現在、CSのテレ朝チャンネルでテレビアニメ『じゃりン子チエ』と『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』が放映中だ。
高畑勲監督による第1シリーズ『じゃりン子チエ』は有名なのでいいとして、問題は第2シリーズ『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』だ。1991年から1992年にかけて放映されたこの作品、関西ローカル放送(正確には、西日本の3局のみ)だったために知名度は極端に低く、第1シリーズのファンであっても観ていないという人も少なくないのではないか。
そこで、今回はこの『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』について、語ってみようと思う。
放映期間は1991年10月19日から1992年9月22日まで。約一年だが、全話数は39話しかない。これは、途中で何回か再放送と休止を挟んでいるからだ。
そもそも、この作品はまずは全13話のシリーズとして企画されたもので、「好評ならどんどん作っていく」とされていた。放映枠は土曜17時で、前番組は『三丁目の夕日』(第19話以降、関西ローカルに移行)だった。土曜17時というのは第1シリーズの当初の放映枠と同じだが、第1シリーズと違うのは、関東での放映がなく、それどころか同時ネット局は一局もないローカル放送だったことだ。
その後、年が明けて1992年2月になると、本作は枠移動する。火曜19時のゴールデンタイムに引っ越したのだ。当時、火曜19時と言えば『サザエさん』の再放送がやっていた時間帯で、あえてこの時間に持ってきたあたりに局の本気度がうかがえると言えよう。また、この作品が好評を持って迎えられたことの一つの証拠にもなるのではないか。なお、枠移動後の初回放送の視聴率は12.6%。『サザエさん』の再放送を裏に回して、十分に健闘した。
そして、1992年3月には再放送を挟むこととなった。これは、当初全13話で制作が進んでいたために、第14話以降が間に合わなかったことによる措置だろう。
この『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』のスタッフだが、第1シリーズに関わった人が多く参加していることが、特徴の一つだ。
監督の横田和善氏は第1シリーズの各話演出で、キャラクター・デザインの才田俊次氏は同じく各話作画監督だったし、他にもプロデューサーの尾崎隠通氏や脚本の高屋敷英夫氏なども第1シリーズに引き続いての参加となっている。
声優についても、極力第1シリーズと同じ人をキャスティングしようという姿勢が見られる。それでも、全員は集められなかったようで、ミツルやカルメラ兄弟、マサルにタカシと言ったキャラの声が変わってしまっているが、第1シリーズから8年たっていることを考えたら、かなりがんばった方だと思う。なにしろ、メインキャラとは言えない勘九郎やマサルの母なども同じ人がやっているのだから。
ただ、声優変更で個人的に残念だったのは、マサルの声が変わったことだ。他のキャラはまだ許容範囲内なのだが、マサルに関してはまるっきり違うイメージで、しかも第1シリーズのような小憎らしさがうまく表現されていない印象を受けてしまうのだ。本作のマサルを演じた谷真佐茂氏についてはよく知らないが、声の感じからして当時の子役だったのではないか。
演出に関しては、高畑勲監督が抜けたことで第1シリーズとは印象が変わったとも言われるが、原作の中盤のアニメ化としては妥当なところなのではないかと思う。初期のようなチエとテツの関係性をズバリ描くようなエピソード自体が、本作で描かれるあたりの原作にはあまりなかったのだ。
本作の演出家としては、高畑勲監督の演出助手も務めたことのある片渕須直氏の回がおもしろい。片渕氏は本作の全体の約3分の1ほどの話数で、絵コンテ・演出もしくはそのいずれかを担当しており、本作の演出面を語るには欠かせない一人と言えるだろう。
作画面では、京都アニメーションがローテーションに参加している点に注目したい。上宇都辰夫氏を作画監督として、原画には後に『涼宮ハルヒの憂鬱』で監督を務める石原立也氏もいて、若き日の京アニの面々の仕事の一つであるのだ。
そして、本作で気になったのはシリーズ構成だ。原作を最初から順番にアニメ化していった第1シリーズとは違い、本作は原作の様々なエピソードからアニメ化に向く話を切り取ってアニメ化しており、第1クールは特にこの傾向が顕著だ。要するに、大河ドラマ的性格のある原作を無理矢理に一話完結にしているのだ。
この結果として、たとえばカルメラ兄弟がラーメン屋を開くまでのいきさつはばっさりカットされて、いきなりラーメン屋開店のエピソードが作られることになるなど、そぎ落とされたエピソードが出る事になってしまった。
また、第1シリーズの最終エピソードで登場した応援団長が再登場する話があるのだが、続きの話にもかかわらず第2クールの途中に挟まれるというやや無理のある構成になってしまったのも残念だ。これに関してはテツに次回予告のナレーションで「10年ぶりやな」とわざわざ言わせるなど、スタッフもわかってやっていたのではあろうが。
さすがに、細切れのエピソードばかりでは無理があると判断されたのか、第2クール以降はある程度連続した話を選んでアニメ化されることになったが、それでもこの形式はちょっと残念だったと思わずにはいられない。
なお、本作は全39話であるが、本放送では第36話までしか放映されていない。
1992年9月いっぱいで火曜19時の枠での放映が終わって、10月からは再び土曜17時に戻ると告知されていたのだが、実際に土曜17時に戻ると、また第1話からの再放送となってしまったのだ。
アニメージュのスタッフコメントを読む限りでは、10月以降も新作を続ける予定であったことがうかがえるので、急に製作打ち切りが決まったのかもしれない。このあたり、詳しく知りたいものだ。
第37話から第39話も、再放送が続く中で放送されたのだとは思われるが、それがはたしていつだったのかははっきりしない。2000年頃にCSのキッズステーション(アニマックスだったかもしれない)で行われた放送では、確実に全39話が放映されていたのだが。これに関しては、私自身が録画して観たので間違いない。
そんなこんなでうやむやのうちに放映が終わってしまったが、『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』も、決して悪い作品ではない。
高畑演出以外は認めないという向きにはおすすめできないが、『じゃりン子チエ』のアニメをもっと観たいという人は、観ておいても損はないのではないだろうか。
高畑勲監督による第1シリーズ『じゃりン子チエ』は有名なのでいいとして、問題は第2シリーズ『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』だ。1991年から1992年にかけて放映されたこの作品、関西ローカル放送(正確には、西日本の3局のみ)だったために知名度は極端に低く、第1シリーズのファンであっても観ていないという人も少なくないのではないか。
そこで、今回はこの『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』について、語ってみようと思う。
放映期間は1991年10月19日から1992年9月22日まで。約一年だが、全話数は39話しかない。これは、途中で何回か再放送と休止を挟んでいるからだ。
そもそも、この作品はまずは全13話のシリーズとして企画されたもので、「好評ならどんどん作っていく」とされていた。放映枠は土曜17時で、前番組は『三丁目の夕日』(第19話以降、関西ローカルに移行)だった。土曜17時というのは第1シリーズの当初の放映枠と同じだが、第1シリーズと違うのは、関東での放映がなく、それどころか同時ネット局は一局もないローカル放送だったことだ。
その後、年が明けて1992年2月になると、本作は枠移動する。火曜19時のゴールデンタイムに引っ越したのだ。当時、火曜19時と言えば『サザエさん』の再放送がやっていた時間帯で、あえてこの時間に持ってきたあたりに局の本気度がうかがえると言えよう。また、この作品が好評を持って迎えられたことの一つの証拠にもなるのではないか。なお、枠移動後の初回放送の視聴率は12.6%。『サザエさん』の再放送を裏に回して、十分に健闘した。
そして、1992年3月には再放送を挟むこととなった。これは、当初全13話で制作が進んでいたために、第14話以降が間に合わなかったことによる措置だろう。
この『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』のスタッフだが、第1シリーズに関わった人が多く参加していることが、特徴の一つだ。
