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土壌汚染地購入のための違法な支出金の返還をもとめる裁判、都を違法とするゆえん。

2012-11-03 23:00:00 | 築地を守る、築地市場現在地再整備
 では、東京都のどこが違法か。

 以下は、11月5日13時45分開廷の法廷での焦点のひとつ、東京都が、土壌汚染地購入のための行った違法な支出金の返還をもとめる裁判における私たち都民のひとりからの陳述書です。


*****陳述書******

第1 朝日新聞のスクープ記事と東京都の事実に反する答弁

   私が、築地問題に関心を持ったのは平成19年の都知事選挙がきっかけでした。オリンピック招致を理由の公共事業優先、福祉の後退など、石原都政への批判が高まっていました。石原都知事任期中ではありませんでしたが、子育て中は、保育園での保育士の配置の削減など、美濃部都政の財産が切り崩されていくのが実感としてありましたので、家族の生活に責任を負う者として、都政を監視しなければならないと思ったのです。

選挙後は、継続的に都政を検証しようという、市民の会が自然発生的に立ち上がり、オリンピック招致を検証し始めました。その中に築地の移転問題があったのです。特に、土壌汚染の問題は深刻だと思っていました。

私は、平成22年1月5日の朝日新聞の記事によって、豊洲移転予定地の購入の全体像とその問題点を知りました。

この記事には、東京都が豊洲の土地について、土壌汚染の費用を負担し、汚染者である東京ガスに請求できない事実が書かれていました。私は、これを見て、移転そのものだけではなく、予定地の購入についても、都の財産の切り崩しのような重大な問題があるのではないかと考え、東京都に対し、住民監査請求をすることにしました。

この朝日新聞の記事は、朝刊一面に掲載されたスクープ記事でした。つまり、一般の人は、このような事実を知らず、かつ報道する価値があると考えたからこそ、報道機関である朝日新聞は朝刊一面に掲載したのです。被告が主張するように、一般の人が通常の注意を払えば知ることができる程度のことであれば、そもそも新聞記事にはならなかったと思います。

ところが、監査委員は、土地の売買から1年を経過していて、正当な理由がないとして、私たちの監査請求を却下しました。この監査委員の判断は間違っていると思います。

まず、監査委員は、豊洲の移転予定地を東京都が購入したこと自体は東京都が委員会に報告しているから、この報告がホームページ等で閲覧可能となった時点で、市民が監査請求することができたのだ、といいます。

確かに、東京都は平成18年3月17日の東京都議会経済・港湾委員会において豊洲の移転予定地を購入したことを報告しています。しかし、東京都は、この委員会を含めた各種委員会で、東京都が土壌汚染の処理の負担をしないという内容の虚偽の答弁をし続けていましたし、不動産鑑定依頼に際しても、東京ガスが土壌汚染を除去する義務を負担しているという前提で依頼をすることで、事実を隠ぺいしていました。この東京都による事実の隠ぺいについては第2で詳述しますが、そのような隠ぺいがあったからこそ、私は、土壌汚染があるということを考慮しない価格で東京都が土地を購入しても、特段の問題はないと思い、問題を見抜けなかったのです。

ところが、平成22年1月5日の朝日新聞の報道では、東京都が汚染対策費用を負担するということになっていました。私は、この朝日新聞の報道で関係資料と全体像が分かって初めて、東京都が豊洲の移転予定地を、土壌汚染を考慮しない、違法な価格で買ったものだと分かったのです。



第2 東京都の事実の隠ぺいについて

 1 都議会各委員会のホームページで知り得た情報

経済港湾委員会や予算特別委員会の委員を務めた議員に聞いたところ、土地の購入に関する各委員会への報告は、ホームページ上では委員会の速記録でしか確認できないそうです。また、購入に関する資料、財産価格審議会の議案書や契約書は、委員や委員会が請求しなければ委員も見ることができませんし、資料がホームページに掲載されるわけでもないそうです。委員会で委員が資料を請求して質問しているかどうかまでは、速記録からは読みとれません。つまり、委員会において問題意識をもった委員が資料を請求して的確な質問をしない限り、一般の都民がホームページ上で速記録を見たとしても、購入に問題が発生しているかどうかを知ることはできないのです。

この度の移転予定地購入についても、委員会の速記録で内容を確認した限りでは、汚染が除去されるように読み取れますので、汚染無しの価格で土地を購入したことを問題視することには繋がらりません。

すなわち、平成18年12月12日経済港湾委員会において東京都は、「東京ガスは、環境確保条例に基づく土壌汚染対策に沿って、汚染土壌処理基準以下になるように処理をおこなっておりますが、測定できないごく微量な物質が残留する可能性はございます。」と発言しています。この議事録を見れば、測定できる汚染は除去されると受け取るのが当然です。土壌汚染対策法の環境基準を超えた汚染は全て測定できる汚染ですから、環境基準を超えた汚染は除去されていると解釈されます。

