「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

がん緩和医療 

2007-10-11 21:10:34 | 医療
日本では、1987年にがん緩和医療が言われ始め、
それから、20年が経った。

本年2007年、がん対策基本法が、成立し、
その中でも、がん緩和医療が述べられている。

ようやくがん緩和医療のあるべき姿が、
ここ日本でも実現されてきた。

がん対策基本法で謳われているが、
16条
*疼痛の緩和を、早期から適切にすること
*居宅において、がん患者に対しがん医療を提供するための連携協力体制を確保
とある。

緩和医療は、
今までの一般的な概念は、
「がんの治療をしても、助かりようもないターミナルな状況(終末期)で、なされるもの」というイメージをもたれると思うが、そうではない。

緩和医療は、
①何もしないという消極的ケアでなない。
②終末期だけではない。
③がん治療の痛みに対し、積極的に対応する医療なのである。
当然、従来から言われる
④末期がん患者のケア、見取りのケア、倫理面も含めたケアも含まれる。

緩和医療は、
がんの苦痛に対応する。
苦痛とは、
①身体的苦痛
いたみ、しびれ、全身倦怠感、食欲不振、便秘、嘔気・嘔吐、呼吸困難
②精神的苦痛
恐れ、怒り、不安、孤独感、抑うつ、せん妄
③社会的苦痛
④スピリチュアルな苦痛

がん患者の苦痛は、複合的であることが多く、
全人的な苦痛の緩和が重要となる。
多職種チームによる対応が必要になるのである。
一人の医師では出来ず、連携が必要なのである。


がんが、まず診断された場合、病院に入院し、
臨床腫瘍学の治療チームが治療に当たる。
治療に伴い、苦痛が現われるわけで、
そこで緩和ケアチームが、同時に、早期から緩和ケアも行う。
病期が進むにつれ、治療のウェートが中心であった状態から、
緩和ケアのウェートが徐々に重くなっていく。
途中、「PCU(見取りの施設)-地域病院ー在宅ケア」の
三角形の連携にバックアップされた地域医療へ帰っていくのが理想である。

緩和ケアチームの構成は、
緩和ケア医、精神科医、専任看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、放射線科医、臨床心理士、栄養士、理学療法士、チャプレンら。

在宅に移行するポイントは何か?
①痛みのために、在宅への移行が遅れることがないように緩和ケアを充実させる。
②在宅医療に移行しやすい鎮痛法を行う。
③痛みが、骨転移、神経障害などで大きく変化する可能性があることに対応する。
④在宅でのニーズに適した高度な鎮痛技術を提供できるシステムの構築
⑤病院と在宅との定期的な情報交換の必要性

現在、『がん疼痛治療ガイドライン』(2008年予定)
が、待たれるところである。
そして在宅医療におけるがん疼痛治療ガイドラインも、
同時に網羅されていることが求められる。
疼痛緩和の薬剤は、
強オピオイド製剤といわれ、
モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルが中心。


住みなれた地域、家で、
気兼ねなく療養できることが、
一番の幸せであると、私は考える。
だから、在宅での療養を求める人には、
それを可能にする環境の整備を、していきたいと考える。

医療面でいえば、
ここで述べた、
緩和ケアの充実これが、まず大事。
また、外来抗がん剤治療の充実。

看護面で言えば、
訪問看護の充実。

行政面で言えば、
交通機関、道路の整備。

そして、それらを可能にする
NPO、ボランティアスタッフの活動。

これらが合わさり、
初めて実現するであろう。

がんの緩和医療のまとめ。
キーワードは、
「早期から継続的に、積極的に」
「多職種チームで」
「連携」


*本日10/11開催中央区医師会の勉強会を参考に作成
講演『がん緩和医療の現状と今後の展望』
演者 国立がんセンター中央病院 
   手術部 部長
   緩和医療支援チーム 管理者
   下山 直人先生




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ケアマネージャーから見た介護の現場 07年10月

2007-10-11 16:10:50 | 医療
 ケアマネージャーの方々とお話をする中で、介護の現場での問題点・課題を列挙する。
 今後、行政がどのような体制整備をやっていけるか、考えて行く材料として書き置く。

【住宅改修の業者との連携】
 在宅療養において、住宅改修が必要になる場合がある。ケアマネージャーは、改修について提案しかつ、改修の理由書を記入し、利用者と共に業者を探すことになる。
 現在において、なかなか住宅改修業者との連携がうまく言っているとは言いがたい。
 手すりをつけるのに、ある業者は20万円、別の業者は8万円と値段に開きがあることもある。
 出来ない改修はできないとはっきり言う業者もあれば、改修の計画を立て、初期の工事をし、やっぱり出来ませんでしたという業者もある。
課題)
①住宅改修業者のサービスの比較ができない
②住宅改修業者の区認定の「優」制度がない(福祉器具の業者にはある)
③住宅コーディネーターとの連携が少ない


【在宅療養から入退院したときのサービスのきれめのない継続】
 在宅療養から、入院や施設入所した場合、ケアマネージャーとのつながりが切れてしまう。(一般的に3ヶ月で、一度契約自体が解消されることにもなる。)
 退院して、引き続き、在宅療養に復帰する場合、切れ目のない十分なサービスが、利用者に提供されるようにしなくてはならないが、入院時の治療内容についてなどの情報がうまく共有される必要がある。
課題)
①病院によりケースワーカーの配置のありなしがある。ケースワーカーと連携できるのが、一番スムーズに行くようである。
②ケアマネージャーとしては、入院時の看護サマリーがあれば、非常に助かる。その看護サマリーの情報共有が出来る体制の整備。
③個人情報保護の観点から、ケアマネージャーの病院への電話照会が難しい場合がある。
④退院日当日は、利用者は、サービスを在宅でうけることができない決まりがある。
⑤退院日前に、病院内で担当者会議が、訪問看護師・ケアマネージャー・入院時の担当看護師及び入院時の担当医と在宅の主治医らで行われるのが理想。


【在宅酸素療法】
かなり高額につく在宅の治療である。

【担当者会議へ主治医が提出する書類】
この書類は、無料の地域もあれば、有料の地域もある。

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