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マーケティング第5回

2014年01月13日 | Weblog
ソフトの時代

 「日本式高くても人気」という記事が、10日の読売新聞にあった。「世界に勝る安全性と正確さ」というサブタイトルも嬉しい。

 『「車内がきれいで時間も正確。マイカー通勤の頃は渋滞で30分かかったが、今は10分で着くよ」。中東屈指の大都会ドバイの公務員フィナオ・デクナさん(30)は、無人運転の地下鉄「ドバイ・メトロ」を絶賛した。中東初の都市鉄道として2009年9月に開業し、2路線、計75kmを走る。三菱重工業と三菱商事を中心に、日本とトルコの5社連合が建設を手がけ、難工事だった砂漠の高架橋は日本の技術で建てられた。1日約50万人が利用し、ドバイ道路交通局のアルハッサン計画開発部長は、「日本の無人システムは100%安心だ」と語った。』

 マーケティングもやはり極意は売る「もの」の高品質に返る。その売る「もの」の主役が変化している。行列のできるラーメン店もお惣菜店もケーキ屋さんも、その店の商品が「おいしい」、すなわち品質がいいから並んででも買おうとする。この場合の差別化は「味」というソフトだ。ラーメンやケーキの見掛けがいいから買うのではない。品質は「もの」を超え人々の「働き方」までを捉え、この時代は「もの」に付随する「ソフト」が注目されているのだ。

 たとえば、GPS搭載コマツの「COMTRAX」*5)。販売した重機の位置、稼働時間、故障時間、稼働中のエンジン負荷等を追跡することで、確度の高い需要予測が可能となり、生産・在庫調整、投資判断、技術改善に有効であるばかりか、ユーザーにとっても事前の部品交換によって故障が予防できるし、盗難防止ともなる。

 米国GE社は以前から、自社の航空機エンジン搭載機が運航中に地上でエンジンの調子をモニタリングできるシステムを持っていると聞いていた。東京の地下鉄運行システムなどもドバイの無人システムの地下鉄同様世界に勝るもののようで、外国からも見学者が絶えないと聞く。
 
 実は読売新聞は今年に入り、4日から10日まで7回に亘り、『目に見えない「日本力」』というタイトルの特集記事を組んでいた。副題は「ソフトパワーの作り方」、冒頭の記事はその最終回だったのである。

 日本のソフトパワーは、アニメや日本食を筆頭に世界で大いに認められるようになっている。しかし、『日本のエンターテイメント業界は、企業や歌手などの単独の活動にとどまっており、官民一体で海外市場を面として攻めている韓国などに遅れをとっている』*6)という。麻生内閣の時にあった「アニメの殿堂」構想は、民主党への政権交代で即ボツにされたけれど、必要な投資であったように思う。懲りない面々はまた、東京都知事に脱原発で元首相を担ごうとしている。日本の国富をどれだけ失わせれば気が済むのであろうか。

 エンターテイメントといえば、昔から映画も代表的なものの一つであろう。この正月の2日に、市内に新設された映画館で、3Dの「ゼロ・グラビティ」を観た。日本映画もこのところ健闘している(有楽町で年末に観た「永遠の0」は素晴らしかった)けれど、「ゼロ・グラビティ」のような映画はやはりハリウッドでなければ作れない。物語の中に、中国の宇宙ステーションも出てくるけれど、航空宇宙産業で我が国は、米国はじめロシア、中国にさえ水を開けられている。文化、ソフトだといって、結局それを維持し支えるのは科学技術であり、ものづくりだ。わが国独自の宇宙ステーションが欲しいと、その映画を観てつくづく思った次第である。




*5) KOMTRAXは、コマツが開発した建設機械の情報を遠隔で確認するためのシステム。2001年より標準装備化を進め、KOMTRAX装備車両が国内外で稼働している。
コマツではKOMTRAXから送信される車両情報を無償で顧客に提供している。
*6)読売新聞平成26年1月4日、『目に見えない「日本力」ソフトパワーの作り方』より
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