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閑話つれづれ其の9

2008年08月23日 | Weblog
ダルマ絵

 会社に入っても柔道部に入部した。熱心な先輩がおられた。就職した以上あくまで仕事が中心、柔道は趣味に過ぎないと思っていた。しかし、クラブ活動には不向きと思われる三交代勤務の没個性的システムが、却って個人競技への憧憬を強くした。熱心な先輩方の導きもあって、いつしか思っていた以上に柔道にのめり込むことになる。

 柔道部には初老の師範がおられた。戦前京都武術専門学校を卒業されて、戦前・戦中は台湾において嘱託警察官の身分で、当地の警察官に柔道を教えていたそうだ。戦後は帰国して整骨院を生業とされ、小さいながらも町道場を持っておられた。市や県の柔道協会、整復師会の要職にあるだけでなく、保護司として、その会の世話役もされていた。大臣を歴任されたさる偉大な政治家の選挙では遊説隊長でもあった。地元の警察署長が新任の挨拶に見えたときに、「時には署にも遊びに来てください。」との外交辞令に、「警察は遊びに行くところか!」と一喝されたと、奥様がニコニコしながらぼやいておられた。

師範には入社して間もない頃、一度だけ稽古をつけていただいたことがある。足技でコロコロと転がされる。そして寝技に転じられる。必死に寝技を逃れてもまたころりと投げられて寝技の攻撃を受ける。非常に正攻法の寝技であったため、高校時代の訓練が効いた。寝技は何度もすり抜けた。少し手を抜かれているようにさえ感じた。しかし後日師範からは、その時の寝技を何度もお褒めいただいた。

寝技の基礎訓練は一人でもできる。道場を這った。海老で、肩抜きで跳ねた。加えて高校2年生の時、寝技大好きな先輩に目をつけていただいて、二人での居残り稽古を随分つけていただいた。立ち技は運動神経の悪い筆者には不向きだったが、寝技は練習量がそのまま成果に結びつきやすい。不器用で締め技は不得手だが、固め技と関節技には自信があった。そんなことが、武専出の師範にも褒めていただくことにつながった。しかし、入社当時試合では、何でもない相手に押さえ込まれたり、果ては締め落とされたこともある。練習と実戦は異なる。実戦の要領を会得するのには少し時間がかかった。

 師範には筆者の不様な敗戦も、運よく強豪を倒した試合もじっと見守っていただいた。筆者転勤の際に師範から銭別にいただいた直筆の「ダルマ絵」は、わが家の床の間に今も飾られている。転勤後、全国整復師会柔道大会のため近くに来られた師範に呼んでいただいた。「与えられた境遇の中で、しっかりと柔道に取り組んだのだから」と、会話の中で至らぬ筆者の柔道をなぐさめていただいた。ダルマ絵には「転んでも直ぐ起き上がるだるま哉」と師範の達筆で添えられている。
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