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続、この国の風景その8

2011年12月22日 | Weblog
デフレ

 デフレとかデフレスパイラルとかいう言葉をよく耳にする。物価が下がってゆく現象。そのことで企業の収益が落ち、従業員の給料を下げざるを得なくなる。給料が下がれば購買力が落ちてさらに物価が下がる、という負のスパイラル。国内経済の規模が縮小していく、すなわち不景気ということになる。ただ、デフレそのものは生活者にとっては、同じ物を買って出てゆくお金が少なくなるから当面助かる感覚がある。

 物価が下がるデフレ現象の産業界に与える負の影響は、逆を考えればよく分かる。日本の高度経済成長時代は明らかなインフレーション(インフレ)が続いた。設備投資が続き、雇用も増大する。今年1億円で買った同じ機械がインフレで数年後には1億2千万円するかもしれない。通常機械設備は年数と共に減価する。この価値が下がり難いことになる。含み益のようなものだ。

 企業は通常設備投資は銀行などからの借入金で賄う。これは当然に返済しなくてはならないが、インフレは貨幣価値を下げているようなものだから、借金をしている人にとっては有利なのだ。但し、インフレ状態にある時は借入金の金利も高い。もっとも金利以上の収益が見込めるから投資している。

 これが、デフレでは逆になる。経済活動が縮小し企業は新たな投資や雇用を控えるため、新卒者の就職難が生じる。生活者にとっても住宅ローンなど組んでいる人は負担増しになると言われている。ただ、バブル時代、宅地を買うのに借入金の利息は10%未満であれば得だとさえ言われたものだ。今は1.数%(変動型)。しかも宅地はバブル期に比べ、多くの所で大幅に安くなった。バブル期、一般サラリーマンが年収の5倍程度でマイホームが持てるようにとの政府に目標があったが、現在は十分満たしたのではないか。バブル期に比べて生活者にはいい時代ともいえる。しかし問題は若者の就職難である。就職難は雇用条件の悪化をもたらし、派遣労働者など不定期就業者にしわ寄せがくる。大企業の経営者を中心に企業の社会的責任を自覚して欲しいものだ。

 バブルの時代からみれば随分と下落した不動産価格は消費者物価指数に入っておらず、デフレの概念に含まれない。それでも世の中デフレだというので、消費者物価指数の推移を調べてみる*19)。戦後のハイパーインフレが終息後の1950年を100とした指数が、バブル期の1991年に800となり、2009年でも約800である。一番消費者物価指数が一番高かったのは1999年頃で約830程度。こ時点からみれば現在まではデフレ傾向にあったと言えそうだが、それも10年でたかだか4%に満たない下落幅。バブル期からの20年、物価はほぼ横ばいで推移して来たといえる。

 最近の物価動向をみても灯油などは、数年前まで18リットルで800円前後だったけれど、現在1500円くらいする。JRや路線バスなどの交通運賃も下がっていない。砂糖や小麦を原料とする菓子類は、1ドル360円の時代からすれば、所得に比して安くなった感じがあるけれど、これは円高の恩恵である。原材料だけでなく、近隣諸国の工業の発展によって安価な部品、製品が入ってくるようになり、国内の流通、生産やサービスの効率化と相俟って物価が下がっているけれど、価格競争における企業努力もあり、自由競争社会のメリットともいえる。騒ぐほどのデフレではない。

 今後の人口の本格的な減少が、国内経済の衰退を懸念する声も高い。確かに高度経済成長時代の国家モデルではそうかもしれない。それならばこそ過去の延長線上ではない、政治経済の在り方が問われるのだ。国家財政、年金や税制、国際金融に周辺有事の懸念など、この国の風景には悲観論が満ちているけれど、縮こまっていないで、「ピンチはチャンス」と今こそ前向きに見方を変える発想が必要な時ではないか。




*19)Garbagenews.comから


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