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ものづくりへのオマージュその2

2008年07月05日 | Weblog
嬉しい話
 最近になって岡野工業(株)岡野氏の「町工場こそ日本の宝」2005年8月刊/PHP研究所、を読んだ。岡野氏のというより元通産官僚であった橋本久義氏との対談本で、各章に橋本氏のコメントが入っている本だ。橋本氏については、恥ずかしながらこれまで筆者は全く知らなかった。氏のことは次号以下で紹介させていただきたいと思う。
 岡野工業(株)はプレス機の金型を作っていた。精密な金型であればこそ仕上げの部分は職人の感性の領分で、「ここを心持ち削ってくれ」と言われ、「手前の心持ちと俺の心持ちじゃあ違うよ」などと言い合いながら、潤滑油が微かに濁る頃合で金型を削るそうな。今の岡野氏の代になって本格的にプレス加工も手がけておられ、その創意工夫と精巧な技術、たゆまぬ精進が痛くない注射針に代表されるような新しい製品を生み出している。
 はっきり言って技術論議は、ただすごいとしか分らないが、この本には岡野氏のもっと素敵な話が語られている。いわば「美しいはなし」だ。岡野氏曰く「嬉しい話」だ。中学で不登校になった一人息子を抱えるお母さんが、岡野氏の著書「俺が、つくる!」(中経出版)を読んで感激されて、岡野氏に「ウチの息子を預かってもらいたい」と依頼されたそうな。岡野氏は何度も断ったそうだが、お母さんも半端ではない。結局岡野氏は少年と会うことにする。顔が見たいというわけだ。会ったとき、岡野氏は「なかなかいい顔をしている。これはたいしたもんだ」と思ったという。いろいろ話をしたその3ヵ月後に少年から直接電話があって、「おじさん、俺、学校に行く。学校に行って工業高校に入って、卒業したらおじさんのところで使ってくれるか?」と。その後中学は皆勤で卒業し工業高校に合格したとの報せがあったそうだ。
 もうひとつ、岡野工業(株)には毎年10校くらいの中学の修学旅行生が訪れるそうだ。いまの修学旅行は、東京までは一緒に来るけれど、東京での見学先はグループで好きな所に行く。中学生の中に「岡野工業に行きたい」というのが居るらしい。10人くらいで、時には女の子も交じって事務所に上がりこんで、いろいろ岡野氏の話を聞くらしい。みんなやる気になって帰っていってくれるという。子供たちが家に帰ったあと、お母さんからよく電話がある。「ウチの子供が、やる気になって帰ってきました」みんながそうらしい。その後子供たちからは「高校に受かりました」と連絡があったりする。子供たちのピュアな感性には、岡野氏の職人技に陶冶された人間性まで視えるようだ。

 註!本稿岡野氏の著作の引用部分には、筆者の編集が入っていることをお断りさせていただきます。
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