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ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

人形浄瑠璃・文楽 「曽根崎心中」 @岐阜市・岐阜市民会館

2021年10月22日 | 歌舞伎・文楽

人形浄瑠璃・文楽 「曽根崎心中」 (10月16日 岐阜市民会館大ホール)

コロナ緊急事態宣言が明けて古典芸能の公演も中止されることなく無事開催されている。先週の御園座の歌舞伎に続いて、今回は文楽を観るために岐阜市民会館へ。買ってあったチケットは夜の部の「曽根崎心中」。人形浄瑠璃文楽は、歌舞伎の題材にされることも多い古典芸能。人形浄瑠璃が始まったのは江戸時代、徳川綱吉の時代に大阪において、というから自分が思っていた程古い時代のものではない。そもそも”文楽”は人形浄瑠璃を行う団体のひとつで(文楽座)、大正時代以降は唯一となったため、文楽と人形浄瑠璃は同義に語られることが多いとのこと。

老母を先に会場に送り届け、市役所の駐車場に車を停めて会場入り。大ホールだが1階席のみで、ついこの間まで緊急事態宣言が出ていたとあってまだ1つおきの間引き客席だが、思ったよりも多くの観客が集まっていた。まずは簡単な文楽の歴史と演題の内容の説明があった(→古典芸能のほとんどは話の筋を事前にちゃんと理解した上で楽しむことがほとんど)。舞台袖には太夫(たゆう・浄瑠璃を語る人)の台詞が逐一表示される縦型の字幕機械があり(名称は”Gマーク”と言うのだとか・笑)、これが古い言葉の理解をとても楽にしてくれて良かった。便利になってるんだなァ。

一体の人形に3人の人形遣いが付く。舞台脇の床(とこ)には太夫と太棹の三味線方(奏者)。人形遣いのひとりは完全に顔出しで操作している。それが物語とともに人形の方に感情移入していくとだんだん人形遣いの存在が視野から消えていくのが面白い。それほど人形の動きは滑らかでリアルで艶めかしく、これを3人で息を合わせて操作するのは凄いものだ。人形の表情も瞼の開け閉じがあるくらいで無表情なはずなのに、だんだんこちらの方が勝手に表情を見るようになるのが興味深い。馴染みの話(心中物)なので理解もし易かったし楽しめた。太夫と三味線方は最初に紹介もあって拍手も受けるが、人形遣いは名も告げられず、その仕事に徹するのみで幕を引かれる。なんと報われない役だろう…(そういう所がかっこいいんだけれど)。機会があったら他の物語も観てみたい。

【夜の部】

「解説」

 豊竹希太夫

「曽根崎心中」

<生玉社前の段>

 竹本三輪太夫、鶴澤清馗

<天満屋の段>

 竹本錣太夫、竹澤宗助

<天神森の段>

 お初・竹本藤太夫、鶴澤清介
 徳兵衛・豊竹希太夫、鶴澤清公
 豊竹亘太夫、鶴澤清方

[人形役割]
 手代徳兵衛・豊松清十郎
 丁稚長蔵・桐竹勘次郎
 天満屋お初・桐竹勘十郎
 油屋九平次・吉田玉輝
 田舎客・吉田簑之
 遊女・吉田簑紫郎
 遊女・吉田玉誉
 天満屋亭主・桐竹紋吉
 女中お玉・吉田簑一郎

[人形部]
 吉田玉彦、桐竹勘介、吉田和馬、吉田玉峻
 桐竹勘昇、吉田清之助、吉田和登

コメント (4)
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坂東玉三郎特別公演「口上」「壇浦兜軍記・阿古屋」「石橋」 @名古屋市・御園座

2021年10月12日 | 歌舞伎・文楽

坂東玉三郎特別公演「口上」「壇浦兜軍記・阿古屋」「石橋」 (10月6日・御園座)

とうとう玉三郎を観る機会が訪れた。今まで結構な数の歌舞伎観劇をしているが、どうしても坂東玉三郎の(舞踊以外の)舞台を観る機会が一度も訪れず、ひょっとしてこのまま…なんて危惧をしていた。そこに追い打ちをかけるようにコロナ禍が。歌舞伎公演の数自体が減ってしまい、地方に居る身としては待っているしか術がない。なので御園座で玉三郎の公演、しかも女形で一番の難役「阿古屋(あこや)」を演ると知って驚いた。老母は一度観たことがあるらしいが、その時はおかみさん役だったとかで華やかな衣装の玉三郎は観たことが無いとのこと。母の分のチケットも購入して公演日を待った。

母を連れて御園座入り。会場に入ってびっくりしたが、ひとつ置きの座席ではなく普通に全席に客を入れていた。まだ緊急事態宣言が解除されて6日目なので当初からそうする予定だったのだろうが、ご高齢の方の中には構わずおしゃべりする人も居るのでこちらもヒヤヒヤ。

