『国家はなぜ衰退するのか』(アセモグル&ロビンソン)は見事な政治経済学の本で、発展には自由な政治と経済の制度がカギであることを古今東西の歴史を引いて明らかにしている。その反例になり得るのが中国であり、本が出てから10年以上が経って、答え合わせができるようになった。果たして、予想どおり成長は減速し、不自由な政治の下での限界が露呈しているのだが、思っていたのとは、やや違った形になっている。
………
政治が不自由だとイノベーションが阻害されて成長は鈍るはずだが、中国は、成長が鈍ってもイノベーションは盛んで、優れた電池のEVは自由な欧州の脅威にすらなっている。中国の停滞は、イノベーションの衰えではなく、輸出の途を失ったためだ。ゼロコロナで内需を潰し、成長の再起動には外需が必要になったが、専制的な中国への反発から、国際市場は開かれなかった。専制的なために衰退はしたが、経路が違う。
イノベーションの発露である設備投資は、需要が見込めないと出て来ない。需要は設備投資次第なので、鶏と卵の関係にあって、国内で用意するのは難しい。これを解くのが輸出であり、それによって所得が増し、内需向けの設備投資も伸び、設備投資の比率が高まり、成長が加速して、国家は発展するわけである。『なぜ衰退』でも、貿易が発展の契機になっている例は、よく出てくる。
これに対して、米国は独特で、内需で成長を加速させている。リーマン後は緊縮で失敗したものの、コロナ後はスタートダッシュに成功した。そして、ライバルの中国には市場を閉じ、輸出による成長の加速をブロックする挙に出た。そこまでは良いが、友好国にまで関税を掛け、物価高で消費を弱めてしまうと、国内の設備投資を鈍らせ、国家を衰退させかねない。需要を国内企業だけに都合良く与えるわけには行かない。
………
日本は、輸出で成長を加速する力は既に失っている。コロナ後の消費回復で、名目での成長の加速には成功したものの、これを実質化しなければならない。それには、円安を是正して実質の内需を拡大しなければならないが、金融政策は消極的だ。東京都区部の1-3月期の消費者物価は前期比+1.0と前期の加速が続いている。対トランプ関税には、内需で企業に稼がせて、関税を払えるようにするほかない。これが衰退から脱する途となる。
(図)
(今日までの日経)
対トランプ関税、日本のカード定まらず 通商戦略後手に。トランプ関税、陰る「米1強」。国内車産業13兆円に打撃 米追加関税25%、来月3日発動。






※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます