MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

"Binge Drinking" の弊害

2010-12-15 16:34:16 | 健康・病気

“binge drinking” とは『アルコールのがぶ飲み』
すなわち短時間に大量の酒を飲むことである。
以下の記事の中では、
“binge drinking” を 『2 時間以内に男性で 5 杯以上、
女性で 4 杯以上を飲むこと』と定義しているが、
ここで言う 1 杯というのは
グラスでワインの 1 杯に相当していると思われる。
米国では中学生から酒盛りをするようで驚かされるが、
それを許すお国柄なのだろう。
日本でも最近の中高生は
存外飲酒量が多いのかもしれない。
思春期からのアルコール摂取は脳に重大な障害を
来たす恐れがある。
将来エビゾーのような人間を生み出さないないためにも、
未成年の飲酒は厳しく禁ずる必要があるのかもしれない。

12月6日付 Washington Post 電子版

Scientists try to assess the impact of binge drinking on the brains of teens  科学者たちは十代の若者の脳への binge drinking の影響を調べようとしている

Bingedrinking

Binge drinking を行っている若者の脳の白質に対照群と比べ変化を生じている所が色をつけた領域として強調されている

By Laura Hambleton
 緊急室の看護師 Sheila DeRiso さんはその高等学校の講堂の前方に立ち、50人ほどの十代の若者や親たちからなる聴衆に面と向かった。黒いナイロン袋から彼女は長いプラスチック製の管を取り出し、続いて、胃の洗浄器、検鏡、カテーテル、さらには大人用おむつを出した。会場からは忍び笑いがこぼれた。これらすべての器具は、binge-drinking(ビンジ・ドリンキング)を行う十代の若者を治療するために毎日ERで使われているものだと、彼女は説明した。
 それから彼女は白い遺体袋を引きずりだし、それを広げた。「そしてもし回復しなかったらこれ行きです」
 聴衆は静まりかえった。
 Binge drinking、つまりかなり急速な大量飲酒、というのは大学生活のお家芸だった。しかし、DeRiso さん、地方の警察署、専門家たちによると、高校、さらには中学校の生徒も行っているという。中学校の生徒 5,300人を対象にした2005年の調査では、7年生の8%、8年生の17%が過去一年の間に binge drinking を試したことがあると述べている。
 こういったひとしきりの大量飲酒のしわ寄せがこの地域における ER に現れている。ほとんどの週末夜、特に祝日近くには、若者たちが、binge drinking や、最新の流行である blackout drinking を行ったり、意図的に意識を失う状態まで飲酒した後、気を失ったり、気を失いかけたりして、自動車事故でけがをしたり、急性アルコール中毒に陥って、若者が ER に運ばれる。
 「私は看護師です」、DeRiso さんは Rockville にある Magruder High School の聴衆に語った。「アルコールは皆さんの思考力、協調性、あるいは判断力に影響を及ぼします。アルコールは皆さんの脳に影響を与えるのです」
 急速に発達していて可鍛性のある若者の脳にアルコールがどのように影響を及ぼすのか、それは最新の科学上の疑問である。Binge drinking が多くの若者たちにとって定着した生活の一部となっている時代に、科学者や疫学者たちは、Olney にある Montgomery General Hospital の ER で DeRiso さんが遭遇する身体的損傷を越えて、思春期の脳において大量の飲酒が引き起こす認知障害や身体的および化学的変化に目を向けている。

Teens consuming alcohol  アルコールを摂取している十代の若者たち

まず以下の統計を考えていただきたい。
 1.疾病対策予防センターの2008年の報告書によると、全国的の 12~20才の人たちは、毎年米国で摂取される全アルコール量の11%を消費し、それらの90%以上が binge drink の形で飲まれるという。
 1.2008年に Maryland State Department of Education から発表のあった調査によると、Maryland 州の高校最上級生(12年生)のほぼ半分が binge drinking を試したことがあると答えているという。さらに高校全学年の生徒を調べた2009年の報告では、5人に1人が、前の月に “少なくとも一日は2~3時間以内に5杯以上の酒を飲んだ” と答えていることがわかった。
 1.2006年に発表された annual youth study によると、バージニア州では高校最上級生の76%と、10年生の64%が過去30日の間に飲酒していたと申告しているという。
 1.National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism によると、2005年には18才から24才の1,825人の大学生が自動車事故などアルコールに関連した不慮の外傷で死亡しており、これは毎日約5人、5時間毎に1人の割合となっている。
 1.Binge drinking は、2時間以内に男性では少なくとも5杯、女性では4杯を飲むことと定義されることが多いが、14大学の新入生前期の10,000人以上を対象にした2006年の調査では、2週間の間に、男性の約20%が一度に10杯以上を、また女性の10%が8杯以上飲酒していたことが明らかになった。

