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品質保証再考第18回

2010年03月25日 | Weblog
生産準備・工程設計

 品質保証プロセスの4番目に、「生産準備・工程設計」が来る。次に来る「生産」プロセスと併せて、狭義に捉える品質管理の中枢部分と考えられる。『製品がねらいにどれだけ一致しているかは「合致の品質」と呼ばれるが、「生産」において合致の品質を保証できるようにすることが、生産準備・工程設計の重要な役割となる』。また、『品質保証のための原則の1つに「プロセス重視」がある。これは「品質は工程で作り込む」という思想であり、・・・不良を発生させない工法や工程、不良を流出させない工法や工程を開発・編成することである』。

 この生産準備・工程設計のプロセスの最初に来るのは、内外製方針の検討である。開発された製品・商品を自社の生産設備で作るのか、外注に委ねるのかという検討である。自社の設備に生産能力的に余裕がない場合や、技術的に困難なケースに所謂OEMとして、全面的に外注することになる。また、生産工程内の一部の工程を外注に出すケースも多い。金属工作を得意とする企業が製品の樹脂部分の成型をその専門メーカーに委託したり、メッキなど特殊な工程を必要とする場合など、その専門企業に委託する方が手っ取り早いことが多い。しかしこれらでは、単に原材料や部品を購入すること以上に、委託先の技術力の評価や品質、納期、原価等の厳しい管理と、より緻密なコミュニケーションが必要となる。

 次に、生産システム設計・工程編成となるが、このためには生産の流れをまずフロー図に表し、その後QC工程図に仕上げる。フロー図に添えて工程ごとの管理項目、特性値、計測器、管理頻度(間隔)、管理方法、管理者と関係帳票などを記載する。以前にも書いたけれど、QC工程図は現場で活用できるものを作りたい。詳細なものはマスターとして作成し管理すれば良い。ポイントは、管理項目の特性値が基準を外れた際に、フィードバックする工程を示しておくことである。通常フロー図の中に菱形でチェックポイントを入れて、OKなら下方の次工程へ、NOなら上方のフィードバックすべき工程へ矢印を伸ばしておくことである。

 そして量産試作を行い、工程能力を把握する。この”能力”には当然に生産量も含まれるけれど、品質管理の面で工程能力といえば、継続的に規格に対する適合品を生産する能力をいい、工程能力指数であるCp*11)やCpk*12)によって評価された*13)能力をいう。これについてガイドブックは、第3部「品質保証のための要素技術」の項で詳細に説明している。規格幅に対する、製品特性値のバラツキの余裕度と考えてよい。財務管理で言うなら損益分岐点比率のようなものだけれど、CpやCpkが大きくて品質に余裕があれば良いといったものでもない。コストとの兼ね合いからも過剰品質に注意が必要である。

 さらに工場での量産に向けて、トラブルの予測と対策や不良品の流出を防止する検査工程の設計が必要である。

 ガイドブックは、ここまでの商品企画から生産準備に至る開発期間の短縮のため、コンカレントエンジニアリングを推奨しているが、これは、後工程のメンバーがより前工程に遡って早い段階から連携した活動を進めることで、品質の作り込みに寄与できるためとしている。作り易い製品構造への提案は品質問題の発生を抑え、品質保証に大きく寄与するのである。


*11) Cp=(SU-SL)/6s(両側規格の場合)SU:規格上限値 SL:規格下限値
   Cp=(SU-x)/3s(片側上限規格の場合) s:データの標準偏差
     x≧SU のときは、Cp=0とする x:データの平均値
   Cp=(x-SL)/3s (片側下限規格の場合)
     x≦SL のときは、Cp=0とする
*12) Cpk=(1-K)(SU-SL)/6S (両側規格カタヨリを考慮する場合)
     K=[(SU+SL)/2-x]/[(SU-SL)/2]  Kは絶対値
     K≧1 のときは、Cpk=0とする
*13) 1.67≧Cp、Cpk≧1.33 工程能力は十分である。
   1.67≦Cp、Cpk  管理の簡素化やコスト低減の方法を考える

本稿は (社)日本品質管理学会編2009年日科技連刊“新版品質保証ガイドブック”を参考にその一部を引用(『 』内)しています。
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