まずは「口上」。玉三郎と、成駒屋の3兄弟、橋之助、福之助、歌之助が順に挨拶。玉三郎がここ御園座で1ヵ月の長期公演をするのは23年ぶりなのだとか。なるほど観られないはずだ。通常は挨拶のみで終わるのだが今回は趣向が異なり、挨拶の後、玉三郎が舞台に残って過去に使った衣装を3点お披露目するという。その衣装を使った経緯などの説明をしながら豪華で鮮やかな衣装が披露された。玉三郎が衣装を身につける度に客席からは「わぁ…。」というため息ともつかない声が沸き起こる。これはいい企画だ。

幕間を挟んでとうとう「阿古屋」の上演。”傾城(けいせい)”という遊女の最高位である阿古屋(あこや)が、追われている夫の居場所を詮議され3つの楽器の演奏を命令されるのだが、それを実際に役者が舞台上で演奏するという、女形ではもっとも難役とされる演目だ。舞台上で話が展開していく訳ではなく、その場面での心情を表現する演目なので、当然注目は玉三郎の演奏に集まる。そんな「さあ弾け」という状態で次々と3つの楽器(琴、三味線、胡弓)を生演奏するなんて、どれだけ恐ろしいことだろう。和楽器なのでどの楽器も弾く直前に舞台上で調子を合わせなければいけないし、しかも傾城だから打掛(うちかけ)や俎板帯(まないたおび)という(演奏に邪魔な)衣装を着たままというハンディキャップ付きだ。まさに至芸。眼福。その他にも自分は舞台で福之助が演じた岩永左衛門が、おそらく文楽からだろう人形の体(てい)で糸に操られたようにカクカクと面白可笑しく動く演出を残しているのもとても興味深かった。なぜ1人だけ? 

「石橋(しゃっきょう)」は歌舞伎ではお馴染みのいわゆる”獅子物”と呼ばれる舞踊。自分も「春興鏡獅子」「英執着獅子」「連獅子」などという演目で観たことがある。今回の見どころはは何といっても三兄弟の揃い踏み。息を合わせて若々しく毛振りする。長い時間、頭をぐるんぐるんと回し続けるので若ければ若いほどいいかというとそうでないのが歌舞伎の芸の難しさ。終盤になると歌之助は兄2人からだんだんと遅れてしまっている。でもまだ舞台は始まったばかり。これも一か月演じ続けるとどんどん上手くなっていくのだろう。都合で妻は日にちを変えて後から1人で観に行く予定だが、その頃にはどうなっているのかな(→後日談・実際妻が観た時には上手くやれていたらしい)。

 


 

一、口上(こうじょう)

坂東 玉三郎

 

二、壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)

阿古屋

遊君阿古屋          坂東 玉三郎
秩父庄司重忠        中村 橋之助
岩永左衛門          中村 福之助
榛沢六郎            中村 歌之助

 

三、石橋(しゃっきょう)

獅子の精          中村 橋之助
獅子の精          中村 福之助
獅子の精          中村 歌之助

 

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歌舞伎とおしゃべりの会(10月の会) 高麗屋の芸を磨く @岐阜県可児市・可児市文化創造センター

2021年10月08日 | 歌舞伎・文楽

歌舞伎とおしゃべりの会・10月の会「高麗屋の芸を磨く」(10月2日・可児市文化創造センター)

コロナ禍のせいで巡業公演も定期公演もほぼ中止で地方の歌舞伎ファンには辛い日々。この地方でも御園座を除けばほぼ観ることが出来ない日々が続く。岐阜県可児市の「可児市文化創造センター」で年4回程行われているこの「歌舞伎とおしゃべりの会」のような講座でさえも中止になった回があるようだ。今回告知された内容を見てビックリ。超大物、松本幸四郎の登場だ。さすがに席数の多い主劇場を使っての講座開催。ネットで予約を入れて駆けつけた。

消毒、検温して入場。会場は席をひとつづつ空けて設けてある。まずは聞き手の元・NHKアナウンサー、葛西聖司氏が登壇。続いて松本幸四郎が紹介され登壇した。スーツでびしっとキマった幸四郎。イタリアの某高級A社のオーダー・メイドだとのこと(笑)。

この地での思い出話などを交えながら、全体としては”コロナ禍での歌舞伎公演”というのを大きなテーマとして、映し出された画像を交えながら進行していく。地方や巡業はもちろん、歌舞伎座も昨年の3月から7月まで公演が完全に中止となったが、8月からは歌舞伎座のみ様々な制約を設けつつ公演を実施している。幸四郎は再開してからずっと出演し続けているのだとか。葛西氏はそれを歌舞伎の名跡「高麗屋」の「そういう星の元に…」と説明していた。確かに役者は基本的に出演を立候補するものではないから、誰もがそうやって出続けられる訳ではないものなァ。松竹が幸四郎を当代のリーダーとしてみなしているということだろう。都度演目や出演者の背景を詳しく説明してくれる葛西氏の知識の量にはいつも驚かされる。プロだから当たり前だけれど、自分なんて彼よりずっと若いのに妻に見てきた演目や役者を説明するにも固有名詞や単語が全然出てこなく、「あのー、アレアレ…」なんてことばかりだものなァ…。

