少子化対策は、児童手当の増額が急浮上して、おかしな雲行きとなってきた。少子化対策はメッセージが大切で、「育児休業給付の普遍化で乳幼児期の生活不安は解消される」、「高校までの学校教育費は社会が持つから心配ない」といった具体性がいる。子育ての負担の軽減に児童手当では、メッセージが抽象的で、子供を持って大丈夫かどうか、なかなか認識を変えられない。そして、財源の確保も、難しいものになる。
………
日本が採るべき戦略は、少子化の緩和に強い効果が期待できる施策に集中するとともに、緩和で生まれる経済的な効果を財源に結びつけることである。そうすれば、負担増なしで、少子化対策を実現できる。例えば、育児休業給付をすべての女性に行うために、「基金」を作り、とりあえず、補正予算から2年分の1.4兆円を繰り入れ、その後は、厚生年金が拠出して賄うことにする。
厚生年金にとっては、収入が減ることで、将来の年金の引き下げ要因になるが、少子化が緩和すれば、引き上げ要因になるので、差し引きで変わらず、いわば、負担増なしで、少子化対策ができることになる。むろん、緩和できずに、年金の目減りなり、保険料アップなりの負担増になるリスクもあるため、そういうリスクを取っても攻めに出て良いですかという形で、信を問えば、選挙にも勝てるというものだろう。
あわせて、低所得層の保険料を軽減してでも、勤労者皆保険を実現すべきである。これは、低所得層への少子化対策になるだけでなく、少子化が緩和しなくても、確実に年金の給付水準を上げられるからだ。軽減に1.1兆円使っても、十分にペイする。どのみち、次の厚生年金の財政検証で、給付水準の確保のためにやらなければならなくなるし、基礎年金の加入期間を5年延長するより得策である。
ところが、児童手当を増額するために2.5兆円が必要となると、大き過ぎて厚生年金から拠出するには、保険料率を上げざるを得なくなる。増額は歓迎されるにしても、保険料アップとセットになると、嬉しさも吹き飛ぶのではないか。社会保険料のアップは、対象が勤労所得に限られるために、消費増税以上に重く、マクロ経済の運営上も、消費低迷と成長鈍化につながりやすい。
負担軽減のために、児童手当を増額するなら、空白になっている高校生に月1万円くらいに限るべきで、教科書代等の授業料以外の学校教育費の無償化を組み合わせれば良い。小中学生については、児童手当のアップより、給食費の無償化が適当だろう。こうして、対象が明確だと、財源の確保もしやすい。高校生の扶養控除を転用するとともに、とりあえず、補正で2年分は措置しつつ、子供の減少で減る学校教育の予算を財源に回せるからだ。
(図)
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京大の柴田悠先生が「やさしい経済学」で指摘するように、育児休業などの両立支援と保育が出生率を向上させるという実証分析もあるので、ポイントを外さなければ、十分に勝算はある。問題は、政治がポイントを外し続けてきたことである。戦略を間違わないことが大事である。その骨子は、経済財政上の合理性を踏まえれば、誰が考えても、「少子化がマズいと思うなら、このくらいやろうよ」で示したようなものになる。
岸田政権は、「新しい資本主義」と称し、再分配と勤労者皆保険を掲げて登場したはずだ。着眼は間違っていないのだから、あとは、メッセージのこもった施策を立案し、人口崩壊からの起死回生に、多少の財政上のリスクを負ってでも挑戦しようと、国民に理想を呼びかけることで、信を問えば良いのである。そうした合理性があって前向きな姿勢は、必ずや支持されることになるだろう。
(今日までの日経)
未就園児預かり、9割補助。ネット通販にインフレの壁。「選択の自由」以前に脳が反応。コロナ、今春平常対応に。物価高、食品が拍車 電気やガスなど必需品6%上昇。年金1.9~2.2%増 実質目減り。
※2022年の17歳人口112万人に対して、3歳人口は82%の92万人しかいない。公立の高校生にかかる公費負担教育費は約102万円なので、高校生が82%に減ったら、教育費を125万円にしても、予算は足りる計算になる。
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日本が採るべき戦略は、少子化の緩和に強い効果が期待できる施策に集中するとともに、緩和で生まれる経済的な効果を財源に結びつけることである。そうすれば、負担増なしで、少子化対策を実現できる。例えば、育児休業給付をすべての女性に行うために、「基金」を作り、とりあえず、補正予算から2年分の1.4兆円を繰り入れ、その後は、厚生年金が拠出して賄うことにする。
厚生年金にとっては、収入が減ることで、将来の年金の引き下げ要因になるが、少子化が緩和すれば、引き上げ要因になるので、差し引きで変わらず、いわば、負担増なしで、少子化対策ができることになる。むろん、緩和できずに、年金の目減りなり、保険料アップなりの負担増になるリスクもあるため、そういうリスクを取っても攻めに出て良いですかという形で、信を問えば、選挙にも勝てるというものだろう。
あわせて、低所得層の保険料を軽減してでも、勤労者皆保険を実現すべきである。これは、低所得層への少子化対策になるだけでなく、少子化が緩和しなくても、確実に年金の給付水準を上げられるからだ。軽減に1.1兆円使っても、十分にペイする。どのみち、次の厚生年金の財政検証で、給付水準の確保のためにやらなければならなくなるし、基礎年金の加入期間を5年延長するより得策である。
ところが、児童手当を増額するために2.5兆円が必要となると、大き過ぎて厚生年金から拠出するには、保険料率を上げざるを得なくなる。増額は歓迎されるにしても、保険料アップとセットになると、嬉しさも吹き飛ぶのではないか。社会保険料のアップは、対象が勤労所得に限られるために、消費増税以上に重く、マクロ経済の運営上も、消費低迷と成長鈍化につながりやすい。
負担軽減のために、児童手当を増額するなら、空白になっている高校生に月1万円くらいに限るべきで、教科書代等の授業料以外の学校教育費の無償化を組み合わせれば良い。小中学生については、児童手当のアップより、給食費の無償化が適当だろう。こうして、対象が明確だと、財源の確保もしやすい。高校生の扶養控除を転用するとともに、とりあえず、補正で2年分は措置しつつ、子供の減少で減る学校教育の予算を財源に回せるからだ。
(図)
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京大の柴田悠先生が「やさしい経済学」で指摘するように、育児休業などの両立支援と保育が出生率を向上させるという実証分析もあるので、ポイントを外さなければ、十分に勝算はある。問題は、政治がポイントを外し続けてきたことである。戦略を間違わないことが大事である。その骨子は、経済財政上の合理性を踏まえれば、誰が考えても、「少子化がマズいと思うなら、このくらいやろうよ」で示したようなものになる。
岸田政権は、「新しい資本主義」と称し、再分配と勤労者皆保険を掲げて登場したはずだ。着眼は間違っていないのだから、あとは、メッセージのこもった施策を立案し、人口崩壊からの起死回生に、多少の財政上のリスクを負ってでも挑戦しようと、国民に理想を呼びかけることで、信を問えば良いのである。そうした合理性があって前向きな姿勢は、必ずや支持されることになるだろう。
(今日までの日経)
未就園児預かり、9割補助。ネット通販にインフレの壁。「選択の自由」以前に脳が反応。コロナ、今春平常対応に。物価高、食品が拍車 電気やガスなど必需品6%上昇。年金1.9~2.2%増 実質目減り。
※2022年の17歳人口112万人に対して、3歳人口は82%の92万人しかいない。公立の高校生にかかる公費負担教育費は約102万円なので、高校生が82%に減ったら、教育費を125万円にしても、予算は足りる計算になる。
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