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妻のPC

 妻のPCの調子がよくないらしい。電源を入れても、立ち上がる場合と、立ち上がらない場合が半々ぐらいで、困っていた。自分の知っている限りの応急処置は色々してみたのだが、なかなかうまくいかないらしい。私に説明しようとするが、聞いてもよく分からないので聞き流していると怒り出す。「まったく、私のことだといつでもそうやっていい加減なんだから!」などと言われても分からないものにはコメントの仕様がない。ただ、電気屋へ連れて行くことくらいしかできなかった。
 私たちが出向いた電気店は、大型量販店ではなく、市内ではいくつかの店舗を抱える中規模の家電屋であるが、機器についての知識が豊かな店員が多く、修理などの対応もしっかりしているので、最近はこの店ばかりを利用している。妻がPCの状態を説明している間、私は店内の大型TVに映し出されるメジャーリーグの映像を見ていた。ちょうど、ヤンキースとメッツのサブウエイシリーズが行われている日だった。メジャーの試合を見るのも久しぶりだったので、なんだか懐かしい気持ちで眺めていた。松井が復帰すれば、またTVに釘付けになるだろうなと思っていたら、妻の方は話がまとまったようだ。
 妻によると、彼女のPCはどうもはハードディスクが悪くなっているようで、ハードディスクを代えなければならないらしい。そのためには、データを取り出しておかなければならないが、果たしてそれができるだろうかと妻は心配している。妻のPCには塾の会計ソフトが入っていて、税務関係がすべて収められているため、もし取り出せないと困ったことになると顔をしかめた。そうした万一のために備えて、仕事用にPCを使う場合には、もう1台あるといろんな面で困らない、と店員に言われたらしくカタログを手にしている。KOUZIROUという会社のFRONTIERという業務用のPCで、ハードディスクやメモリーの大きさを選ぶことができ、ソフトも必要最小限だけ選べるようになっている。妻が食指を動かしたのは、ノートパソコンで、CPUはインテルCeleron M プロセッサ 360J、OSはWINDOWS XP HOME EDITION、 メモリは512MB、HDDは60GB、ディスプレイは15型TFT液晶というものだ。これに、ワードとエクセルを入れ、5年の保証をつけて12万円程度で買えるらしい。
 「そんなに安くて大丈夫なの?」と私が店員に聞くと、「ヤマダ電機と一緒になってやっている商品だから大丈夫ですよ。デルよりOKです」などとよく分からない理由を言ってくるのでちょっと心配になったが、この店なら変なものは売らないはずだという安心感があるので、注文することになった。一週間程度かかるそうだが、新しいPCがきたら、調子の悪くなったPCの修理をしてもらう手はずになっている。その電気店で直せるかもしれない範囲だったら、それほど費用もかからずに済みそうなので、そうあってほしいと願っている。
 
 でも、機械は調子が悪くなっても、その悪くなったパーツだけを交換すれば元通りに動くようになる。最悪、新品に換えてしまえば不自由はしない。妻も今までのPCはおりこうさんだから、と愛着のあるようなことを言うが、新しくて性能のよいPCを使い出したら、きっとそんなことは言わなくなるだろう。
 しかし、人間はそういうわけには行かない。例えば癌に侵されてしまった臓器はおいそれと交換できないし、交換しようにも手遅れの場合だって往々にしてある。そうすると、座して死を待つしかなくなるのだが、その過程は本人も家族も苦しみや悲しみにあふれている。自分が機械でないことはありがたいことではあるが、「機械であれれよかし」、と思わずにはいられない日が遠からずやってくるかもしれないと思うと、なんともいえない気持ちになる。

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