歌舞伎の時以外の幸四郎はご存じの通り、ちょっと抜けたような(つまり”天然”・笑)ところがあり、話を聞いていてもその人柄が伺えて何だか可笑しい。こういうところが憎めなくてファンが多い所以でもある。しかしそこは流石、歌舞伎を語る時は熱く、そして自分がリーダーだという自覚がしっかりと伺えた。次に幸四郎を観ることが出来るのはいつになるかな。東京在住の人が羨ましい。

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市川海老蔵特別公演 「舞妓の花宴」「弁天娘女男白浪」 @名古屋市・御園座

2021年04月13日 | 歌舞伎・文楽

市川海老蔵特別公演 「舞妓の花宴」「弁天娘女男白浪」(4月10日・御園座)

昨年10月以来の御園座での歌舞伎は「市川海老蔵特別公演」。本来であれば”十三代目市川團十郎白猿”襲名披露の興行は昨年に行われ、この4月の御園座が名古屋での襲名披露公演になるはずだった。ご存じの通り、コロナ禍で襲名披露自体が延期となり、結局1年経っても終息は見えず、先のスケジュールは発表されていない。歌舞伎界にとって”團十郎”の名跡は最も大きなもの。襲名~襲名披露~東京オリンピック開催(何らかの演出)と様々な企画があっただろうに、全く大変な事になってしまったものだ。

公演初日の席を取ったのは初めて。いつもなら酒を持ち込んで弁当と一緒にいただくのを楽しみにしているが、この日は大人しく会場に来る前に購入した和菓子とお茶のみ。現在、御園座は収容人数を70%に抑えているらしい。ところどころが空いているのはその為だろう。自分の隣も片方は空いていたが、もう片方は普通に他の客が座っていた。

一幕目は中村児太郎による舞踊「舞妓の花宴」。春らしく桜が満開の舞台が綺麗。現実の桜は先週で散ってしまったが、もう一度お花見だ。烏帽子と太刀を持った男装の白拍子(児太郎)が、美しく着飾った娘姿に変化していく。静と動の変化が見もの。そういえば児太郎も本来ならもう”福助”を名乗っているはずが、女形の名跡”歌右衛門”を襲名するはずだった父九代目福助の急病により、襲名披露が延期になったまま。児太郎を観るのは5年ぶりくらいだと思うが、少し顎の線がふっくらとしたかな(←女形に合わせて当り障りの無い言い方・笑)。

幕間を挟んで海老蔵の「弁天娘女男白浪」。女装をした盗賊の弁天小僧菊之助(海老蔵)が、南郷力丸(右團次)と共に濱松屋の店先で悪事を働く。美しい女性を演じていたのに、一転、正体がばれてからの開き直りは「知らざぁ言って聞かせやしょう。」の台詞で有名。この演目は以前に七之助で観たことがあるのでどうしても比べてしまうが、役柄とはいえ、さすがに女装の部分では海老蔵に分が悪いか(笑)。あの美形なのでもっと似合うと思っていたんだけど。ま、女装だからこれでいいのか。彼の口跡はあまり得意ではないが、やっぱりこうして見ると華のあるイイ男だ。通しで観ると分かるのかもしれないが、相変わらず男女蔵演じる日本駄右衛門の役柄がどうにも頭に入ってこない…。最後に5人の悪党が1人1人名乗りをあげる場面は、戦隊ものの元祖「秘密戦隊ゴレンジャー」のモデルになったのだとか。

幕間を含めても正味2時間の舞台はやや物足りなさが残るが、特別公演だからこんなものだろうか。大向うの掛け声も禁止なので舞台としては寂しいが、こうやって乗り越えていくしかないのだろう。海老蔵、児太郎両人とも早く無事に襲名披露が行われるといいねェ。

 


 

一、舞妓の花宴(しらびょうしのはなのえん)

白拍子和歌妙      中村児太郎

二、弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)

    浜松屋見世先の場
    稲瀬川勢揃いの場 

弁天小僧菊之助     市川海老蔵
日本駄右衛門       市川男女蔵
赤星十三郎         中村児太郎
浜松屋宗之助  大谷廣松
忠信利平           市川九團次
浜松屋幸兵衛       片岡市蔵
南郷力丸           市川右團次

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錦秋御園座歌舞伎 「鐘ヶ岬」「歌舞伎のみかた」「連獅子」@名古屋・御園座

2020年10月13日 | 歌舞伎・文楽

錦秋御園座歌舞伎 「鐘ヶ岬」「歌舞伎のみかた」「連獅子」(10月10日・御園座)