 「午前0時から5時までの間にERに来た患者の少なくとも3分の1はアルコール中毒と推測されます」と、George Washington University Hospital のERで働いているGWU の救急医学・公衆衛生学の教授であるMary Pat McKay 氏は言う。患者の多くは大学生です、と彼女は言う。「祝日の週末や中間試験後の週末は最悪となる傾向があります」

An adolescent brain 思春期の脳

 脳がまだ発達段階にある期間の大量飲酒の影響はいかなるものだろうか?
 科学者によると、若い脳は途方もなく活動的であり、子供が毎日新しいものに出くわす時や新しい技能を習得するとき、ニューロン、すなわち神経細胞間に多数の連絡が作られている。そして 12才ごろ、科学者たちによって一種の剪定作業のようなものであると考えられている “使わなければ失われる” というプロセスにおいて、脳はその連絡を洗練化し始める。そこでは最も重要でかつ機能している連絡のみが残ることになる。
 「そういったすべての連絡を用いて脳の中で多くのやりとりが続けられます」と、Duke University の精神医学・行動科学の教授である Scott Swartzwelder 氏は言う。彼は2006年の大学新入生の binge drinking についての調査報告の著者である。「それらのうちいくつかは不必要です。私はそれを大理石の彫像になぞらえます。関係のない連絡を削り取ると、イメージが実際にどんなものかがわかってきます。そうして残された連絡はより効率の良いものとなります。気が逸らされることなく物事をじっくりと考え始めることができます。より明晰に考え始めることになるのです」
 大量のアルコールを体内への取り込むとアルコールは胃や小腸を介して血中に迅速に移行する強力な薬物となり、脳を始めとする身体のすべての臓器に到達する。
 「アルコールは身体中に移行しすべてのシステムに影響を及ぼす強力な抑制薬です」と Journal of Studies on Alcohol and Drugs の編集委員であり、San Diego のUniversity of California の精神医学教授 Marc Schuckit 氏は言う。「それは脳内のすべての神経化学システムに作用します」
 たとえば、アルコールは、喜びや報酬に関連する化学物質であるドパミンの増加の引き金になると科学者は考えている。また、脳機能を統合し、論理的思考、知能、衝動などを調節するのに重要な前頭葉の機能をアルコールが抑制すると考えている。また、何世紀も昔に初めてアルコールが摂取されて以来、記憶や学習を遮断するアルコールの作用について記述されていると、Swartzwelder 氏は言う。
 「学習、報酬、そして前頭葉、それら3つのシステムこそ、特にいまだ発達中である脳においてアルコールが強力に影響を及ぼす領域なのです」と Swartzwelder 氏は言う。彼は若年ラットでこのプロセスについての研究を続けている。

The memory deficit 記憶の欠落

 Swartzwelder 氏は、記憶を形成し技能を習得することに関与している脳の領域である海馬を中心に研究している。人の海馬はラットのそれと類似していることから、Swartzwelder 氏はおおよそ思春期に相当するラットを研究し、大量のアルコールによって海馬の適切な機能が妨げられることを明らかにした。
 人ではそれは blackout drinking と呼ばれるのだが、ラットにおいてはこれは Swartzwelder 氏によって profound memory deficit(重度記憶障害)と命名されている。それは次のような形で生ずる。十代の若者が大酒を飲むが頭は働いていて意識も失わない。しかし翌日、その人は起こったことを思い出すことができない。Swartzwelder 氏によれば、海馬はその blackout time の間、新しい記憶を符号化して記録することを停止していたのだという。
 Swartzwelder 氏によれば、ラットに一定量のアルコールを与え、その後「それらに迷路を通り抜けることを教えます。そうしておいてそれらがどのように行動するかを見るのです」
 どうやら、それらはうまくできないらしいのだが、このことは人間にも当てはまりそうである。もし学生が一日中数学の問題を勉強し、その夜に blacking out の状態となるまで飲酒したとすると、アルコールが脳組織から抜けた時点でそれらの問題すべてを再学習しなければならなくなると、Swartzwelder 氏は言う。
 「人は blackout のことを軽く言いますが、それは重大な神経学的障害を意味するものです」と、彼は言う。「もし記憶が途切れるほど強く頭部を殴られたとしたら、誰でも真剣に心配するでしょう」
 Swartzwelder 氏はアルコール摂取による海馬の障害についての生物学的説明を追求してきた。彼はラットの脳から同部を摘出し、通常の生活に類似した十分な酸素、グルコース、その他の水分を与えた。それから彼はアルコールを加え、それら脳細胞の電流を測定した。「細胞は静かになり、回路は反応を止めたのです」と、彼は言う。
 Swartzwelder 氏は、アルコール摂取による学習や記憶の欠落が永続的なものかどうかは断定できないと言うものの、彼の行った別の研究は示唆に富むものだ。彼は若年期にアルコールを摂取させた成熟ラットと一切摂取させていない成熟ラットとを比較した。両者にアルコールを与えたところ、前者のグループはアルコールによる催眠効果(この効果により自ずとアルコール摂取量が制限されることになる)に対して抵抗性であり、さらにそれらにおいては学習や記憶の能力が低下していることがわかった。
 彼によれば、このことから『思春期に繰り返しアルコールにさらされることで脳の連絡に変化が生じる』ことが示唆されるという。
 カリフォルニア州 La Jolla にある Scripps Research Institute の准教授 Michael Taffe 氏もまたアルコールにさらされた脳の構造に注目し、信号を伝達する脳細胞に成長の遅れを認めている。
 Taffe 氏は2つのグループに分けた猿を解析した。一つのグループにはアルコールと Tang(米国General Mills社の粉末オレンジジュース.)を混ぜたもの、もう一つのグループには Tang のみを飲ませた。その後彼はそれぞれのグループがタッチ画面のコンピューター検査で、どの程度うまくパターンを学習し、記憶し、反復できるかを調べた。アルコールを摂取したグループは5秒間パターンに従ったのち正確さが低下したのに対し、アルコール非摂取のグループは20秒間続けることができた。Taffe 氏はこれらの猿の脳を調べ、大量飲酒群では新たなニューロンの形成が少ないことが明らかとなった。
 「様々な種類の記憶作業と海馬との間には関係があると考えています」と、Taffe 氏は言う。「神経生物学的な損傷がありそうに思われます。また私たちが観察したことはいかにも行動様式の変化に関係しているようです」

