないように、ゆっくりと起き、音をたてないように、ドアを閉める。
床の軋む音で、目を覚ましては申し訳ないから、すり足で移動する。

いつもの日課の始まりだ。
お茶を沸かす。別々の部屋に置かれたお仏壇のお茶とお水を交換する。
軽いから右手で十分に可能だった。
ハナシバの水を替えたかったが、きちんと生けたハナシバが
バラバラになるから、片手でやるのは、諦めた。

抗生物質と痛み止めを早く飲みたかったから、パンを適当に食べた。
音をたてないように静かにニュースを見る。

統○教会の話題をメディアは挙って取り上げている。
その隙に国会では色んな法案が可決されている。
メディアに操られながら、何かオカシイ?と気づいている人は、
この島国にどの位いるんだろう。指がズキズキする。平和ボケの身には、なんて贅沢な痛み。

次女が、起きてきた。
『母ちゃん、ゆっくり寝れた?痛くないん?』
「寝れたよ。ありがとう。朝、パン先に食べたから、適当に食べてな」
次女が、パンを食べ終わる頃に、気になって仕方ないハナシバの花瓶の水の交換をお願いした。
ちょっと待ってよと言いながら、メイクなんかをしている。

その隙に私は、昨日大量に購入した、消毒グッズを小分けして、片付ける。
次女は、花瓶のハナシバを交換しながら、これを毎日やっているん?と聞く。
お茶とお水と花瓶の水の交換は、毎日だと応えると、エライなあーと褒めてくれた。

ハナシバの微妙な挿し方を注文すると、コダワリが強いなあと、低いトーンで言われた。
仏壇に置いて頂き、座ろうとした次女にすぐにお願いした。
「神棚のサカキの水も替えて欲しい」
ちょっと待ってよと言いながら、次女はアイスコーヒーを容れていた。

時々、こちらを見て愛想笑いもしながら、ゆっくり飲んでいる。
すでに、起床から二杯目のコーヒーだ。

サカキの水を交換して頂き、次の用事をお願いした。
『掃除機をかけてほしいんよ。右手でかけれるけど、今日はちょっとやめとくわ』
『掃除機?』
「うん」
『どこを掃除機かけるん?』
「とりあえず、この部屋と台所と廊下」
『どこが、汚れとるん?部屋、キレイなよ』
「いや、小さいホコリとか、髪の毛落ちとるし」
『母ちゃん、気にし過ぎよ。全然キレイなよ』

私が返事をしなかったら、次女は渋々掃除機をかけ始めた。
何でも言ってよと、昨日優しく言ってくれたから頼んだのに、却下されかけた。

とにかく、時間の過ぎるのが早い。時計は11時を過ぎている。
昼食は、大量のレトルト食品のメニューから選ぼう!と私は決めていた。
次女がポツリと呟いた。*次女は主人に似て、とてもとても、食い意地が強い。

『母ちゃん、お昼、何食べるで?』
「何にしようか。イッパイあるなあ」と言いながらも、大量に頂いた夏野菜も気になる。
「茄子の煮浸しする?」と次女に聞くと、速攻返事が返ってきた。
『食べたいっ!食べたいっ!母ちゃんの煮浸し食べたいっ!』
「へっ?」と次女の顔を見ると、既に茄子を切る準備を始めていた。
『材料きるけん、味付けだけ側で言うて』
次女が、茄子を切る。

我が家の包丁が切れないと言うので、それは20年くらい前に、
高知の姉が捨てようとした包丁だと教える。
『なんでも切るけん、言うてな』
次女は、切る気マンマン、意気揚々だ。

私は左腕を胸の高さに上げたまま、ひたすらに茄子と豚肉とピーマンを煮る。
味噌汁を作り、キュウリの浅漬けを作る。
『やっぱり、母ちゃんのご飯、美味しいわー』と歓びながら、次女は見事に完食された。
食器、後で洗うけん、そのままにしとってな。とご機嫌であった。
『ちょっと眠たいけん、寝るな』
と言いながら、次女はお昼寝を始めた。物音をたてないように気をつけて、次女のお昼寝を見守った。
瞬く間に、夕方がやってきた。
次女が、時計を見ながら、ポツリと呟く。
『母ちゃん、晩ご飯、何作るで?』

         後半に続く。


















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