約1年振りになる歌舞伎鑑賞。やっと興行が再開されて御園座では最初の歌舞伎になるのかな。夜の部だったが、今回は初めて高齢の母と一緒に行くのですぐ近くのホテルの部屋も取っておいた。母も最近あまり距離を歩けなくなってきたので、疲れたらすぐに戻って休める部屋があるとこちらも安心。当たり前だが自分は市内で宿泊するなんて初めてかな。歌舞伎が終わったら存分に呑みに行けるからいいや(笑)。チェックインして御園座まで歩く。この日は台風直撃の予報で心配したが雨も止んだし風も全くなく、無事に観られることに。演目は短めで幕間も1回しかないけれど、お約束なので隣接する「御園小町」で軽食と酒の小瓶も入手。2人で御園座へ。

御園座は2階席もゆったりとしているのでそれでも良かったが、高齢の母と出掛ける機会もそうないだろうと1階席(写真下)を入手。発売から随分経ってから入手したにも関わらず席は随分と残っていた様子だった。コロナ禍で客席は半分に間引いてあるし、そもそも業績の良くないらしい御園座だからなかなか大変だろうナ…。入口では更に住所・氏名・電話番号を記入させられ、検温して入場。

一幕目の「鐘ヶ岬」は菊之助の1人舞踊。音羽屋といえば有名な演目「京鹿子娘道成寺」があるが、この娘道成寺を地唄(上方を中心とした三味線音楽)にしたのが「鐘ヶ岬」なのだそうだ。極力出演者が少ない形での上演を意識しているのかもしれない。すっぽんから登場した清姫は、艶やかな中にも随所で幼さを感じさせる舞をみせる。二幕目は尾上右近による歌舞伎解説。歌舞伎の舞台や音楽、それにまつわる事柄を優しく丁寧に説明していく。今までにも同趣向の催しを見たことがあるが、こういうのは何度見ても楽しいもの。こういうのをもっと若いうちに見ていたら、きっともっと歌舞伎を見る機会が増えていたはずだ。短い幕間を挟んでの三幕目は「連獅子」。能舞台を模した松羽目の舞台で演じられる。菊之助が親獅子の精、萬太郎が仔獅子の精。途中滑稽な修行僧のやりとりを挟んで、2人がこれぞ歌舞伎といった豪快な”毛振り”を見せる。母は仔獅子として端正な舞を見せていた萬太郎がいたく気に入ったようだ(笑)。

こうして観劇を終えると舞踏中心という事もあり、菊之助のあの口跡を味わう機会が無かったし、公演時間が幕間を挟んでも2時間と個人的にはやや物足りなさが残る。それでもこうして公演の実績を積み重ねていくことはこれからの為にも重要だろうし、裏方を含めた継承すべき文化を途切れさせてはいけないので、ここは演じる側も観る側も模索しながらしばし我慢というところだろうナ。それでもやっと歌舞伎を観ることが出来て嬉しかったし、母も久しぶりに劇場に足を運んでそれなりに楽しんだようだ。という訳で、芝居がはねた後はハレの気分のまま老母を明治創業の酒場へ連れ出すことに。

 


 

一、鐘ヶ岬(かねがみさき)

  清姫     尾上 菊之助

 

二、解説 歌舞伎のみかた

  尾上 右近

 

三、河竹黙阿弥作  連獅子(れんじし)

  狂言師右近後に親獅子の精     尾上 菊之助
  狂言師左近後に仔獅子の精     中村 萬太郎

  法華の僧蓮念     尾上 菊次
  浄土の僧遍念     尾上 右近

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第五十回記念 吉例顔見世 「碁太平記白石噺」「身替座禅」「瞼の母」 @名古屋市・御園座

2019年10月12日 | 歌舞伎・文楽

第五十回記念 吉例顔見世 「碁太平記白石噺」「身替座禅」「瞼の母」 (10月10日・御園座)

今年で50回を数えるという御園座の吉例顔見世公演。「顔見世」とは秋(本来は11月)に行われる歌舞伎興行で、「この1年この役者でやりますよ」という意味での”顔見世”なのだとか(現在は形骸化していると思われる)。今回は夜公演を選んでみた。仁左衛門の「身替座禅」と、現代語で演じられる新しい演目(昭和6年初演)が観てみたかったから。空席も目立つが、ひと月の長丁場なので平日の週中としたら、まあほどほどの入りといったところか。

まずは「碁太平記白石噺」。吉原の花魁(雀右衛門)を訪ねてくる生き別れた妹(孝太郎)と、父の敵を決意するお話。孝太郎はなかなかの田舎娘っぷり(不細工なところも)。要所でそっと助太刀をする惣六(梅玉)がかっこ良過ぎる役回り。近くに大向うの方が何名かいらっしゃったが、かける声の数も多くて締まりが無く、うーん…。これって掛け声のタイミングはほとんど決まっていると聞いたことがあるが、こんなに多かったっけ。ここぞっていう所で気持ち良く聞きたいものだが…。

