中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

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閑話つれづれパートⅡその18

2009年10月22日 | Weblog
二次試験

 この日曜日(10月25日)は、平成21年度の中小企業診断士の二次筆記試験が行われる。診断士の二次試験は、2~3ページ2000字から3000字程度の与件文があり、それら与えられた条件の下に4、5題の問題と設問に沿って解答を各20字から200字程度で記述させる試験だ。すなわちシンプルに言えば、「読むチカラ」と「書くチカラ」が問われる試験だ。与えられる時間は1科目80分。これを1日に4科目。時間との戦いもあり、非常に疲れる試験でもある。

だから60歳以上の受験生の年代別合格率の落ち込みは、一次試験の場合より激しい*4)。企業の管理職など社会的経験を十分積んでいる分、記憶力に依存する知識問題より小論文形式のこの試験が相対的に有利と思われるけれど結果は逆となっており、この試験の過酷さを物語っている。

 私は一次も二次試験も3回目の試験でようやく合格した。当初一次試験さえ合格できれば二次試験はどうにかなるように考えていた。文章を書くということには、昔から抵抗が少なかったからである。しかし、振り返ってみれば会社の研究室時代、研究報告書の作成では上司から匙を投げられていた。研究報告書は、あくまで論理的でなければならず、想いのままに綴る散文的な文章では全く通用しない。その過去を忘れていた。

 ゆえに当初二次試験対応にはとまどった。出題者から模範解答は出ないし、資格の学校の答えも各社まちまちだから、当然普通の受験生にとって取り組みは難しい。このような試験で篩分けることへの恨み辛みも湧いた。そんな時に出会った本があった。斎藤孝明治大学教授の「読むチカラ」株式会社宝島社2004年8月刊 である。

 『出題者の存在と意図に思いを馳せ、出題者と同じ地平に立ったとき。そこに全く新しい世界が見えてきます。100人に1人しか思い浮かばない答えは「正解」にはなりません。いくつもの読み方が考えられる中で、常におよそこの辺りだな、という共通理解を求めていく。その妥当性、客観性があってこそ、人間社会は成り立っているのです。・・・受験勉強の苦しさの中でも、点を取ることだけではなく、もう一歩先のことまで考えていて欲しい。』*5)あうそうか、診断士の二次試験もこれなんだと腹に落ちた。

 受験生は大変だけど、その分鍛えられる。良質な問題を作られる先生方、公平な採点に腐心する採点者の方々も大変だ。記述試験は最初から最後まで関係者すべてに大変な試験ではあるけれど、このような試験は必ずや診断士の質の維持向上に有効となっている筈で、良き試験制度だと思う。
 
 
*4)平成20年度60歳以上(70歳代も含む)合格率1次試験14.1%(全体23.4%)。2次試験11.3%(全体19.8%)
*5)斎藤教授は、東京大学の「現代国語」入学試験問題から論評しています