Dings in white matter 白質内の穴

 8年前、San Diego にある University of California の精神医学の教授 Susan Tapert 氏は、当時12才から14才だった28人のグループの追跡を始めた。そのうち半数は binge drinking をすでに行っており、残りの半数は行っていなかった。研究では、Tapert 氏は毎年両グループの人たちの脳の MRI スキャンを行うとともに、両グループに様々な認知機能や技能の検査を実施した。
 その結果、飲酒者において、脳の白質(ニューロン間を連絡する線維である軸索を覆っている脂質性の髄鞘)に穴が開いたように見える MRI 上の小さな異常病変が Tapert 氏によって確認された。軸索を介して信号がニューロン間を行き来し、絶縁効果のある髄鞘はその伝達を加速させる。そのためもし髄鞘が障害されると生徒たちは認知機能検査や記憶力の検査で同じ様に良い成績を挙げることができなくなるだろうという仮説をTapert 氏は立てていた。そしてそのことが事実であることが判明した。
 「私たちは大量飲酒を行っている若者の白質部分の質的低下を認めています」と、彼女は言う。「白質は認知機能に重要です。髄鞘に覆われた軸索が多ければ多いほど、より効率よく情報が伝えられるのです」
 「アルコールは、順序付け、言語および空間機能、あるいは数学的課題などさまざまな作業における能力低下に常につながっています」と、彼女は言う。「学生たちはパズルを解いたり、本箱を作ったり、地図を読んだり、さらには高い次元での思考や体系化にも苦労します。たとえば、『こんなに宿題があります。どのようにしてそれを整理してやり終えたらよいのでしょうか?多くの評価基準を持ってすると認知機能や脳の健康度に10%の低下があることがわかります』といった具合です」
 この減弱した脳の力は永続的である可能性があるが、何が起こっているのかを完全に理解するにはさらに研究を行う必要があると Tapert は考えている。彼女たちは binge drinkers に認められる異常が禁酒で軽減されるか否かを調べている。これまでのところ「白質の異常は6週間後では正常化していないことがわかっている」が、それはその後時間とともに変化する可能性があるという。
 一方、ER はアルコール中毒、外傷、あるいはもっと悪いことに対して、非常に多くの若者を治療し続けるようになることが予測されるとDeRiso さんらは言う。
 「同じ状態ではないどれほど多くの子供たちを私が見てきたかおわかりにはならないでしょう」Montgomery County の警察官 William Morrison 氏は言う。彼は同部署のアルコール対策部の代表である。「彼らは決して学校には戻らず、脳にはダメージを持っており、時には呼吸を止めるものもいます」
 Binge drinking の文化が変わる様子は見られないと学生たちは言う。「第1学年の最初の週末には、大量の飲酒が待ち受けています」と、家族が Chevy Chase に住んでいる Vassar College の最上級生 Benjamin Palacios は言う。「昨年のハロウィーン・パーティの時には、17人が病院送りになりました」
 若者たちは飲酒を「実に『かっこいい』」と考えています、と彼は言う。「そうである限り、子供たちは出来る限り飲もうとするでしょう」

アルコールが悪さをするのが
思春期の脳だけであるという確証はない。
忘年会・新年会と酒を飲む機会が多くなる時期、
決してエビゾってしまうことのないよう(ちょっとしつこい?)
くれぐれも飲むペースにはお気をつけいただきたい。

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