今回は16時半始まりだったので、幕間にいつものように弁当や酒を持ち込むのは止めて、新栄の「川村屋」の上生菓子をいくつか買って持って来た。ペットボトルのお茶というのが不粋だが、抹茶を点てて水筒に入れる訳にもいかないし…(←水出しの方法もあるらしい)。

次は松羽目物の「身替座禅」。理屈抜きで笑える演目だが、奥方(鴈治郎)に嘘をついて色に走る殿様役を仁左衛門が演じる。これが楽しみだった。仁左衛門がかっこ良過ぎて鴈治郎とのギャップが最高。前回この演目を観た時は左團次だったが、うん、この鴈治郎演じる嫁でも絶対逃げたくなる(笑)。ハマり過ぎ。待女役の若い子のひとりがどうにも苦しそうな口跡。たぶん声変わりの年齢なのだろう。どの役者もこの時期は体も声も中途半端で役も与えられず辛いと聞く…。

自分の少し向こうの席に演目中ずっと喋り続ける年配の女性2人が居て、気が散ってしょうがない(でも注意出来るほど近くない)。係員に注意されてやっと3演目目で静かになった。他にも台詞の時に喋る人が居て…(これは隣だったので注意した)。みんな家でテレビを観ているようなつもりで観ているんだろうナ(怒)。静かなシーンでのタイミングででかいゲップをしたオヤジも居たし、何だか客の質が悪いのが残念。

最後は長谷川伸作の戯曲「瞼の母」。番場の忠太郎は獅童が演じる。彼の持つ雰囲気が、母を慕うやくざ者の役にぴったりとハマっている。キザな台詞も獅童にはよく似合っている。ただ、ほぼ現代語なので言葉がすっと頭に入ってくるのはいいが、それが逆にクサく聞こえてしまってせっかくの歌舞伎が歌謡ショーでも観ているような気分になってしまうのは否めない。型があるから仕方がないとはいえ、何だか演目全体のリズムも間延びしているように感じるし、実年齢よりも若く見えるという設定のはずのおはま(母)役の秀太郎は実際に高年齢だし、台詞回しも自分にはしっくりこない。あれだけ啖呵を切った母親が急に殊勝になって弱々しく息子を呼ぶのも”豹変”と感じられ、その感情の機微っていうのが今ひとつ伝わってこなくて…。この演目はちょっと苦手かも。


 

一、碁太平記白石噺(ごたいへいきしらいしばなし)

新吉原揚屋の場 

  • 傾城宮城野      雀右衛門
  • 宮城野妹信夫    孝太郎
  • 大黒屋惣六      梅玉

 

二、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん)

  • 山蔭右京       仁左衛門
  • 太郎冠者       錦之助
  • 侍女千枝       吉太朗
  • 同 小枝       千太郎
  • 奥方玉の井     鴈治郎

 

三、瞼の母(まぶたのはは)

  • 番場の忠太郎      獅童
  • 素盲の金五郎      亀鶴
  • 娘お登世          壱太郎
  • 鳥羽田要助        吉之丞
  • 金町の半次郎      國矢
  • 板前善三郎        松之助
  • 半次郎母おむら    吉弥
  • 水熊のおはま      秀太郎
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松竹大歌舞伎「封印切」「蜘蛛絲梓弦」 @愛知県丹羽郡扶桑町・扶桑文化会館

2019年09月11日 | 歌舞伎・文楽

松竹大歌舞伎「封印切」「蜘蛛絲梓弦」(9月7日・扶桑文化会館)

 

歌舞伎の巡業公演。今回はお気に入りの扶桑文化会館にて。このハコはこじんまりとしていて2階席でも充分役者の息遣いが伝わる距離感だし、ちゃんと花道や(ちょっと変わった仕様だが)桟敷席もある歌舞伎を観るにはお勧めの会場。昼はしっかり入っていたらしいが夜は空席も目立っていた(※下の写真は入場してすぐの様子)。

最初の演目は「封印切」。遊女の身請けの金にまつわる上方の和事。つまり関西歌舞伎の恋愛もの(←大雑把に言ってます)。台詞はもちろん関西言葉で、忠兵衛(鴈治郎)のいじめられっぷりが見もの。”封印を切る”というのは小判の封印を切るという事。これは公金横領とみなされる重罪だということを頭に入れておかないと事後の忠兵衛の絶望がしっくりと入ってこない。いじめる役の恋敵・八右衛門は松也が演じる。これがまたいい男だけに憎たらしい(笑)。松也は近年知名度もグングン上がって重要な役をやることが多くなってきた。吉弥の演じるおえんがいい感じだったなァ。

忠兵衛と梅川が2人して命を捨てる覚悟を決めた場面で、後ろの方から「ピンピロピロ~♪」と携帯電話を鳴らす馬鹿者が…。振り返ると60前半位のオッサンだったがびっくりすることに、電話に出たね(怒)。「モシモシ…」じゃないだろっ!(驚くことに、この人あとでもう一度鳴らして、呼出音を鳴らしたまま手に持って中座します…)。幕間に隣席の女性が「腹立ちましたねー。」と話しかけてきて共感してしまった。無神経な人って居るものだ。

