経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

流れゆく少子化反転のラストチャンス

2023年11月26日 | 社会保障
 岸田首相は、「若年人口が急減する2030年代に入るまでが、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンス」とし、3.5兆円の新たな少子化対策を取りまとめたが、足下では、激しい少子化が止まらない。目玉の児童手当は、来年12月に給付だから、効果は先なのかもしれないが、世評では、既に結婚して子供を持っている人の支援だけでなく、これから結婚しようとする若者の支援が必要と言われ、反転の機運はないに等しい。

………
 9月の人口動態速報の出生は、前年同月比-11.9%と大きく落ち、当年を含む過去1年間は前年同月比-5.2%と5%を割り込んだ。このレベルだと、合計特殊出生率は1.21人くらいになり、昨年-0.05も落ちたのに、今年も-0.05も下がる。25~39歳の女性の人口の減少速度は、この数年は緩んでいるのに、激しい少子化が止まらない。コロナ直後の低下を取り戻すどころか、以前より酷くなってしまっている。

 婚姻は、9月は前年同月比+8.9%だったが、当年を含む過去1年間で見ると前年同月比-2.2%となっている。婚姻は、2020年に-12.7%、2021年に-4.3%と落ち、昨年は+1.1%となったが、今年は再びマイナスになりそうだ。コロナ禍からの反動増はわずかで終わり、低下が止まらない状況だ。雇用環境の改善は著しいものの、物価高で生活は楽になっておらず、結婚には結びつかないのだろう。

 少子化対策では、既婚者への支援だけでなく、未婚の若年層の経済状況の改善が必要だと指摘されているが、今回の少子化対策では欠けていて、賃上げを進めるといった、全般的な施策で代替され、やってないのと同じである。非正規への育児休業給付はメドも立っておらず、結婚出産したら直ちに生活に困る状況は相変わらずだ。これでは、ポストコロナで取り戻した仕事を手放せない。

 こんなに少子化が酷いと、年少人口は減少していくので、教育を始めとする財政需要は減って行き、新たな少子化対策に必要な3.5兆円くらいの財源が出て来てしまう。正直、少子化対策の財源で社会保険料を上げるかどうかの議論は虚しい。社会保険料は、低所得の若者にはきついので、なおさらである。反面、税収増の「還元」はすることになっていて、財源がないわけでもない。 

(図)


………
 経済は悪くなく、大きな失敗もないのに、岸田政権の支持率の低下は、危機的なところまできている。何が足りないのかと言えば、政治は何かと戦っていないといけないものなのかもしれない。それは、政治勢力が相手でなくても、社会問題であっても構わない。少子化対策は、ひととおり打ち出したから良いというのではなく、国民を鼓舞しつつ、勝つまで戦うという姿勢が必要ではないか。


(今日までの日経)
 米年末商戦、インフレが影。今年の出生数、8年連続最少 72.9万人の試算、5.5%減。物価、よく買う品8%上昇。


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