経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

「司令塔を作れ」という病

2024年01月14日 | 社会保障
 重大な問題に対処するのに、司令塔を作ることは大切だが、それだけで、司令塔が必要な施策を立案して解決してくれるわけではない。必要な施策を特定し、広く支持を集めることがカギになる。「人口戦略会議」が若者世代への支援推進や人口戦略を扱う司令塔機能を内閣に設置することなどを求めたとの記事を読んで、そう思った。

………
  昨年、岸田政権は、「異次元の少子化対策」の策定に取り組み、3.5兆円分の施策を用意したが、正直、失敗だったと見ている。実施は、これからだから、成否が分かるのは先のことかもしれないが、「これで世の中が変わる」という感覚が表れて来ないままであり、それなしに、若い人の結婚や出産への行動の変容は期待できないからである。

 変わった感がないのは、結婚をしやすくする若者への経済的な支援が乏しいためである。筒井淳也先生が『未婚と少子化』で指摘するように、少子化には総合的かつ持続的な取り組みが必要であり、複数の条件が揃わないと出生は向上しないのに、欠けているものがあるのが現状だ。

 その欠落が若者への支援だが、漠然としていて、必要な施策が特定されておらず、広い支持どころではない。出生率が1.75だった1980年には、厚生年金の保険料は今の半分で、消費税もなく、大学の授業料も半分だった。低所得の若者について、保険料を軽減し、消費税分を還付し、奨学金の半分を免除するとなったら、大仰な感があるだろう。

 まさに、そんな感覚があることが少子化の理由である。若者の経済的な苦境は、30年間のデフレ期に非正規化を通じてジリジリと進んできたもので、欧米のように失業率が高くないゆえに可視化されていない。よく言われる「茹で蛙」状態である。本当の「茹で蛙」は、「茹で蛙」になっていると騒ぐことすらしない。

(図)


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 長年、少子化対策は財源がネックだとされてきた。ところが、デフレを脱却し、税収増を還元できるようになっても、若者への支援を外し続けている。結局、指令塔は、何を思うのか。若者への支援というと賃上げの促進くらいだったが、実現しつつある。これを目の当たりにしても、デフレ期に結婚を阻害してきた制度を修正する発想には至らないように思う。


(今日までの日経)
 値上げ、小売り潤す 営業益はコロナ後最高。中国、内需不足で「低体温」。円安招く「戻らぬマネー」。新NISA、円安要因に。中国、響かぬ「出産奨励」。社説・人口危機に立ち向かう戦略策定を急げ。サービス価格の硬直性 顕著・上田晃三。「2%」定着へ所得補填強化を・渡辺努。未婚者への支援の必要性・増田幹人。


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