2幕目は「蜘蛛絲梓弦」。扇雀が悪の4役をこなす外連味たっぷりの、言わば”ヒーロー戦隊もの”(笑)。いわゆる早変わりという程ではないが、役と衣装を変えて次々と貞光、金時、源光の前に現れる。60代前半の扇雀が最初におかっぱ頭の童子役で出てきたときはさすがに引いたが(笑)、役を変えて1時間延々と踊ることの出来る歌舞伎役者の資質って本当に凄いものだ。振付とかどうやって覚えるんだろう(しかも1ヵ月後にはまた他の役)。パァッと拡がる必殺技・蜘蛛の糸も各キャラ毎に大盤振る舞い。あれ1回でいいからやってみたいな。最後は全員が舞台に出て見得を切りながら、客席に向かって再度パァッと蜘蛛の糸。無条件に楽しい演目だった。

 


 

恋飛脚大和往来

一、玩辞楼十二曲の内 封印切(ふういんきり)

新町井筒屋の場 

  • 亀屋忠兵衛      中村 鴈治郎
  • 傾城梅川        市川 高麗蔵
  • 丹波屋八右衛門  尾上 松也
  • 肝入由兵衛      中村 寿治郎
  • 井筒屋おえん  上村 吉弥
  • 槌屋治右衛門  河原崎 権十郎

 

二、蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)

  • 女童扇弥    中村 扇雀
  • 座頭駒市
  • 傾城薄雲太夫
  • 蜘蛛の精
  • 碓井貞光    中村 虎之介
  • 坂田金時    上村 吉太朗
  • 源頼光     尾上 松也
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松竹大歌舞伎「襲名披露・口上」「双蝶々曲輪日記・引窓」「色彩間苅豆・かさね」 @岐阜県岐阜市・岐阜市民会館

2019年07月27日 | 歌舞伎・文楽

松竹大歌舞伎「襲名披露・口上」「双蝶々曲輪日記・引窓」「色彩間苅豆・かさね」 (7月25日・岐阜市民会館)

梅雨が明けようかという強い日差しで酷暑の岐阜市内。市バスを待ってバス停に立っているだけで額から顔から汗がダラダラと落ちてくる。もちろん会場は冷房が入っているのだが、自分の座った2階席は冷房の効きが悪く、汗もなかなか引いていかない。いつもの岐阜巡業公演は客がしっかり埋まることは稀なのだが、なぜか今回の客入りは上々で、2階席でも空席は僅か(→夜公演が無いからのようだ)。

まだ続いている二代目松本白鸚と十代目松本幸四郎の襲名披露巡業。歌舞伎座での初披露から早や1年半。歌舞伎の名跡を継ぐという事は、かくも大事なことなのだ。長いと何年もかけて全国津々浦々まで周るのだという。例の如く口上では白鸚が独特の口跡で挨拶。何かこの節回しに拍車がかかっているような(前からあんなだったっけか・笑)。

そして「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)」の「引窓」の段。二段目の「角力場」は見たことがあったけれど、この八段目を見るのは初めて。幸四郎演じる与兵衛の役は元々こういう少し道化が入ったように演じるものなのかは知らないが、染五郎の頃からこういう役は幸四郎にぴったり。幸雀演じる母お幸の声が完全に男のイメージで、なかなか台詞が頭に入ってこない(笑)。親と養子に出した実子、義理の息子とのそれぞれの関係は、現在と共通するところや、ちょっとニュアンスが違うところがあって興味深い。

「かさね」は怪奇物と呼んでいいのか、夏に背筋が冷やっとするような演目。舞台装置に高さがあって、舞踊にしては不自然で踊り辛そうな舞台だなと思っていたら、ちゃんと後からの効果が考えてあるのだった。歌舞伎のこういう演出は時代を超えていて面白い。猿之助の鬼気迫る表情が見もの。どうしてもパワフルな猿之助の”あの顔”が目に浮かぶので、美人から醜い顔へという落差はあまりないが(笑)、気持ち悪さは十二分。一幕目と違った幸四郎のクールな色男役も良かった。

この演目は清元連中(語り・歌が4人、三味線が3人の計7人)の演奏が付く。後ろ3人の三味線に注目していたのだが、演目の間中ずっと演奏が続くのに、そういえば楽譜にあたるものが全く無い。真ん中の方の合図に合わせているが、5分、10分の音楽じゃないのに一体どうやって調子を合わせながら長時間の演奏を続けられるんだろう? 凄いなァ。

 


 

一、二代目 松本白鸚 十代目 松本幸四郎 襲名披露 口上(こうじょう)

  • 幸四郎改め 松本 白鸚
  • 染五郎改め 松本 幸四郎
  • 幹部俳優出演

 

二、双蝶々曲輪日記 引窓(ひきまど)

