花熟里(けじゅくり)の静かな日々

脳出血の後遺症で左半身麻痺。日々目する美しい自然、ちょっと気になること、健康管理などを書いてみます。

『マスコミは被災地復興の実例を報道してほしい。』

2013年03月21日 16時28分50秒 | ちょっと気になること
東日本大震災から2年経ち、TVでは各局とも、被災地の現状を伝える特別番組が放映されました。 新聞でも特集記事を掲載しています。 TV、新聞報道で双方に共通していることは、「2年経過しているにも関わらず、復興の足取りが遅い」という論調です。被災地の震災直後とほとんど変わらない荒涼とした姿が放映され、未だに、仮設住宅などに約31万人5千人超が避難生活を余儀なくされていること、等々が報道されています。たとえば下記の3月13日付の産経記事とNHKデータ。

(産経新聞:3月13日)
「日本大震災の発生から2年が過ぎた。復旧の遅々とした歩みは、関西にいてももどかしく痛ましい。なにかがおかしい。平成7年1月に起こった阪神大震災の復興を見てきた立場から、気になることを若干、挙げる」

(NHK WEBデータ)
http://www3.nhk.or.jp/news/2013shinsai/data.html

関東大震災時の後藤新平の取り組みや、阪神淡路地震からの復興などと比べ、復興の足のりの遅さが厳しく指摘されています。確かに、復興の足のりは遅々としていますが、その中でも住民や地域行政の努力で少しずつ前に進んでいることもあると思いますが、これらは、なかなか報道されませんし、報道されても目立たない記事になっているようです。
政権交代し、やっと日本全体で政治的に前向きな姿勢が出てきていますから、マスコミが東日本被災地関連で報道する場合、暗いことばかりではなく、国民に希望を持たせるような報道に知恵を絞ってもらいたいと思っています。たとえば次の2つの記事。

(3月11日の河北新報)『仙台湾堤防5キロ月内完成、整備局見通し 津波対策に工夫』
「堤防は海岸線から100m~200m離れた高さ2~3mの地盤に建設され、実際の堤防高は4~5m。内陸側でかさ上げした道路との多重防御で被害を減らす」と記事に書いてあります。 
海岸に高さ拾数メートルもの防潮堤を建設する計画がしばしば報道される中で、仙台湾堤防は関係者が知恵を絞って、工夫をした結果が出ました。
海の見えない海岸は想像もできません。漁業は海を見つめながら行うものではないでしょうか。 高すぎる堤防には、景観のほかに、風向きが変わることからくる気候の変化の影響なども懸念されます。津波を恐れるあまり、過度に防潮堤を高くすることだけに関心が集まりがちですが、仙台湾堤防の考え方は、現実的で、しかも多重防災の考えを採用しており、高く評価したいと思います。

(3月11日の日経新聞)『被災農地、63%が再開可能に 漁港は36%』
「東日本大震災で被災した農地のうち、63%が今春までに農業を再開できる見込みであり、水産関連では被災した319漁港のうち36%の115港が3月末までに港全体で陸揚げができるようになる見込みで、水産加工施設は69%で業務を再開した」と農林水産省が発表しました。
この記事も、復興の実情が理解できるよいニュースと思います。 他の省庁も復興が進んでいる様子を、タイムリーに発表していただきたいと思います。


東日本大震災被災地の場合、次の特徴がありますので、復興計画を立案・実行時留意すべきです。

<東日本大震災の被災地域は個々に独立した地域であること>
関東地方は「都市化された広大で平坦な地域」であり、神戸は「人口の密集した狭い地域」です。したがって、双方とも、復興計画の基本は一つでよかったのですが、今回の東日本大震災の被災地は、「リアス式の複雑で長い三陸海岸と平坦な仙台平野」であり、復興の計画は各々の地域で異なってきます。 すなわち、県・市町村などの自治体が復興計画の主体になります。しかし、被災地では、多くの職員が被災しており、専門家も絶対数が不足していますので、復興計画の作成が遅々として進みません。

<自治体自体被災者になっていること>
市長市村などの自治体も庁舎が消滅したり、職員が死亡したりして、機能不残になっているところも多くあります。仮設の庁舎でなんとか業務を進めていますが、さらに、職員が被災したり、死亡したりしており、専門知識を持った人手が不足しています。日本中の自治体からも応援の職員を派遣していますが、絶対数が足りません。

