自民党改憲案の問題点の分析、21条を考える前に、知識の整理をしておきます。
(かつてのブログ http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/7ddf217e3a7af1c482364e1eb34d335d)
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以下、表現の自由に関する問答集をつくってみました。
想定として、中央区立A小学校の6年生B君と、同校社会科C先生の会話です。
C先生:憲法21条を読んでみてください。
B君:
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2項 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
憲法21条の表現の自由には、どんな大切な価値が含まれているのですか?
C先生:憲法21条で謳われている表現の自由は、とても大切な条文です。
そして、その自由には、3つの価値を含んでいます。
自己実現、自己統治、思想の自由市場の3つです。
B君:それぞれ、どんな内容なんですか?
まず、表現の自由が、自己実現につながるのは、どうしてですか。
C先生:自己実現ですね。
私たちは、話したり、表現したりすることを通じて、自分自身を成長させることができることができます。
皆さんも、ひとと話す、コミュニケーションをとるそのやり取りで、毎日成長しています。
時には、批判され反省の念を感じつつ、成長します。難しい言い方では、人格を形成するのです。
また、自由研究で皆さんも調べものをすると思いますが、いろんな情報を集め、分析することで、難しい問題にぶつかっても、先生に教えてもらうことなく、自分で判断できるようになります。自己決定をすることができるようになるのです。
皆さんも、漫画家になりたいと思うひともいると思います。小説家になりたいと思うひともいるでしょう。
クリエイティブな活動をする職業の方は、表現の自由が有るからこそ、それが自分の職業にもなるし、自己実現にも直結しています。
B君:表現の自由は、作家や漫画家、画家、表現活動をされる職業のかたのみを対象にするのですか。
C先生:いいえ。
B君自身にも、私たち、ひとりひとりにあてはまります。
次に、自己統治ですが、これは、私たちの社会の大切な仕組みである、民主主義を支えるとても大切な価値です。
自己実現でも述べましたが、ひとりひとりが、社会に起きている事柄について、情報を集め、分析することで、社会がどうあるべきかについての意見を自己決定することができます。
話し合いに参加し、議論/討論し、そして、結論を出し、社会がどんな形であったらみんなが幸せになることができるかを決めるのです。
自分たちの地域のことは、そのような話し合いで解決して行きますが、区市町村、都道府県、国という風に、もっと範囲が大きくなると、政治家という代表者を選び、その代表者が、区市町村議会、都道府県議会、国会でそれぞれ議会を開き、そこで決定します。
そこに出る政治家を、選挙を通じて選びますが、その時に、ひとり一票持ち、投票によって選ぶことになります。
皆さんも、20歳になると、ひとり一票の選挙権を持つことができるようになります。
だれを選ぶかは、表現の自由がきちんと守られた社会であるからこそ、正しい情報を得て、政治家を選ぶことができるのです。
政治家を選び、その政治家が、私たちの未来の社会を決めるのですから、その判断材料となる情報は、とても大切であることが分かりますよね。
表現の自由の中でも、この政治にかかわる情報は、一番手厚い保護を与えて行かねばならないと考えられています。
B君:政治に関する情報や、知的レベルの高い表現活動にだけ手厚い保護を与えられるってことですか。
C先生:いいえ。
そうではありません。原則として、あらゆる情報を保護することが求められるし、国が表現内容に対する規制は、原則してはなりません。
よい情報か、悪い情報かは、国民自身が決めればよいのです。
このことは、三つ目の思想の自由市場とも関係することです。
表現の自由が認められていれば、社会の中で、よい考え方、意見が残り、悪い考え方、意見は、取捨選択されていきます。
古い考え方は、新しいよい考え方に更新されて行きます。
B君:思想の自由市場ということは、私たちは小学校で、いろんな意見、考え方があることを教わっているのですか?
C先生:とても大切な質問ですね。
小学校では、いろんなことが、基本的には、「答えがひとつ」として、教わっています。
一方、社会には、いろんな意見、考え方があって、今述べている思想の自由市場で、どれが本当によい意見、考え方であるか、見え隠れすることでしょう。
それらを皆さんが、小中学校で学んできた知識をもとに、自分がよいと思う意見や考え方を持てばよいのです。
小学校で使われる教科書は、教科書検定を通過したものの中で、教育委員会で選ばれたものを使用しています。
ある意味、ひとつの正しさを国が決める仕組みになっています。
本来ならあらゆる考え方を書けばよいのですが、そうすれば、教科書はものすごく分厚いものになることでしょう。
限られた時間内で教えきれるように、分量を減らさねばなりません。
高校、大学で入試がありますから、そのための基準となる知識は統一する必要もあります。
皆さんの脳は、素直に、いろんなことを吸収する能力が有ります。
素直に吸収されるからこそ、逆に、私たち教える側でも慎重には慎重を期さなくてはならないと思っています。
大学等高等教育では、教わる側で、教わる先生を選択できますが、皆さんには、そのような選択することもできません。
なおさら、教わる内容、指導法は、一定水準以上をどこでも確保されるように慎重を期さねばならないところです。
B君:早く、大きくなって、いろんなことをもっと学びたいな。
C先生:そうだね。
大きくなると、いろんな考え方があることが分かって、もっともっと学ぶことが楽しくなるよ。
そして、そこでは、憲法23条(学問の自由)「学問の自由は、これを保障する。」が、皆さんが学ぶこと、自由な研究活動を保障してくれます。
がんばってくださいね。
以上
<補足>
表現の自由、知る自由を最高裁では、どう判事しているか。
*****最高裁判例より******
損害賠償請求事件
【事件番号】 最高裁判所大法廷判決/昭和52年(オ)第927号
【判決日付】 昭和58年6月22日
およそ各人が、自由に、さまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取する機会をもつことは、その者が個人として自己の思想及び人格を形成・発展させ、社会生活の中にこれを反映させていくうえにおいて欠くことのできないものであり、また、民主主義社会における思想及び情報の自由な伝達、交流の確保という基本的原理を真に実効あるものたらしめるためにも、必要なところである。それゆえ、これらの意見、知識、情報の伝達の媒体である新聞紙、図書等の閲読の自由が憲法上保障されるべきことは、思想及び良心の自由の不可侵を定めた憲法一九条の規定や、表現の自由を保障した憲法二一条の規定の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれるところであり、また、すべて国民は個人として尊重される旨を定めた憲法一三条の規定の趣旨に沿うゆえんでもあると考えられる。
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メモ採取不許可国家賠償請求事件
【事件番号】 最高裁判所大法廷判決/昭和63年(オ)第436号
【判決日付】 平成元年3月8日
憲法二一条一項の規定は、表現の自由を保障している。そうして、各人が自由にさまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取する機会をもつことは、その者が個人として自己の思想及び人格を形成、発展させ、社会生活の中にこれを反映させていく上において欠くことのできないものであり、民主主義社会における思想及び情報の自由な伝達、交流の確保という基本的原理を真に実効あるものたらしめるためにも必要であつて、このような情報等に接し、これを摂取する自由は、右規定の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれるところである(最高裁昭和五二年(オ)第九二七号同五八年六月二二日大法廷判決・民集三七巻五号七九三頁参照)。市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「人権規約」という。)一九条二項の規定も、同様の趣旨にほかならない。
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