“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

★科学技術ニュース★東京大学など、「弱い」トポロジカル絶縁体の世界初の実証に成功

2019-02-15 09:39:34 |    電気・電子工学

 東京大学物性研究所の近藤 猛准教授、黒田健太助教、野口 亮大学院生および東京工業大学科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の笹川 崇男准教授らの研究グループは、産業技術総合研究所物質計測標準研究部門ナノ構造化学材料評価研究グループの白澤 徹郎主任研究員、理化学研究所創発物性科学研究センター計算物質科学研究チームの有田亮太郎チームリーダーおよび大阪大学 大学院理学研究科 物理学専攻の越智 正之助教らと共同で、擬一次元の結晶構造を持つビスマスヨウ化物β-Bi4I4(Bi:ビスマス、I:ヨウ素)において、「弱い」トポロジカル絶縁体相を世界で初めて観測した。

 さらに、室温近傍で結晶の冷却速度を制御する事により、通常絶縁体からトポロジカル絶縁相へと転移させ、これに伴うスピン流のON/OFF制御を実証した。

 情報集積の行き詰まる「エレクトロニクス」に代わり、情報爆発に対する救世主と目されているのが「スピントロニクス」。その理想的な条件は、限りなく速い速度で(超高速)、レーザーのごとく直進し(超指向性)、情報を失うことなく伝達する(完全無散逸)、スピン流。それを実現すると理論的に予想されていたのが「弱い」トポロジカル絶縁体だが、これまで未発見であった。

 同研究では、スピントロニクス応用に向けて熱望されている理想スピン流を創発する「弱い」トポロジカル絶縁体を世界で初めて実証・観測した。

 これによりレーザー照射で情報を可逆的に書き換えが可能なDVDの「スピントロニクス」版も可能であり、トポロジカル物性の真髄とも言える無散逸スピン伝導を利用した次世代のスピントロニクス技術に新展開をもたらすことが考えられる。

 同研究は、世界初となる「弱い」トポロジカル絶縁体の実証、および従来から知られる「強い」トポロジカル絶縁体を凌駕する機能性を示した。材料科学分野で最も進展の著しいトポロジカル物性物理において、発見が遅れた「弱い」トポロジカル絶縁体の検証はこれからであり、その潜在能力はまだまだ未知数だと言える。今後、他のトポロジカル絶縁体では実現しない新奇な性質を理論・実験の両面から見つけ出す研究が進展して行くことが考えられる。さらに、「弱い」トポロジカル絶縁体のキャリア制御や微細加工を行うことによって、新たなスピン流デバイスの開発につながることが期待される。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「制御工学 The ビギニング」(西田麻美著/日刊工業新聞社)

2019-02-15 09:39:11 |    機械工学

 

<新刊情報>

 

書名:制御工学 The ビギニング

著者:西田麻美

発行:日刊工業新聞社  

 メカ屋にとって必須の技術ではあるが、どの本を見てもちょっと難しい制御工学。同書は、機械設計者がメカの動きを制御するのに必要な、「これだけは知っておかなければいけない」制御工学の基礎知識について、イラストや図面、写真を用いて、楽しくやさしくわかりやすく紹介する本。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする