松明 ~光明を指し示して~

暗闇を照らし赤々と燃える。が、自身が燃え上がっては長くはもたない。火を消すことなく新しい松明へと引き継がれねばならない。

私のしてきた初任者指導

2011-03-28 09:52:01 | Weblog




 私は、拠点校指導教員(初任者教員指導)3年目を終えた。この間、担当した初任者は10人である。そうしたなかで、初任者見せる授業には、多くの共通した傾向があるように感じた。
 これからの初任者や指導教員の参考になればと考え、初任者の1年の指導の傾向を学期に分けて書き出してみる。その際、子どもの様子や私の初任者への指導も付け加えることにする。

◎1学期
 4月当初、初任者は大変な緊張と不安を持って教壇に立つ、教えようとする意欲が漲っている。指導の声がやたらに大きくて高い。しかし、子どもが見えていないので、なかなか子どもの心に響いていかず効果が上がらない。
 一方、 子どもたちも新しい学年を迎え、新鮮な心持ちである。やる気があり、頑張ろうとする姿が見える。新しい仲間、先生、教科書ということで前向きに学習に取り組む。
 指導者の私としては、初任者や子どもたちの様子を見守りながら、初任者や子どもたちのモチベーションが下がらないように褒めることを中心に声を掛ける。

 4月中旬から5月にかけて、このあたりから初任者の力量が問われるようになる。それは、緊張していた子どもたちが本性を出すようになるからである。
 子どもたちは、教師の言動をよく観察し、教師を見抜くようになる。「○○をやると先生は叱る」が、「○○では叱らない」というように見るようになる。そして先生の隙をみてつけ込んでくる。
 朝の会や授業中でも「先生、トイレに行っていいですか」と言い出すようになる。また、「先生、席替えをしてください」「先生、学活会ではドッチボールをやってよ」などと要求してくる。また、「級友や先生の話を聞かない」「授業が始まっても席に着かない」「席を離れて友だちのところへ行く」などの子どもも出てくるようになる。
 私は、ここで初任者の出方を見ているが、初任者はこれらの子どもの要求に対して、子どもに好かれたいのか、子どもに遠慮してしまうのか、これらを許した場合の最悪の状態が想像できないのか、子どもの要求をのんでしまうことがある。
 こうなると、私としては、初任者に即刻指導しなければならない。場合によっては、私が子どもに直接指導しなければならないこともおこってくる。後手に回ると大変なことになりかねないからである。(もちろん、どの初任者にもあるはけではないのだが、・・・)
このころの初任者の授業は、「子どもが聞いていなくても話してしまう」「導入が長く、なかなか本題に入れない」「子どもの反応にいちいち付き合ってしまう」「同じ発問や説明を何度も繰り返す」「手悪さや遊んでいる子どもが見えない」等が見られる。
私の初任者への指導としては、一人ひとりの子どもをよく見て話すこと、言葉を選んで話すこと、1回で話が聞ける子どもにすることなどを指導する。

 6月から7月にかけては、初任者は子どもの扱いが上手くなり、授業の展開もスムースにできるようになる。しかし、これは4月から5月にかけての課題がある程度クリヤーできた場合である。
このころの初任者の授業の特徴は型にはまっている。必ず本時の学習の「めあて」と「まとめ」を書く。ワークシートを使うなどである。45分の授業時間も守れるようになる。しかし、相変わらず、教師の話が多く、一方的である。そのために子どもは受身の学習になる。
子どもは教師の指示に従って授業が進む。「はい、教科書を出して」「めあてを書きましょう」「ここは、ノートに書いてください」などである。
私の指導としては、子どもが受身になっているから、できるだけ教師から子どもへの直接指導を少なくするように指導する
○ 子どもは次の授業の準備をしてから机を離れるようにすること。
○ 子どもの発言は教師でなく、級友に向かって話すようにすること。
○ 聞き手は発言者を見て聞くこと。
○ 「教師→子ども、子ども→教師」でなく、「教師→子ども→子ども→子ども→教師」と発言が続くようにすること。
○ 45分の中に、ペア学習やグループ学習をできるだけ入れるようにすること。
○ いちいち子どもの世話をやかないようにする。子どもが自分から動くようにすること。
○ 授業は子どもの状況により、弾力的に軽重をつけてすること。
などである。

◎ 2学期
初任者は、授業にも余裕が出てくる。しかし、形式的なものが多く、子どもの主体性がなかなか出てこない。私の指導も1学期に指導したことの繰り返しが多い中で、できるだけ問題解決型の授業をするように指導する。
○「教師が問題を出し、子どもが答える」でなく、「問題は子どもがつくり、子どもが解決をする」ようにすること。
○ 課題(問題)解決は、できるだけヒントを与えないで、自力で解決するようにすること。
○ 一人学び→グループでの学び→全体での学びという手順で問題を解決するようにすること。
○ 教師の机間指導時は、赤鉛筆とノートを持ってすること、そして、子どもの考えを拾って全体指導に生かすこと
○ いろいろな考えを小黒板等を使って提示し、子どもたちのディスカッションにより、問題を解決できるようにすること。
などである。

◎ 3学期
初任者は、「聞く、話す指導」「話形指導」「ハンドサイン」「リレー発言」「ネームプレートの利用」「声のものさし」「座席の工夫」「発表調べ」「ワークシート」などにより、子どもの主体性を引き出そうとする。これは、初任者に関わらず多くの教師が使う方法である。しかし、これらは、一定の効果はあるが、長続きはしない。子どもは学習内容そのものに魅力がなければついてこないからである。先の指導のように、子どもにばかりに要求することでは無理がある。
 ここで大切なことは、教師の教材研究(解釈)である。どんなに子どもを鍛えても形式的な学習方法だけの指導では、子どもの学習意欲を引き出すことはできないからである。
私の指導としては、学習課題の質を上げるようにすることである。どうしても子どもが「やってみたい」「調べてみたい」「考えてみたい」というような魅力的な課題を提示することである。これには、相当教師が教材を研究(解釈)しなくてはならない。そして、それに伴う発問や指示を考え、できるだけ多くの子どもが学習に参加するようにすることである。課題がよくて、授業の展開の手順がよければ初任者でもかなりの授業ができる。子どもも喜んで授業に向かってくる。これは今までの私の経験で理解している。

 大変大雑把であるが、思いつくままに書いてみたが、これは初任者の傾向であり、全ての初任者にあてはまるものではない。また、指導者により、私の考え方とは違うのも当然と言えよう。



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