また、平成18年10月25日公営企業会計決算特別委員会の速記録は、「東京都が工事をした場合に東京ガスの操業に基づく汚染物質等が発見された場合につきましては、契約書の文言は今不確かではございますが、東京ガスが処理するという了解は得てございます。」と記述されています。つまり、仮に汚染が残置されていたとしても東京ガスが除去することになっていますから、基準以上の汚染を除去した上で、更に用心深く汚染処理対策を考えているのだと受けとめることになります。

   このように、ホームページ上で委員会の速記録を見る限り、汚染は問題無く処理されることになっています。各委員会における東京都の答弁のとおりに汚染が除去されるであれば、土地の購入価格が不当に高いとまでは言えません。以上を踏まえますと、各委員会の速記録をホームページで見た時点で、一般人である都民に対して、東京都の答弁を虚偽だとして監査請求するように求めることはあまりにも酷だと思います。



 2 財産価格審議会議案書等で知り得た情報

次に、仮に委員が財産価格審議会の議案書や不動産鑑定評価書などの土地購入資料を入手した場合、一般人である都民がどこまで情報を知り得たかを整理します。

各報告書等における土壌汚染の条件は次のようになっています。



不動産鑑定報告書(平成17年10月25日)
「土壌汚染の蓋然性がありますが、依頼者(東京都)によれば、東京ガス(株)が土壌汚染を除去する義務を負担しているとのことです。よって、依頼者のご指示により、本鑑定評価では汚染土壌除去後の対象地の価格を求めます。」



財産価格審議会議案書(平成18年1月20日)
「【土壌汚染の有無】土壌汚染調査の結果、土壌汚染対策法に定める汚染物質(シアン化合物)の存在が判明した。しかし、土壌汚染対策については、「豊洲地区開発事業に係る合意にあたっての確認」事項により、従前の所有者が処理対策を実施することとなっている。本件土地については従前の所有者である東京ガス(株)が、平成18年3月までに汚染物質を掘削除去することとなっているため、評価にあたって土壌汚染対策に係わる要因を考慮外とした。」



財産価格審議会議案書(平成18年11月10日)
「土壌汚染が発見された場合には、従前の所有者(仮換地前の所有者:東京ガス(株))が処理対策を実施することになっているため、土壌汚染は存しない更地として評価する。なお、土壌汚染調査の結果、土壌汚染対策法に定める汚染物質(シアン化合物、ベンゼンなど)の存在が判明したが、既に条例に基づく適切な処理対策が実施され、その作業は完了しており、現在汚染物質は存在しない。」



以上の3件の資料を読めば、「土壌汚染が発見された場合には、従前の所有者(仮換地前の所有者:東京ガス(株))が処理対策を実施する」、「東京ガス(株)が、平成18年3月までに汚染物質を掘削除去」し「現在汚染物質は存在しない。」と理解されます。仮に委員がこれらの資料を請求して事前に読んだとしても、汚染は処理され購入価格に問題があると気付くことはないと考えます。したがって、速記録に残る的確な質問は難しく、結果、一般都民も問題に気付くことはなかったと思います。また、もし一般人である都民が上記3件の資料を見たとしても、汚染が除去されるのであれば購入価格を不当とまでは考えないのが当然だと思います。

しかし、これら説明された事実関係は全く違っていました。東京都は土地購入以前に東京ガスとの間で、委員会速記録や不動産鑑定書、財産価格審議会議案書の汚染条件に記されていることとは異なる内容の約束を取り交わしていました。それが、平成17年5月31日の「豊洲地区用地の土壌処理に関する確認書」(以下、「平成17年確認書」といいます。)です。  

平成17年確認書は、汚染処理について、「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」に基づき「汚染拡散防止計画書」どおりで良いとする内容でした。拡散防止とは、覆土などで汚染の飛散を防止することも含みます。一部追加の対策(操業地盤面から2mまでは環境基準を超えた部分の対策を行う)を東京ガス側が行うとされたものの、環境基準を超える大量の汚染を同社が残置することを東京都が認めた内容でした。この平成17年確認書によると、残置汚染の除去責任を東京ガスが負っていないことは明らかです。これこそが隠ぺいされた事実です。そして、事実とは異なる汚染処理条件が各委員会に報告されてきたのです。

私はこの平成17年確認書の概要を平成22年1月5日の朝日新聞の記事で初めて知りました。その記事には「処理後に汚染が見つかった場合の処理や費用負担を同社に義務づける条項はなかった」と記されていました。

東京都は、平成17年確認書についても、事実とは異なる報告をしています。経済・港湾委員会(平成19年6月21日)において、後藤新市場建設調整担当部長は、「東京都は平成17年5月、東京ガス(株)との間で、処理基準を超える操業由来の汚染土壌について、同社が適切に処理を行うという内容の確認書を取り交わしております。」と発言しています。この発言から環境基準を大幅に超える汚染がそのまま残されるとは、一般人に想像もできません。ここまで堂々と事実と異なる汚染処理条件を提示されれば、一般都民としてはこれを見破り、情報開示に至ることはできません。私もこの平成17年確認書に問題があることまではわかりませんでした。東京都が事実を隠ぺいしたり、虚偽の議案書を作成したりすることまでは想定していませんでした。

このような隠ぺい工作を重ねておきながら、委員会の速記録がホームページ等で閲覧できるようになった平成18年5月から開示請求をすることができたことを理由に、正当な理由がないと東京都は主張しています。しかし、この主張は、東京都が都議会各委員会で報告したことをすべて虚偽だと疑って関係資料を全部情報開示請求することを求めているに等しいもので、信義に反し、不合理だと言わざるを得ません。

東京都を除く46道府県、14政令都市が2006年当時すでにA4用紙一枚あたりのコピー代を10円にしていましたが、東京都は、いまだに情報開示請求にかかるコピー代を、A4用紙一枚あたり20円請求します。築地市場移転問題に関する土壌汚染報告書のコピー代の概算金額は100万円程度であると告げられたこともあります。

各種委員会の速記録だけでは到底、土壌汚染のある土地の購入価格が不当であることはわからないのに、市民に膨大な出費及び労力を要求することを前提とする東京都の態度は、地方自治に民主主義を求める手段としての住民監査請求を否定するもので、到底受け入れがたいものです。



第3 相当な期間内に監査請求をしたことについて

東京都は、私たちのした監査請求が相当な期間内にされたものでないから不適法であると主張しています。しかし、私たちが平成22年1月5日に朝日新聞のスクープを見てから、監査請求をするまでの期間は、監査請求するか否かを判断するために必要最小限の時間でした。

まず、私たちは、この朝日新聞のスクープ記事が出た当日、即座に、①覚書(平成13年2月21日締結)、②築地市場の豊洲移転に関する東京都と東京ガスとの基本合意(平成13年7月6日締結)、③平成17年確認書を含む10件の情報開示請求を行いました。朝日新聞のスクープ記事に書かれていることをもっと詳細に調べるためです。記事の内容からして、住民監査請求すべきだと感じましたから、監査請求の審査に耐える資料や証拠資料を集め、精査するつもりでした。

この情報開示請求にかかる情報がすべて開示されたのは、平成22年2月12日です。新聞記事の報道から既に40日近く経っていました。この他、平成22年1月13日にも情報開示請求をし、その開示は平成22年2月25日でした。開示資料を精査する中で、市場用地取得と土地区画整理事業が一体のものであり、それに関する資料の収集が必要であることに気付き、同年2月11日に追加で開示請求したところ、開示されたのは3月24日で、これらが揃うまで約80日かかっています。

開示請求した資料は膨大な量になりました。私は、一級建築士として仕事をしておりますが、多少の専門的知識があっても、これらの資料を読み解くのには大変時間がかかりました。開示資料を読み解くばかりでは無く、朝日新聞で指摘されていた、ベンゼンの表層ガスが検知されながら、土壌の採取がおこなわれなかった地点のプロット図の作成や、13年指針の調査で行われた対策工事の範囲と、15年指針で調査した場合の汚染の範囲の比較図の作成なども行いました。また、社団法人日本不動産鑑定協会から「土壌汚染に関わる不動産鑑定評価上の運用指針」を入手し、本来土壌汚染がどう評価されるべきかについても調べました。さらに、東京都環境局、中央卸売市場を訪ね、都の見解も確認しました。それらを総合し、やっとの思いで、東京都による豊洲の市場移転予定地の売買が不当に高い金額で土地を買い受けたものであることを突き止め、同年4月1日に監査請求をしたのです。その間の所要は87日間でしたが、関係資料の分量の多さや内容の濃さから言って、これ以上短期間でまとめ上げるのは不可能でした。監査請求の対象となっている豊洲の移転予定地の売買は、金額が大きいですので、判断は慎重にしなければなりません。加えて、築地市場移転問題は、東京都の行政全体の中でも巨大なプロジェクトですので、そのプロジェクト全体を俯瞰して、売買の妥当性を考えなくてはならないという側面もあります。

東京都情報公開条例によれば、開示の決定期間は60日まで延長できます。60日延長は稀なことではなく、東京都以外のものの情報があった場合、意見を聞くなど、または個人情報をマスキングするのに時間がかかるなど、様々な理由で60日延長は行われます。今回のように資料が膨大になれば、それだけ時間がかかることも多いのです。被告は監査請求までの期間は60日が相当としていますが、それでは情報開示だけで、監査請求の期間を失してしまうという状況も生まれることになります。監査される側が開示期間を決定するのですから、監査請求が60日という期間が前例になれば、実質的に監査請求はできないことになります。これは著しく不合理ではないでしょうか。

東京都の情報開示制度や住民監査請求は、地方自治が住民の意思に基づいて行われるという地方自治の本旨を全うするために認められた住民の権利です。今回の監査請求が相当な期間内になされなかったというならば、この情報開示制度や住民監査請求は、どんな能力を持った市民を想定しているのでしょうか。

私たちは、可能な限り急いで住民監査請求をしました。住民監査請求をするまでにかかった時間は、監査請求するか否かを判断するための必要最小限のものです。

  

以 上

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