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品質保証再考第12回

2010年03月07日 | Weblog
方針管理

 新版品質保証ガイドブック(以下、単に「ガイドブック」とする)第Ⅰ部第4章は、「品質保証の組織的推進」である。この章に「方針管理」についての解説がある。

 『多様化する顧客ニーズと変化する経営環境に対応するためには、トップマネジメントの強い使命感と強力なリーダーシップのもと、適切な戦略を立て、それにもとづく具体的な実施計画を展開し、その運営管理を効率的に行う必要がある。「方針管理」は、このような取り組みを組織的に推進するための活動である。ここでいう方針とは、トップマネジメントによって正式に表明された、組織の使命、理念およびビジョン、または中長期経営計画の達成に関する、組織の全体的な意図および方向づけであり、
 1)重点課題:組織として重点的に取り組み、達成すべき事項 
 2)目標:方針または重点課題の達成に向けた取り組みにおいて、追求し、めざす到達点 
 3)方策:目標を達成するために、選ばれる手段 
の3つを含むのが普通である。「方針を上位から下位に展開する」ことで、方針(ねらい)と現状とのギャップが明確となり、各部門・各担当者が取り組むべき課題が明確になる』とあるけれど、加えてうまくいっているかどうかを判断する尺度となる「管理項目」が入る。

 ここで、「方針の上位から下位への展開」を具体的に説明するために、ある企業X社の重点課題の一つが「売上高の向上」であった場合を想定する。その売上目標額が仮に5億円とし、X社にはA製品部門とB製品部門、他があり、A製品部門はそのうち3億円を賄うことにする。A製品部門の現在の売上高が2億5千万円であれば、A製品部門は5千万円の売上増がその目標となる。このような課題では管理項目は売上高そのものだから分かりやすい。また、X社として売上増のための方策が、トップセールスの実行や新製品の市場投入だった場合、下位のA、B、他各部門では、有効なトップセールスのためサポートや、自部門で開発中の新製品の開発スピードをあげることが課題となり、部門の方策として具体化することが求められる。

 また、方針管理のしくみは、『中長期の経営計画にもとづいて組織全体の年度方針(または期方針)を設定し、これをもとに上下、左右の部門・担当者が密接な話し合いを行い、より具体的な課題・実施計画へと展開する。年度(期)の途中では、管理項目を用いて各々の課題への取組状況を定期的にフローし、必要なアクションをとる。年度末(期末)には実施計画を総合的に反省し、次期の方針管理につなげる』とある。

 「方針管理」は、ガイドブックの645ページ第Ⅲ部第27章にも取り上げられており、そこでは『方針管理とは、組織の使命・理念・ビジョンにもとづき出された経営計画をもとに、全部門・全階層の参画のもとでPDCA(Plan-Do-Check-Act)を回し、目的・目標を達成する活動である。方針に関する個々の課題への取り組みは、テーマの選定、現状把握、目標の設定、要因の解析、対策の立案・実施、効果の確認、標準化と歯止めなど、基本的にQCストリーに準じて進められる』と解説されている。

 このように方針管理は、品質管理の考え方から生まれたけれど、上記X社の架空事例ではないが、その課題の取り上げ方によっては、必ずしも当該企業の製品品質を保証するものとはならない。企業の永続的な発展のために、常に品質第一に考えた重点課題を盛り込むことが重要である。


本稿は (社)日本品質管理学会編2009年日科技連刊“新版品質保証ガイドブック”を参考にその一部を引用(『 』内)しています。
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