<被災地の地形が変わってしまっていること>
巨大地震の影響で地形にズレが生じ、境界(所有権)の確定が困難になっており、土地区画整理が手つかずになっていること。さらに、死亡したり不明者も多く、所有者を特定するのに時間がかかること。

<被災地域のほとんどは高齢化の進んだ過疎地域であること>
東日本大震災の被災地は過疎化が進んだ地域が多く、被災した人の多くは高齢者であるということです。復興の担い手になるような働き盛りの若手は、都市に出てしまっています。したがって、復興への熱意もなかなか燃え上がらず、仮設住宅などに引きこもってしまう高齢者が多くなります。前向きの復興よりも、高齢者の介護などが優先される事態になっています。

復興計画といえば、壮大なビジュンを考えますが、東日本大震災の地域的な特殊性を考えると、まず、地域の人々の日常生活をとりもどすことを復興の基本にしなければなりません。
そのためには、他府県による被災自治体への支援を強化すること、被災地の声を復興に生かすこと、各省庁にまたがる許認可など行政手続きを迅速にできるように復興庁に大きな権限を持たせること、が必要です。しかし、あくまでも国民の血税ですので、復興資金の使途については復興庁や中央官庁などが厳しく監査を行うべきです。すなわち、計画の事前の審査によりも、資金の使途について、事業実施中や完成時の「監査」に重点を移すべきと思います。

住民の生活安定の事業実施のめどがたった時点で、次は、地域復興のビジョン作りに着手しなければなりません。
これには、地域の知恵と専門家の知恵を組み合わせて、立案する必要があります。中央省庁が地域の実情を踏まえずに、専門家の助言を元に立案する愚は避けなければなりません。


「仙台湾堤防5キロ月内完成、整備局見通し 津波対策に工夫」
(河北新報 3月11日)
東日本大震災で被災した宮城県仙台湾南部の海岸堤防のうち、東北地方整備局が本格復旧を進める約5キロが3月中に完成する見通しとなったことが10日、分かった。震災の教訓を踏まえて設計された海岸堤防の完成は初めて。震災から2年を経て、新しい海岸の姿が見え始めた。
完成するのは仙台空港(名取市、岩沼市)や、下水処理をする県南浄化センター(岩沼市)など公共施設付近の4カ所。堤防の高さは全国的な基準となる東京湾平均海面高(TP)7.2メートル。震災前より約1メートル高くなった場所もある。
いずれも海岸線から100~200メートル離れた高さ2~3メートルの地盤に建設した。実際の堤防高は4~5メートル。数十~百数十年の頻度で発生する津波に対応する。東日本大震災級の津波は内陸側でかさ上げした道路との多重防御で被害を減らす。
 堤防の構造も見直した。被害が大きかった内陸側のり面を強化。コンクリートブロックを上下で組み合わせ、津波でブロックが浮き上がらない工夫を施した。
工事には震災がれきを活用した。ブロックの下に敷く盛り土に津波堆積土砂とコンクリート殻を使い、がれき削減と費用軽減を図った。
仙台湾南部海岸の堤防復旧で整備局は、仙台市から宮城県山元町までの海岸線のうち計約30キロを担当し、昨年1月に着工した。工事完了は2015年度を見込む。


「被災農地、63%が再開可能に 漁港は36% 」
(3月11日の日経新聞)
農林水産省は11日、東日本大震災で被災した農地のうち、63%が今春までに農業を再開できる見込みだと発表した。震災では岩手、宮城、福島の3県を中心に2万1480ヘクタールの農地が津波をかぶったり、用排水路が壊れたりした。同省は3年間での復旧を目指しており、おおむね目標どおりに進んでいるという。
 水産関連では被災した319漁港のうち36%の115港が3月末までに港全体で陸揚げができるようになる見込みだ。水産加工施設も69%で業務を再開した。一方、福島第1原子力発電所事故に伴う農林水産関係の被災者への損害賠償は、4330億円の請求額に対して、3587億円(83%)が支払われた。」


(2013年3月21日 花熟里)
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