DVD「紳士同盟」

DVD「紳士同盟」(1960 イギリス)

ひとことでいうと、この作品は銀行強盗の映画だ。
強盗映画には、パターンがある。

まず、仲間をあつめる。
計画を練り、訓練し、実行する。
そして、犯罪は引き合わないことを証明するために、得た金を失う。

本作は、このパターンにぴったりとあてはまる。
では、ストーリーをみていこう。

夜、マンホールからタキシードを着た男(ハイド大佐)が登場するという場面からスタート。
(けれど、マンホールの中でなにをしていたのかは、映画を最後までみてもよくわからない。この映画最大の謎だ)
自宅に帰ったハイド大佐は、「金の羊毛」という小説と、半分に切った5ポンド札、それに手紙を小包につめる。

小包は、元軍人である7人の男たちのもとへ。
こうして男たちの状況が点描される。

ギャンブラーであるらしいレース少佐は、カードで文無しになり、女と別れ話をしている。
そこに例の小包が到着。
手紙にはこうある。
《少佐どの。紙幣の残り半分がほしいなら、すぐ同封の本を読み、差出人との昼食に臨まれたし。》

次に、奥さんの浮気に悩まされている、スミス少佐。
それから、偽牧師のマイクロフト大尉。
マイクロフト大尉は、警察らしきひとが訪ねてきたと大家の女性に教えられ、あわてて荷物をまとめて部屋を逃げだす。

年をとったご婦人の愛人で、夜遊びに精をだすポートヒル大尉。
機械の修理屋をしている、レクシー中尉。
レクシー中尉は、怪しい男がもちこんだスロットマシンの改造を引き受けたりしている。

ボクシングジムを経営する、金に困っているスティーヴンス大尉。
そして、同居の家族にうんざりしているウィーヴァー大尉。

この全員が、カフェ・ロワイヤルの楓の間にあつまる。
部屋を借りているのは、有限会社機動組合。
小包の差出人であるハイド大佐があらわれ、事情を説明する。

同封したのは、アメリカ人作家が書いた、男たちが銀行強盗をするというサスペンス小説。
魂が揺さぶられなかったかなどと、ハイド大佐はたずねるのだが、7人の反応は鈍い。
君たちには失望した、楽に金を稼ぐ方法が書かれているんだぞと、ハイド大佐。

ここにいる全員は悪党だと、ハイド大佐は7人の素性を明らかにしていく。
レース少佐は、戦後ハンブルグで闇市場の顔役となり、露見する前に軍をやめた。
スミス少佐は、資産家の令嬢と結婚し、妻の金で除隊。

マイクロフト大尉は、公衆わいせつで士官の肩書を失う。
ポートヒル大尉は、キプロスで政治組織の一員を撃ったために免職。
無線通信隊のレクシー中尉は、ロシアへの機密漏洩のために免職。
スティーヴンスン大尉は、ファシストの参謀として活躍していた。
爆弾処理班の指揮官だったウィーヴァー大尉は、酒に酔ったために判断ミスをして、4人を死なせた。

そして、ハイド大佐自身は、過失なく25年間勤務したものの、余剰人員として軍を解雇された。
皆の共通点は、金がいることと、元軍人であり、プロであること。
私は諸君の技術を買うと、ハイド大佐。
報酬は、1人10万ポンド。
準備が整い次第また報告するといって、ハイド大佐は去る。

去ったハイド大佐を、郊外の邸宅まで追いかけたのが、レース少佐。
以後、レース少佐は、ハイド大佐の副官となる。

次に皆であつまったのは、演劇クラブのリハーサル室。
ここで全員、ハイド大佐の計画に参加することが確認される。

今後、計画が完了するまで、全員ハイド大佐の邸宅で合宿をすることに。
雑用は当番制、ベッドメイキングと洗濯は各自、女性は禁止と、なかなかやかましい。
規則違反者には罰金。
作戦名は、「金の羊毛作戦」だ。

まずは、武器の調達。
陸軍訓練所に侵入し、武器を盗みだす。

そのため、訓練所内の食事の苦情を受けて、新しい地域司令官が臨検にくるという芝居をする。
情報部をかたり、臨検にいく旨を訓練所につたえた上で、司令官とそのお付きに化けた4人が、訓練所を訪問。
同時に、外部との連絡を遮断するため、2名が電話線を切断。
電話を修理するとの名目で、訓練所内に侵入する。
そして偽司令官が訓練所内の耳目をあつめているあいだに、外に待機している2人と連携し、武器庫から武器をせしめる。

もちろん、実行すると思いがけないトラブルが次々と起こる。

第2段階として、トラックを調達。
これまた盗んできて、用意したガレージで車体を塗り替え、「有限会社 機動組合」のロゴに差し替えて、ナンバーを変更。

それから、目標となる銀行の偵察。
《この銀行が我々の戦場だ》
と、ハイド大佐。

銀行には10時55分に装甲車が到着。
金と、ひと箱5万ドルの使用済み紙幣をはこんでくる。
これをすべて強奪する。

作戦に要する時間は3分。
警報装置の作動を止めるため、爆弾で周辺地域全域を停電させる。
妨害電波により、3キロ半径の警察の通信を使用不能にする。
ガスを発生させ、煙幕のなかで強奪をする。
そのため、全員ガスマスクを使用する。

手はずをととのえ、当日、いよいよ決行――。

本DVDには、日野康一さんによる解説がついている。
それによれば、ほとんど同時期にアメリカで、元コマンド部隊の仲間があつまりカジノを襲撃するというストーリーの、「オーシャンと11人の仲間」が製作されたとのこと。

《どちらもオリジナル・シナリオ、偶然の一致である。出来上がって両方とも驚いた。人間は同じことを考えるものである。》

「紳士同盟」は白黒だが、「オーシャンと11人の仲間」はカラー。
ソール・バスのオープニングも洒落ており、全体に粋で華やか。
特に襲撃後、得た金を失う、愉快で気の毒な場面は忘れがたい。

「紳士同盟」も、最後は相応の結末をむかえる。
華やかさはないけれど、実直で、こちらも忘れがたいラストだ。

強盗映画というと、襲撃後に仲間割れを起こすことがよくある。
でも、「紳士同盟」も、「オーシャンと11人の仲間」も、それがない。
そのことが、2つの映画を気持ちのよいものにしている。

最後に。
「紳士同盟」で身元が発覚するのは、子どもがひと役買うためだ。
同じことをする子どもは、「乱闘街」にもいた。
10年以上前の映画にも、同じことをしていた子どもがいたことが、なにやら面白く感じられる。


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