花熟里(けじゅくり)の静かな日々

脳出血の後遺症で左半身麻痺。日々目する美しい自然、ちょっと気になること、健康管理などを書いてみます。

「脳卒中リハビリに“ボツリヌス療法”や“磁気刺激治療法”を組み合わせる」

2012年06月21日 17時17分52秒 | リハビリ・健康管理
「NHKためしてガッテン」6月6日放送 【つかむ!歩く!脳卒中リハビリ夢の最前線】を録画しておいたものをじっくりと見ました。

まず、番組では、「6ヶ月の壁」として、発症後6ケ月過ぎる頃になると、リハビリを続けているにもかかわらず、回復の効果があまり見られなくなってきて、「維持期」と呼ばれる時期に入っていくことが強調されます。 然し、維持期でも依然として脳の機能回復は続いており、脳からの指令を伝達する神経系統のネットワークの中で、マヒした部位が外部からの刺激に過度に反応して、ネットワーク内での情報の伝達がうまくいかなくなることが、模型を使って分かりやすく示されます。 この状態のとき、マヒした部位の筋肉にボツリヌス菌の神経毒を精製したもの(薬)を注射して、過度の反応で硬直した筋肉を弛緩させることにより、リハビリによる情報伝ネットワークの修復(機能の回復)を促進するものです(ボツリヌス療法)。番組の中で「機能回復には、注射するだけではだめで、リハビリが必要」と強調され、字幕でも示されているように、あくまでも、リハビリの効果を促すものです。

また、番組後半では、脳に磁気刺激を当てて、脳の正常な部位の働きを抑制することにより、損傷を受けた脳の部位の機能回復を促進する方法で、「磁気刺激療法」といわれ、東京慈恵会医科大学での実例が紹介されます。 こちらも、リハビリによる機能回復を手助けする療法であり、磁気刺激療法だけで機能回復するものではありません。

番組で紹介されるのは、手や足がほとんど動かない症状の重い患者の方でしたが、ボツリヌス注射療法をきっかけにリハビリしていく中で指や足が動くようになり、また、磁気療法を受けた方も、手が動くようになりました。 脳卒中後遺症のリハビリには、鹿児島大学で行われている“促通反復療法”など、効果を上げている様々な方法がありますが、このたびの番組を見る限りでは、リハビリを続けているにもかかわらず、手足が動かずに、今までのリハビリに限界を感じている患者の中には、ボツリヌス療法や磁気刺激療法もリハビリに併用することにより効果が望める方法だと思います。

私の場合は、入院中に杖と装具で歩けるようになりました。 手も動くので、不自由ながらも日常生活もなんとかなっています。 3ヶ月で退院、その後は毎日、朝と夜に、ストレッチなどリハビリしています。退院してからは、歩行距離が延びるなど、持久力はついたと実感していますが、マヒ部分の筋肉のこわばり、手や足の動きなどの運動機能、感覚異常などは、退院時と現在とでは若干の改善はありますが、著しい改善をしているわけではありません。
 全国の多くの脳卒中患者の中には、私と同様、ある程度回復した方も多いと思います。 この方々は皆、より高い回復状態を目指して毎日、リハビリを行っています。 リハビリに併用して回復を促進させる新たな療法は期待できないのでしょうか。地道にリハビリを続けることが王道とわかってはいますが。


以下、番組の紹介から引用。
番組への登場者
専門医:・梶龍兒(徳島大学神経内科教授)
    ・安保雅博(慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座授)

<リハビリを阻む「6か月の壁」>
脳卒中などで傷ついた脳神経細胞は、え死してしまうと二度と復活しません。そのかわりに、損傷した脳部分の周囲の細胞が、新しい回路作りを必死に行います。回復期にリハビリの効果が劇的に現れるのはこのためですが、6か月を過ぎると、リハビリを頑張っても効果はあがらなくなり(維持期)、事実上、治療はここで終了。病院から退院して以降は、後遺症が悪化しないよう気をつけることしか出来ないのが実情です。

<終わってなかった!神経回路復活の底力>
ところが最新の研究で、この壁を打ち破る画期的な方法が開発されました。それは、ボツリヌス菌の神経毒から精製された薬を筋肉に注射し、神経の暴走を止めるというものです。1〜2日で手足が動き始めることもあり、リハビリと併用することで目覚しい効果をあげています。2年前から保険も適用された、画期的な治療法です。

 <ボツリヌス療法>
ボツリヌス菌の毒素を薄めて精製した薬を注射して、硬くこわばった筋肉を柔らかくします。もともと筋肉が硬くなっていない人には効果がありません。筋肉が柔らかくなったところでリハビリを行い、手や足の機能回復を目指します。
・一回の注射で3か月ほど効果が続きます。
・副作用として、注射した場所が痛くなる、筋肉がだるくなるなどがあります。
・注射できる量が定められているため、指や腕、足など少しずつ順番に治療します。
・保険適用ですが、一回の注射で数万円かかります(量によって多少異なります)。
・主な診療科は神経内科やリハビリテーション科です。(施設によって多少異なりま    す)。

