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閑話つれづれパートⅡその14

2009年10月10日 | Weblog
知の衰退(下)

「日本の底が抜ける」という懸念を表現する言葉がある。低体重児(2500kg未満)が出生率の1割近くまでに増加(この30年で倍増する勢い)*3)し、65歳以上の寝たきり老人の数は米国の5倍に達する(ラジオである医師の方が話されていた)そうである。さらに、文藝春秋本年10月号の“総力特集「政権交代」”の3人の論者から見えてしまう、現在の日本の知識層と言われる人々に蔓延する「知の衰退」を感じ、相俟ってすでに「日本の底は抜けた」のではないかと思ってしまう。

三者三様にもっともらしく現政権にエールを送っておられるけれど、その内容は隙だらけで、真にこの国の人々の安寧を願っているとは思えない。上面の理想論であったり、経済の本質をご自身の知識に照らして真摯に考えた末の発言とは思えなかったり、単に人情に流されているだけというものである。

オバマ大統領の核廃絶や軍縮にしても、自国の経済のどうにもならない現状があるゆえの方策であることを無視して、理想論を鵜呑みにする単純性。また中国の突出した軍事増強を押さえ込む方策は全く述べることなく、ただ国際社会に引き込めとするだけで曖昧にするリスク感覚の欠如。東アジアの安定のためには、米国が手を引いた分を本来日本の自衛隊増強でカバーして、軍事バランスを保つことが必要である。それを行う覚悟もないくせに米国との対等な関係を唱える国際的非常識さ。

元財務官僚の“「バラマキ」「財源論批判」はナンセンスだ”。“「成長戦略」などなくていい”。は兎も角も、国民の貯蓄額と国債発行額のバランスにおいて、日本は債権国という無責任な論評には多くの読者も異議を唱えるのではないか。それは、貨幣が信用の上にこそ成り立っていることを無視した論理に思えるのだが如何であろう。

また、高速道路無料化による経済効果に期待するように言っているけれど、環境対策としての二酸化炭素削減と、高速道路無料化やガソリン税の廃止とははっきりとチグハグではないのか。総合的にみて本当に経済効果があると考えておられるのか。すでに現政権が言い出した「環境税」が必要となり、結局国民のためにはならないのではないか。さらに「経済回復の鍵は農業振興」の“農業振興”の部分は大いに共感できるけれど、農業生産高は8.2兆円に過ぎず、パナソニック1社の売り上げにも満たない(2009.5.4日経ビジネスからのデータ)。大衆受けを狙った論評も結構だけれど、現実を把握され信念を持って論評されているのであろうか。どうせ誰にも分からない経済論に感けて、単なる政権迎合論に思えてならない。

実績がおありで高名な大実業家氏の発言にも疑問符が付く。小泉構造改革以来のアメリカ追従型の市場原理主義の副産物として生み出された深刻な格差社会といわれるが、それが現実にあるとするなら、それはあなた方の長年のお仲間である大企業を中心とした財界人の責任ではないのですか。さらに子供手当てなど国民への現金支給は、政治の王道といえるのでしょうか。そして角栄流政治家の人誑し術に引っかかったに過ぎない過去を誇らしげに書くところは、成功者に見られる自己陶酔としか思えない。

鳩山首相に、訪中の前に「友愛の海に」とやらの現実を、お忍びで見ておけと言うくらいの人物が取り巻きに居ないのが現政権の限界であろう。


 *3) 文藝春秋10月号「炉ばたに学ぶ」辰巳芳子氏「みそ汁のこと」から引用。低体重児は体力、智力ともに低下しがちの上、成人後は生活習慣病になりやすい。とある。