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木枯らし紋次郎

 
 
 中学・高校のとき、私の部屋には上の写真の「木枯らし紋次郎」のポスターが貼ってあった。「木枯らし紋次郎」といっても、今ではもう知る人はそれほど多くないかもしれないが、松田優作と並んで、私の永遠の2大ヒーローである。笹沢佐保原作の時代劇を市川昆監督のもとにTV化されたものであるが、中村敦夫演じる木枯らし紋次郎が、「あっしには関わりのねえことでござんす」と言いながらもいつの間にかいろんな事件に巻き込まれていく様子を一話完結で描いた傑作である。他人に関わることを拒否しながらも、困った者を無碍に見捨てることもできない紋次郎の、ニヒルに見えて実は人情に厚い役どころを、淡々と演じた中村敦夫が大好きだった。それとともに、当時でも珍しいほど美しい自然にあふれた映像は、江戸時代の天保年間に見る者をタイムスリップさせてくれるようで、本当にすばらしかった。もちろん、一話の最後に、芥川隆行のナレーションで、
 「木枯らし紋次郎、上州新田郡三日月村の貧しい農家に生まれたという。十才の時国を捨て、その後一家は離散したと伝えられ、天涯孤独な紋次郎がなぜ無宿渡世の世界に入ったかは、定かではない」 
というナレーションは今でもしっかり言える。時々楊枝をくわえるとフッと飛ばしたくなるのも、常に紋次郎の素振りを真似していた当時の名残だろう。
 なぜそんなにも、「木枯らし紋次郎」にはまったのだろう。今でも時々、撮りためた昔のビデオを見るときがあるが、ヒューという木枯らしの音がしたかと思うと、その回の話のプロローグが短く流れる。それに切りがついた瞬間に、上条恒彦が力強く歌うテーマソング「誰かが風の中で」が流れ始める。

作詞:和田夏十、作曲:小室等、歌:上條恒彦
一、
どこかでだれかがきっと待っていてくれる
雲は焼け道は乾き陽はいつまでも沈まない
こころはむかし死んだ
ほほえみには会ったこともない
きのうなんか知らないきょうは旅をひとり
けれどもどこかでおまえは待っていてくれる
きっとおまえは風の中で待っている

二、
どこかでだれかがきっと待っていてくれる
血は流れ皮は裂ける痛みは生きているしるしだ
いくつ峠をこえた
どこにもふるさとはない
泣くやつはだれだこのうえ何がほしい
けれどもどこかでおまえは待っていてくれる
きっとおまえは風の中で待っている

もうここから、私は紋次郎の世界にどっぷりつかってしまう。後はもう画面に現れる紋次郎の一挙手一投足を息を潜めながら見つめることしかできない。何度も繰り返し見て、話の細部まで熟知しているにもかかわらず、見るたびに新しい発見がある。それだけしっかり作られていたんだろうなと思う。
 「木枯らし紋次郎」シリーズとしては二期に分かれている。一期18回の題名を調べてみたが、それを読んでいるだけでも場面が目に浮かんでくる。いや、紋次郎を見たことがない人でも、題名のいくつかを見るだけで美しい映像を想像できるのではないだろうか。以下に私が特に好きな回の題名をあげておく。
 
 第1話「川留めの水は濁った」
 第6話「大江戸の夜を走れ」
 第9話「湯煙に月は砕けた」
 第10話「土煙に絵馬が舞う」
 第11話「龍胆は夕映えに降った」
 第13話「見かえり峠の落日」
 第15話「背を陽を向けた房州路」
 第16話「月夜に吠えた遠州路」
 第18話「流れ舟は帰らず」

DVD-BOX、欲しいなあ。なんで買っていないんだろう・・・
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