「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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国際私法 その思考過程のおもしろさ。国際養子縁組に適用する法律(準拠法)選択の考え方を例にして

2012-06-13 11:08:27 | 文化振興、異文化交流
 国際私法の知識は、国際都市中央区で暮らす以上、知るべきものと思って学んでいます。


 国際私法では、パズルのように法を当てはめていきます。その点に、おもしろさも存しています。

 考え方の一端をご紹介します。



【事例】
 A国内において出生し、B国内においてB国人男と婚姻をし、現在は日本国内に常居所を有するL女は、C国人である夫Sと日本人である妻Tとの間に出生し、かつ、現在は日本国内に常居所を有する未成年子Mを養子とすることを希望しており、日本の家庭裁判所にその旨の許可の申し立てをしている。
 なお、A国は、出生による国籍の取得について生地主義を採用しており、また、B国には、外国人女がB国人男と婚姻することに伴ってB国籍を強制的に取得する、と規定する法律があるものとする。C国は、出生による国籍の取得について父母両系の血統主義を採用しているものとする。
 以下の設問に答えなさい。

【設問】
1. 本件の養子縁組について適用すべき法は、何国法であるか。

2. 本件の養子縁組の許可の後、Mの実親であるSおよびTは、Mとの面接交渉を希望している。この面接交渉について適用すべき法は、何国法であるか。

以上、


 


*********解答例********************************

 途中考え方をどうとるかで、最終結論は変わってきますが、よって実際はどれかをとって、解答はひとつであるべきでところ、それぞれのどのような考え方をとれるかまでを考慮に入れて記載します。


【設問】 1. 本件の養子縁組について適用すべき法は、何国法であるか。 (L女との関係で考えるものとします。B国人男との関係を入れるとさらに複雑になるため。)


1)裁判管轄権

 まず、何国法の適用を考える前に、日本で裁判をするとことができるかどうか(国際司法管轄権があるかどうか)が問題ですが、
 養親となるべきL女は、日本国内に住居所を有し、養子となるべき未成年子Mもまた、日本国内に住居所を有し、渉外養子縁組の許可を求めるものであるゆえ、 日本の裁判所が管轄権を有すると考えられます。


2)どの国の法を適用していくかのルール

 法の適用に関する通則法(以下、通則法という。)31条1項前段「養子縁組は、縁組の当時における養親の当時における養親となるべき者の本国法による。」とある。

*****通則法31条******
(養子縁組)
第三十一条  養子縁組は、縁組の当時における養親となるべき者の本国法による。この場合において、養子となるべき者の本国法によればその者若しくは第三者の承諾若しくは同意又は公的機関の許可その他の処分があることが養子縁組の成立の要件であるときは、その要件をも備えなければならない。
2  養子とその実方の血族との親族関係の終了及び離縁は、前項前段の規定により適用すべき法による。

******************


3)縁組の当時における養親となるべきL女の本国法

 「縁組の当時」における、養親となるべき、この場合L女の本国法を決めていきます。

 まず、L女の国籍は、

 )L女は、A国内において出生し、そのA国は、出生による国籍の取得を生地主義を採用しているため、A国籍を有することになる。
 
 )また、B国内において、B国男と婚姻をし、B国では、外国人女がB国人男と婚姻することにより強制的にB国籍を有することになる。

 )結局、A国籍とB国籍の二重国籍を有することになります。



4)二重国籍を有するL女の本国法

 二重国籍を有するL女の本国法は、通則法38条1項本文「当事者が二以上の国籍を有する場合には、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国があるときはその国の法を、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国がないときは当事者に最も密接な関係がある国の法を当事者の本国法とする。」の規定に従って、判断する。

 L女は、国籍を有する国には常居所を有さず、日本に常居所を有している状態である。

 よって、L女に最も密接な関係がある国の法を本国法とすることになる。


******通則法38条*****
(本国法)
第三十八条  当事者が二以上の国籍を有する場合には、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国があるときはその国の法を、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国がないときは当事者に最も密接な関係がある国の法を当事者の本国法とする。ただし、その国籍のうちのいずれかが日本の国籍であるときは、日本法を当事者の本国法とする。
2  当事者の本国法によるべき場合において、当事者が国籍を有しないときは、その常居所地法による。ただし、第二十五条(第二十六条第一項及び第二十七条において準用する場合を含む。)及び第三十二条の規定の適用については、この限りでない。
3  当事者が地域により法を異にする国の国籍を有する場合には、その国の規則に従い指定される法(そのような規則がない場合にあっては、当事者に最も密接な関係がある地域の法)を当事者の本国法とする。
*****************



5)L女に最も密接な関係がある国の法

 最も密接な関係をどのように考えるかで、適用が変わってきます。

 )L女は、現在は日本国内に常居所を有するから、日本国であり、よって、L女の本国法は、日本国法である。

 )L女は、身分と出生であれば、出生のほうが密接に関係していると考えられるから、A国が密接であり、よって、L女の本国法は、A国法である。

 )L女は、B国人男と婚姻し、B国に長く居住していた(問題文に書かれていた場合)から、B国が密接であり、よって、L女の本国法は、B国法である。



6)通則法31条1項後段の規定

 通則法31条1項後段「養子となるべき者の本国法によればその者若しくは第三者の承諾若しくは同意又は公的機関の許可その他の処分があることが養子縁組の成立の要件であるときは、その要件をも備えなければならない。」の規定に従う必要がある。

 よって、「養子となるべき者の本国法」も適用されることになる。


7)Mの本国法

 MがC国人である夫Sと、日本人である妻Tとの間で出生しており、C国が出生による国籍の取得について父母両系の血統主義を採用しているから、C国籍を取得する。

 また、国籍法2条より日本国籍も取得する。

*****国籍法2条****
(出生による国籍の取得)
第二条  子は、次の場合には、日本国民とする。
一  出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
二  出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
三  日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。
**************

 重国籍であるが、4)と同様にして、常居所が日本であり、日本法を適用すると考えられる。


8)結論

 本件の養子縁組について適用すべき法は、5)の考え方のどれかと、日本国法である。





【設問】2. 本件の養子縁組の許可の後、Mの実親であるSおよびTは、Mとの面接交渉を希望している。この面接交渉について適用すべき法は、何国法であるか。

1)養子縁組の後の実親による養子との面接交渉という法律関係の性質の考えかた

 養子縁組の後の実親による養子との面接交渉という法律関係は、その性質をどうとるかで二通りの考え方ができる。

 )その性質を、養子縁組の「効力」に係る事項と決定すると、通則法31条1項前段の規定に従ってその準拠法を選定することとなる。

 )その性質を親子間の法律関係に係る事項と決定すると、通則法32条の規定に従ってその準拠法を選定することとなる。


2)))のどちらの考え方をとるべきか

 養子縁組の実親による養子との面接交渉という法律関係は、比較実質法的にみて、普通養子縁組と特別養子縁組とがあるところ、特に後者の制度(断絶、会わせないこともある)に配慮すると、その法律関係の性質を、養子縁組の効力に係る事項と決定するのが妥当である。


3))の考え方をとった場合、その処理は、設問1.における整理と同じになる。


4)仮に、)の考え方をとった場合

 その性質を親子間の法律関係に係る事項と決定すると、通則法32条の規定に従ってその準拠法を選定することとなる。
 
 通則法32条「親子間の法律関係は、子の本国法が父又は母の本国法と同一である場合には子の本国法により、その他の場合には子の常居所地法による。 」に従って、「子の本国法」が「父又は母の本国法と同一である場合」かであるかどうかを検討する。

 設問1で検討した通り、本件において、「子の本国法」は、日本国法であり、実「父の本国法」は、C国法であり、実「母の本国法」は、日本国法である。

 同条の規定において、「子の本国法」が、「父又は母の本国法と同一である場合」に該当することとなる。

 この場合には、したがって、この面接交渉について適用すべき法は、日本国法であるということとなる。

******通則法32条****

(親子間の法律関係)
第三十二条  親子間の法律関係は、子の本国法が父又は母の本国法(父母の一方が死亡し、又は知れない場合にあっては、他の一方の本国法)と同一である場合には子の本国法により、その他の場合には子の常居所地法による。
 
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