祖谷の山里、大枝の朝は日の出ごろから、わとうち庵を出て武家屋敷までをよく散歩するのだが
しずかな晩秋の朝日に浮かび上がる土佐矢筈山の巨大な山容を眺望して京柱峠からの登山道を
天空の遠望を楽しみながら山行したことを懐かしくもうれしい思い出である
山里の民家の早朝はまだ、しずかな雰囲気ながら、畑で焚き火をしている娘さんに出会うことがあり
ちょっとした会話を楽しむこともある
武家屋敷の茅葺の葺き替えは始まっていたが、まだ全容はシートに覆われてわからない
自然の移り変わりは時間に急かされて否応なく、押し流され過去へと消えて跡形も無くなってゆく
わが人生もペンチメント(後悔)を繰り返して右往左往しながら、流されて何処かへ消えてゆく
流された過去の残像が微かに浮かび上がり、懐かしく思いながらも、すでに質感は失われて
まぼろしのわずかな残像に縋るしかなく、切なさに寂しくなる
土佐矢筈山