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マーケティング第7回

2014年01月19日 | Weblog
ブランド

 「ブランド」と聞くと、エルメス(Hermes)やルイ・ヴィトン(Louis Vuitton Malletier)、シャネル(Chanel)など、主にファッション関連の世界的に有名で高級な所謂ブランド物を思い浮かべる人が多いと思うけれど、マーケティングにおける「ブランド」とは、企業および企業の製品・サービスを他の企業(製品・サービス)と識別し、差別化するために、企業が独自に使用する名称やマークのことで、有名、無名等には関係がない。

 しかし、ブランドは単に識別し、差別化する用途に留まらず、それが市場に広く深く浸透するか否かで、その企業や商品の売上を左右することになるため、企業はそのネーミングを工夫し、宣伝・広告にも力を注ぐわけで、マーケティングの重要な地位を占めている。日本企業が世界に認められるようになった1970年代頃からは、企業名も短くしたり横文字にしたりグローバル化に対応する。その後CI(Corporate Identity)をよく聞いた時代もあった。企業名を社会に良いイメージで浸透させるための方策であった。

 東レパンパシフィックテニスや炭素繊維などで有名な「東レ」は元々東洋レーヨン。次期経団連会長に榊原東レ会長が就くというが、これなども企業ブランド浸透に貢献する。コマーシャルにアルパカを使い評判となり、昨年からはスキージャンプの高梨沙羅選手を所属契約としたという「クラレ」は、元々倉敷レーヨン。戦前は岡山県倉敷市の地方企業だった。2008年10月に松下電器産業は遂に企業名から創業者名を外し「パナソニック」となった。ソニーなどは当初より海外では「SONY」の4文字で事業を展開した。このため米国民などSONYを日本の会社と意識していなかったように聞く。

 所謂ブランド物と呼ばれる製品には、親しみ、好感、信頼感、先進的、センス、高級感や高品質、わくわく感などプラスイメージがある。しかしそれは一朝一夕に出来あがるものではない。先人が営々と築き上げたものだ。しかし2013年世界的なブランド価値評価*7)のトップは、長年トップだったコカコーラ(3位に後退)を抜いてApple(983億ドル)。2位はGoogle。時代である。

 コカコーラはひたすらに「スカッと爽やか」で売り13年首位を維持していた。長年同じキャッチコピーで通していると言えば、わが国では「お口の恋人」が思い浮かぶ。昭和34年「ロッテ歌のアルバム」のテレビ番組が始まり、司会の玉置宏さんの名調子と共に人々の脳裏に刻み込まれた。同時期「あたり前田のクラッカー」というのもあった。但しこちらはクラッカーより藤田まことさんの顔が浮かぶ。「元気ハツラツぅ」「ずっと支える。もっと役立つ」等々、キャッチコピーもブランド形成に重要である。

 最近は企業の買収や合併すなわちM&Aが盛んである。14日の日本経済新聞朝刊一面に「サントリー、米首位*8)を買収(1兆6500億円)」という大見出しがあった。これによりサントリーは蒸留酒メーカーとして世界3位の規模*9)となるという。企業買収の主な目的は技術・ノウハウの取得や新たな販売チャネルの拡大であろうが、ブランド価値の増大も大きい。サントリーはわが国ではすでに有名であるが、世界の老舗の洋酒メーカーからすれば新参者(1929年ウイスキー販売開始)であろう。この買収により寡占化が進んでいるという世界の蒸留酒業界で10位だった規模からビッグ3に躍進するのだ。

 ブランド企業の製品には所与の安心感がある。この顧客の信頼を裏切ってはならない。顧客のブランドロイヤルティ(ブランドに対する消費者愛顧)は大きく、従ってブランドエクイティ(ブランド資産)は企業価値に大きなウェイトを占めるのである。




*7)日本企業では、トヨタが10位、ホンダ20位、キャノン35位、ソニー46位、任天堂67位などが世界のベスト100にランクインしている。(IT Mediaニュース)
*8)1795年米ケンタッキー州で創業のビーム。バーボンウイスキーが主力。2012年の売上高は25億ドル。従業員数3400人。2011年10月ニューヨーク証券取引所に上場。日本経済新聞記事より。
*9)世界1位はジョニー・ウォーカーで有名なティアジオ(英)、第2位はシーバスリーガルで有名なペルノ・リカール(仏)である。
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