<脳の働きを抑えて、回復力が大幅アップ>
もうひとつ、研究が進んでいる方法は、脳に磁気刺激を当てるという治療法です。実は脳卒中が起きて脳の一部が損傷すると、健常な部分が逆に強く働きすぎて、体の動きを妨げてしまいますが、磁気で脳の活動を弱めることで(大脳半球間抑制)、数日で手足が動くこともあります。
研究段階の治療ですが、頭部に磁気刺激を与えることによって硬くこわばった筋肉を柔らかくします。 筋肉が柔らかくなった状態でリハビリを行い機能回復を目指します。

<磁気刺激治療の受診>
全国8か所の病院で行っており、研究への参加(受診)には適用条件があります。脳卒中を原因として上肢(腕)の麻痺がある。下肢(足)への効果は確認されていません。
【適用条件】
・最低でも麻痺側の指3本の曲げ伸ばしが少しでもできる
・日常生活が自立している(自分で移動できるなど日常生活では介助がいら ない)
・頭蓋内にクリップなど金属が入っていない、心臓ペースメーカーが入っていない
・認知機能に問題がない(認知症ではない)
・うつ病ではない
・透析をしていない
・少なくとも一年間は痙攣(けいれん)がない(脳波検査で異常がない)
・全身状態が良好である(発熱、栄養障害、重度心疾患、体力低下などがな い)
・16歳以上である
 など



(産経新聞:4月10日)「脳卒中によるまひ 磁気療法+日常生活リハビリで」

『脳卒中による体のまひについて、磁気を利用した治療と日常生活の中でできるリハビリテーションによって動作を取り戻す試みが行われている。適応する患者に基準があるが、リハビリの専門医は「あきらめずに相談してほしい」と話している。(戸谷真美)

<正常側の活動抑制>

千葉県市原市の会社員、大木孝行さん(43)は昨年1月、ゴルフ中に脳出血で倒れ、右半身にまひが残った。利き手だった右手は指先がわずかに動く程度。「右手も右足も全く動かない。仕方ないと思っても、つらかった」。脳出血や脳梗塞などによるまひは発症から半年以上たつと、ほとんど改善しないとされてきた。大木さんは「字は書けないと困る」という職場の要望もあり、利き手を替える努力をした。
大木さんのリハビリを手掛けた東京慈恵医大リハビリテーション医学講座の安保(あぼ)雅博主任教授によると、大脳半球は左右でバランスを取って機能しているため、片方が損傷を受けると、正常な側の活動が活発化し、損傷を受けた側の働きを抑え過ぎてしまう。このため、磁気刺激によって正常側の活動を抑えると、損傷を受けた側が活性化し、病巣周辺で失われた機能を代償しようという働きが起こるという。
同大などはこの理論に基づき、平成20年から磁気刺激による治療法と作業療法を組み合わせたリハビリを実施。1回20〜40分の磁気刺激を1日1〜2度与え、脳のバランスを正常な状態に近づけたうえで、作業療法士らと指の曲げ伸ばし、ものをつまむ、ペンを握るといった訓練をする。その後、自主的なトレーニングを行う。このプログラムを15日間の入院で繰り返すと、全体の7、8割にまひの改善が見られるという。
治療には少なくとも、親指、人さし指、中指の曲げ伸ばしができる▽認知機能が正常▽鬱病でない-などの適応基準がある。健康保険の診療報酬はなく、患者の負担は入院費とリハビリ費だ。


<右手で文字を書く>
大木さんは3月、このプログラムを行っている総合東京病院(東京都中野区)に入院。1週間で右側の脇腹に感じたつっぱり(痙縮(けいしゅく))が和らぎ、体を左右にひねることができるようになった。右手でゆっくり紙をめくったり、文字を書くこともできる。「頑張ればもっと動くようになると思えるようになった。車を運転できるようになりたい」と笑顔を見せた。
安保主任教授は「全く動かせないなら別だが、指先は動くのに、それ以上は動かないのを疑問に思う患者さんは多い。『動かない』という固定概念に隠れて、動かせない人がたくさんいる」と話す。
まひの改善には、
(1)専門医にかかり、自身の状態について正しく判断してもらう
(2)「ものを押さえる」「キーボードが打てる」といった具体的な目標を 持つ
(3)日常生活でもチャレンジを続ける-ことなどが大切。安保主任教授は「時間がたっていても、もう一度チャレンジしてほしい」と話している。』



(2012年6月21日  花熟里)

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