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企業経営と品質管理(第19回)

2011年02月25日 | Weblog
社会貢献

 企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)が表立って叫ばれるようになって久しい。CSRとは、企業がその利害関係者(ステークホルダー:株主、債権者、顧客、取引先、従業員など)との調和を図りながら正常な経済活動を行うだけでなく、その社会に与える影響について責任を果たすことである。公害を発生させたり、無理な操業や安全管理を怠ることで事故や災害を発生させること。また贈賄、脱税や決算書の粉飾、株価の操作、杜撰な設計や品質管理で不具合品を流通させたり、詐欺的商法(賞味期限改ざんや産地偽装もこれに当たる)を行うことなど、過去に企業の反社会的行為は数々挙げられる。そのことがCSRを求める大きな世論となったことは確かだ。

 一方、企業の社会貢献も多岐に亘る。良質の商品、サービスを消費者に提供すること。それによって適正な利潤を上げ、納税して国家、地方の財政に貢献すること。従業員を雇用すること。原材料や消耗品の購入により、他企業や地元商店の売上に貢献し、銀行等からの借入金の利息を払うことで、預金者の利子を生み出す。地元商工会議所や経済団体での活動はじめメセナ活動といわれる文化、芸術、スポーツ活動支援やフィランソロピー活動といわれる各種寄付行為やボランティア活動などもある。

 あまり言われないことだけど素晴らしいと思うことがある。企業活動において、従業員の社会人としての成長を促すことである。回転寿司店にパートで入った少女は、これまで家でも包丁を使ったことさえなかったけれど、3か月の研修を経て、刺身包丁を使い鮮魚の切り身を作ることができる喜びを知る*36)。企業組織の中で仕事を覚え、仲間との協働の中で体得する知識、技能、礼儀、協調の精神などなど、生活の糧を得るだけでなく、人間として必要な素養が育まれてゆく。そんなことでも企業は大きな社会的責任を果たしていると思う。

 仕事柄企業経営者の方とお会いする機会が多いけれど、みなさん素晴らしい方が多い。人間として魅力的な方が多い。地位が人を作ったのか、優れたゆえにその地位を得たのか。いずれでもあろうと思うけれど、経営者から従業員まで結果として人を育てている企業の存続価値は高い。

 では、品質管理の社会的貢献はどうか。狭義に捉えても、品質保証された良質の製品を社会に送り出すことで、物品の購入に所与の安心感を与え、社会の安寧に貢献している。また、だいぶん昔にしかも聞いた話であるけれど、「ごきぶりホイホイ」を考案した方は、会社勤めの現役時代、改善提案活動で鍛えられ、創意工夫が日常化していたため、退職後に思いついたアイディアが特許につながり社会貢献につながった。確かに私なども会社での改善提案をヒントに家庭内の改善を行うことはしばしばある。

 また、品質管理を広義に捉えれば、世の中の多くの問題解決の手順に指針を与えていることは、本稿第10回「品質管理の真骨頂」でも述べた。正しい企業活動や品質管理は社会に大きく貢献することを誇りに、一層の研鑽を積みたいものである。




*36)2月17日、TV東京「カンブリア宮殿」より
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