  • 南与兵衛後に南方十次兵衛     染五郎改め 松本 幸四郎
  • 女房お早    市川 高麗蔵
  • 三原伝造    大谷 廣太郎
  • 母お幸    松本 幸雀
  • 平岡丹平    松本 錦吾
  • 濡髪長五郎    幸四郎改め 松本 白鸚

 

三、色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ)

かさね

  • かさね    市川 猿之助
  • 与右衛門 染五郎改め    松本 幸四郎
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松竹大歌舞伎「襲名披露・口上」「菅原伝授手習鑑・加茂堤」「同・車引」 「奴道成寺」@岐阜県多治見市・バロー文化ホール

2019年04月14日 | 歌舞伎・文楽

松竹大歌舞伎「襲名披露・口上」「菅原伝授手習鑑・加茂堤」「同・車引」「奴道成寺」 (4月10日・バロー文化ホール)

御園座に続き、今度は多治見市で開催された歌舞伎の巡業公演へ。1年以上も前に始まった白鸚、幸四郎の襲名披露はまだ全国を回っている。歌舞伎の名跡を継ぐというのがどれだけ大きなイベントなのかが伺い知れて興味深い。雨模様のこの日は周辺の駐車場の混雑を予測して少し遠くの駐車場に車を停め、昼食を摂ってから歩いて会場へ。会場入りすると2階席の真ん中と両脇の悪くない席がどういうわけかごっそりと空いている。こちとら頑張ってすぐにチケット取っているんだけどなァ…。

まずは襲名披露の口上の後に幕間が入り、歌舞伎の定番演目「菅原伝授手習鑑」のうち<加茂堤>の段。梅玉と高麗蔵の夫婦役が芝居を回していく。梅玉演じる桜丸は”和事”という優しい人柄の役。それが逢引の手助けをするのだが、夫婦間の台詞の中にもセックスを想像させる内容があり、思いのほか艶めかしい。<車引>の段では「待ってました!」と幸四郎が登場(この日は大向うの掛け声の威勢がよかった)。今の彼を観ていると全身から力がみなぎって、動きにもメリハリがあり、まさに脂の乗った役者というのが雰囲気だけからでも分かる。よく見ると白塗りをしただけの時の顔はとぼけた顔なのだが(笑)、隈が描かれているとやはり華がある。口跡にも迫力がありカッコイイ。比較するのもあれだが、團十郎襲名を控えている海老蔵は、自分の少ない観劇経験からすると独特の節回しの口跡に何となく迫力が足りない気がするのだが…(←偉そうな口を…)。

閑話休題。<奴道成寺>では幸四郎がお面の早変わりの技(瞬時にお面を何度も変え3役を踊り分ける”三ツ面<みつおもて>”)を見せる。黒子という特殊な役回りのサポートがあるとはいえ、こういう奇抜で楽しい演出を考えた昔の人は偉いものだ。様々なトリックが溢れている現代から見ても、あれ?どうやっているんだろうとダマされる。客席からも思わず歓声が。歌舞伎役者の超人ぶりは色々な演目で感じられるが、台詞のある主演目の他に、こういう長い舞踊の振り付けをこなし(どうやって覚えるのか…)、また翌月には全く違う演目を数種こなすんだから恐れ入る。そのほかにも取材やら何やらがあるんだから遊んでいる暇なんて全く無いだろうと思うのだが、しっかり遊んでいるらしいのも凄い(←想像です・笑)。花形役者ともなると濃密な毎日なんだろうなァ。

 

一、襲名披露 口上(こうじょう)

  • 幸四郎改め 松本白鸚
  • 染五郎改め 松本幸四郎
  • 幹部俳優出演  

二、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)

<加茂堤>

  • 桜丸              中村梅玉
  • 斎世親王        澤村宗之助
  • 桜丸 女房八重 市川高麗蔵

<車引>

  • 松王丸         幸四郎改め 松本白鸚
  • 梅王丸         染五郎改め 松本幸四郎
  • 杉王丸         大谷廣太郎
  • 藤原時平公   松本錦吾
  • 桜丸           中村梅玉

三、奴道成寺(やっこどうじょうじ)

  • 白拍子花子実は狂言師左近  染五郎改め 松本幸四郎
  • 所化文珠坊                     市川高麗蔵
  • 所化不動坊                     澤村宗之助
  • 所化西念坊                     大谷廣太郎

 

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陽春花形歌舞伎 「通し狂言・南総里見八犬伝」 @名古屋・御園座

2019年04月07日 | 歌舞伎・文楽

陽春花形歌舞伎 「通し狂言・南総里見八犬伝」(4月5日・御園座)

半日休みをもらって御園座の歌舞伎4月公演を観覧に。この日はバスで伏見に向かっていたのだが、栄のバス停で停まった際に救急患者が出て、バスの運転手が救急車を呼ぶことに。一連の始末にかかりきりで乗客は途中で降りることも出来ず、仕事の約束や乗り継ぎ時間が決まっていた人は冷や汗をかいただろう。結局30分余り停車していたので自分も劇場に間に合うかヒヤヒヤだった。急いで弁当と酒を買って場内へ。