監督の横田和善氏は第1シリーズの各話演出で、キャラクター・デザインの才田俊次氏は同じく各話作画監督だったし、他にもプロデューサーの尾崎隠通氏や脚本の高屋敷英夫氏なども第1シリーズに引き続いての参加となっている。
声優についても、極力第1シリーズと同じ人をキャスティングしようという姿勢が見られる。それでも、全員は集められなかったようで、ミツルやカルメラ兄弟、マサルにタカシと言ったキャラの声が変わってしまっているが、第1シリーズから8年たっていることを考えたら、かなりがんばった方だと思う。なにしろ、メインキャラとは言えない勘九郎やマサルの母なども同じ人がやっているのだから。
ただ、声優変更で個人的に残念だったのは、マサルの声が変わったことだ。他のキャラはまだ許容範囲内なのだが、マサルに関してはまるっきり違うイメージで、しかも第1シリーズのような小憎らしさがうまく表現されていない印象を受けてしまうのだ。本作のマサルを演じた谷真佐茂氏についてはよく知らないが、声の感じからして当時の子役だったのではないか。
演出に関しては、高畑勲監督が抜けたことで第1シリーズとは印象が変わったとも言われるが、原作の中盤のアニメ化としては妥当なところなのではないかと思う。初期のようなチエとテツの関係性をズバリ描くようなエピソード自体が、本作で描かれるあたりの原作にはあまりなかったのだ。
本作の演出家としては、高畑勲監督の演出助手も務めたことのある片渕須直氏の回がおもしろい。片渕氏は本作の全体の約3分の1ほどの話数で、絵コンテ・演出もしくはそのいずれかを担当しており、本作の演出面を語るには欠かせない一人と言えるだろう。
作画面では、京都アニメーションがローテーションに参加している点に注目したい。上宇都辰夫氏を作画監督として、原画には後に『涼宮ハルヒの憂鬱』で監督を務める石原立也氏もいて、若き日の京アニの面々の仕事の一つであるのだ。
そして、本作で気になったのはシリーズ構成だ。原作を最初から順番にアニメ化していった第1シリーズとは違い、本作は原作の様々なエピソードからアニメ化に向く話を切り取ってアニメ化しており、第1クールは特にこの傾向が顕著だ。要するに、大河ドラマ的性格のある原作を無理矢理に一話完結にしているのだ。
この結果として、たとえばカルメラ兄弟がラーメン屋を開くまでのいきさつはばっさりカットされて、いきなりラーメン屋開店のエピソードが作られることになるなど、そぎ落とされたエピソードが出る事になってしまった。
また、第1シリーズの最終エピソードで登場した応援団長が再登場する話があるのだが、続きの話にもかかわらず第2クールの途中に挟まれるというやや無理のある構成になってしまったのも残念だ。これに関してはテツに次回予告のナレーションで「10年ぶりやな」とわざわざ言わせるなど、スタッフもわかってやっていたのではあろうが。
さすがに、細切れのエピソードばかりでは無理があると判断されたのか、第2クール以降はある程度連続した話を選んでアニメ化されることになったが、それでもこの形式はちょっと残念だったと思わずにはいられない。
なお、本作は全39話であるが、本放送では第36話までしか放映されていない。
1992年9月いっぱいで火曜19時の枠での放映が終わって、10月からは再び土曜17時に戻ると告知されていたのだが、実際に土曜17時に戻ると、また第1話からの再放送となってしまったのだ。
アニメージュのスタッフコメントを読む限りでは、10月以降も新作を続ける予定であったことがうかがえるので、急に製作打ち切りが決まったのかもしれない。このあたり、詳しく知りたいものだ。
第37話から第39話も、再放送が続く中で放送されたのだとは思われるが、それがはたしていつだったのかははっきりしない。2000年頃にCSのキッズステーション(アニマックスだったかもしれない)で行われた放送では、確実に全39話が放映されていたのだが。これに関しては、私自身が録画して観たので間違いない。
そんなこんなでうやむやのうちに放映が終わってしまったが、『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』も、決して悪い作品ではない。
高畑演出以外は認めないという向きにはおすすめできないが、『じゃりン子チエ』のアニメをもっと観たいという人は、観ておいても損はないのではないだろうか。
「ドラえもん名作劇場」が途中で打ち切りになって
ちえがはじまったのが納得できません。
しかも二回も・・・
ただ、『じゃりン子チエ』の責任ではないでしょうから、チエもぜひ楽しんでください。