まだ4月公演は始まったばかりだが客の入りは正直良くない。平日昼間の公演とはいえ2階の自分の席の周りもガラガラだった。この日の演目は「南総里見八犬伝」。この演目を観るのは初めて。ストーリー的には難しくない勧善懲悪、敵討ち物なのであまり予習をしてこなかったが大丈夫かな(歌舞伎を観劇する際は内容を把握してストーリーを知った上で観るのがお勧めです)。幕が開いて役者が登場すると、後ろから「成駒屋!」の掛け声。大向うさん(※「〇✕屋!」等の声を掛ける人、大抵の場合そういう特定のグループに属している)がすぐ後ろに居るようだ。

命を落とした姫が所持した数珠のうち、文字が浮かぶ不思議な水晶の玉8つを持つ勇士が集まって御家の再興を計るストーリー。スモークやSE(音響効果)などの外連(けれん)も沢山あって、勇士が集まっていく過程や、みんなが並んで一人一人台詞と共に見得を切るところは完全に戦隊ヒーローもの(笑)。敵は化け猫だ。分かり易くて楽しい。芝翫と息子達(橋之助、福之助)も揃い踏み。出演陣が豪華なので見せ場も多い。こういう演目はまだあまり歌舞伎を観たことがない人にもとっつきやすいんじゃないかな。

舞台転換が多いので幕が閉まった後の大道具さん達は大変だろうが、今日はえらく裏の声が聞こえた。まだ始まったばかりなので手探りの部分もあるのかも。御刀検めのシーンとした場面ではどこかの席のバーサンが大きな声で会話していてずっこける(笑)。ま、こういうのは年配の客が多い昼間の公演ではよくあることだ(というか、こういう”読めない”人達は必ず一定数存在するようだ)。こういうのは役者側からは「あの人」と、とてもよく分かるのだそう。

幕間は席に座ったまま買ってきた弁当を広げる。沢山観に行ける人なら幕間30分の弁当なんてコンビニのおにぎりでも何でもいいんだろうけれど、こちらは歌舞伎観劇の日は一応”ハレの日”なので、なるべく気分が上がるものを探して買うようにしている。この日は栄の料亭「蔦茂(つたも)」の「料亭弁当」。料亭とはいってもこの弁当はプラスチック容器に入ったキオスクとかに売っているもの。バスの件もあって慌てていたので選ぶ時間もなかったが、ちょこちょこと煮物、焼物をつまみにして酒(守山区の東春酒造の「龍瑞・純米」)で口を湿らせる。そういえば名古屋市の登録建造物資産にも指定されていた「料亭蔦茂」の風情ある店舗は昨年秋にあっけなく取り壊されてしまった。繁華街のど真ん中にあるあの建物こそ100年の歴史を象徴していたと思うが、そんな老舗名門でもあの場所で古い建物を維持するのは困難だったということか…。

勇士が集まってずらりと並び、悪役の首領扇谷定正(彦三郎)と並んで見得を切る場面。悪役も一緒に並んで客席の方を向いて”かっこつける”のが歌舞伎ならでは。伏姫と犬坂毛野の二役の梅枝。毛野ではモモレンジャー的な(←例えが古い)立ち位置だと捉えたが、容姿も、張りのある口跡も抜けていてカッコ良かった。口跡といえば贔屓にしている彦三郎。悪役とはいえ、いや悪役だから彼が台詞を口にするとその迫力で圧倒される。勇士達をも凌駕する存在感はさすが。浜路・雛衣を演じた新悟は今までに何度か観ているがあまり印象に残っていなかった。今回は幸薄そうな役がはまっていて良かった。橋之助、福之助兄弟は端正過ぎてまだ色が出ていないが、これから色んな役をやることによって育っていくのだろう。彼らが主役を張るようになった頃に「そういえば彼がまだ若い時分に観たよ」と言えるのが楽しみだ。

 


 

通し狂言 南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)

  • 曲亭馬琴 作
  • 渥美清太郎 脚色
  • 今井豊茂 補綴
  • 戸部和久 補綴

 

  • 犬山道節/網干左母二郎     芝翫
  • 犬飼現八                      松緑
  • 犬塚信乃/赤岩一角          愛之助
  • 犬村大角                     亀蔵
  • 伏姫/犬坂毛野              梅枝
  • 浜路/雛衣                   新悟
  • 犬川荘助                     橋之助
  • 犬田小文吾/安西景連の亡霊 福之助
  • 犬江親兵衛                   玉太郎
  • 伏屋                          梅花
  • 蟇六/馬加大記              橘太郎
  • 扇谷定正                     彦三郎
  • 丶大法師                     松江
  • 滸我成氏                     友右衛門
コメント (2)
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