JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

読み直し必至

2007年05月17日 | a-c

それにしても、なんだかいやな事件が毎日続きます。バンバン拳銃を発砲したり、猟奇的な殺人事件が起きたり・・・・・
世の中の何かが狂い始めている、そう思わざる得ません。会津若松の事件については、犯人が我が母の実家にそう遠くない地域出身の高校生ということもあって、我が家にも衝撃が走っております。さらに少年の心理状況など解明が待たれますが、「いつか、こんなことが起きてもおかしくない。」と思っていたのは、私だけではないようにも思えます。

とりあえず、暗い話題は置いておいて、昨日の『月刊プレーボーイ誌6月号』のお話でもいたしましょう。
『ジャズ最高読本 JAZZ IT UP !』と題された記事は、日野輝正、中平穂積、小川隆夫の対談を始め、多彩な方々の文章を楽しめる、それなりの内容であったとは思います。
いや、某ジャズ誌が1100円という値段を考えれば、880円でカワイコチャンのヌードまで楽しめるこの雑誌は、じゅうぶんにお得だとも思ったわけです。

神田神保町にあったジャズ喫茶『響』のマスター、大木俊之助氏の『モンクがジャズ喫茶にやってきた!』なんて『響』に現れたモンクの姿が目に浮かぶようで、楽しい記事でした。

ロスアンゼルスからニューヨークのケネディ空港に降り立って驚いたのは、その寒さだった。・・・・・
初めて見るニューヨークのマンハッタンも、ハドソン川も、吹雪に見舞われていたのだった。ハドソン川。夜眼に黒々とあるのがそれだ。吹雪の川は胸苦しい。
 その吹雪のハドソン川を見て私はアルバート・アイラーを思い出したのだった。アイラーの吹く「ゴースト」
 川をのぞき込む私の眼の内側でそれが鳴る。私はその特徴的なサックスを今でもスキャットできる。アイラーが自殺か、それとも他殺でか、ピストルで頭を射ち抜いて浮いたのがその川だった。雪のマンハッタンをセントラルパークそばに予約したホテルに向かいながら、実際、自分がそのアイラーの死を、死後何年も経って現場確認に来たと思ったのだった。
              (中上健次著『破壊せよ、とアイラーは言った』より)

中上健次氏が同エッセイで語られていたコルトレーンについての一遍も、紹介されておりましたが、私がこのエッセイを読んだのは二十歳過ぎの頃、じつに懐かしくなって、本箱の隅から探しだし、おもわずまた読み直しを始めてしまいました。

この『破壊せよ、とアイラーは言った』は、『岬』で戦後生まれ初の芥川賞を受賞されて間もなく、『週刊プレボーイ』誌と『青春と読書』誌に掲載されたエッセイで、それを一冊にまとめたものです。
当時、中上健次といえば、村上龍らとともにじつに勢いのある作家で、『被差別』出身というその生い立ちを知ることで、さらに興味をいだいた覚えがあります。一時はノーベル文学賞もてな話までありました。
彼にとってフリー・ジャズは作品を描く上での刺激剤であり、要因ですらあったのかもしれません。
そういえば中上氏と村上氏の対談『ジャズと爆弾 中上健次 VS 村上龍』なんて本もありましたよね。
なんだかちょうしこいて、こちらも読み直しをしそうであります。

デビス(マイルス・デイビス)が芸人、芸能人であるならコルトレーンは、同じ事を二度もやりたいくないという芸術家としか言いようのないタイプである。それに初期のコルトレーンを耳にして分かるが、出発当初、さしてうまくない。のびやかさに欠ける。つまりコルトレーンが発明家であるなら、デビスは専門技術者である。

続きをお読みになりたい方は、『月刊プレイボーイ誌』、もしくは『破壊せよ、とアイラーは言った』を・・と言ってもこの本は探しにくいでしょうから、『中上健次全集 15巻』をどうぞ。

さて、今日の一枚は、話の流れからして、アバンギャルド、コルトレーンを紹介するしかないでしょう。

コード、あるいは法・制度を"自然"と名づけてみれば、ジョン・コルトレーンのコード無化の戦いが理解してもらえるかも分からない。たとえば「メディテイション」たとえば「惑星空間」。今、戦闘が始まっているのである。絶えず人がこの世に生まれてからこの方、一度も侵略することもましてや触れることも出来なかった"自然"に、コルトレーンはコードを逆さにねじって返すように吹く。

中上健次氏はこんなことも書かれてますね。

このアルバムは、マッコイ・タイナー、エルビン・ジョーンズ二人が参加した最後のアルバムということになります。そのわりにはあまり知名度の高いアルバムではありません。それはなにより、この頃のコルトレーンがアバンギャルドな手法と精紳色の強い演奏を次々にレコーディングし、一般的なリスナーにはちょっと辛い次期であったからでしょう。
ただ、中上氏ではありませんが、コルトレーンを理解しようとするには(私は、理解したなどとけして思いもしませんが)このハードルは必ず超えなければいけないものであり、彼の精神世界に入っていく扉にも等しいものなのかもしれません。
毛嫌いせずに、何度かじっくりとお聴きになる、コルトレーンの世界が麻薬のように体内に入り込む時がきっとやってくるはずです。

ちなみに私の盤は、モノラル盤です。

MEDITATIONS / JOHN COLTRANE
1965年11月23日録音
JOHN COLTRANE, PHAROAH SANDERS(ts) McCOY TYNER(p) JIMMY GARRISON(b) ELVIN JONES, RASHIED ALI(ds)

1.THE FATHER AND THE SON AND THE HOLY
2.COMPASSION
3.LOVE
4.CONSEQUENCES
5.SERENITY

追伸、
拳銃立てこもり事件で、負傷した警官が救出されたようです。まずは良かった。
さらに追伸、
えっ!?救出されたとの速報に喜んでいたら、その時にもう一人、警察官が撃たれたのですね。左胸を撃たれたそうですが、なんとか回復されることをお祈りいたします。



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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
あの・・・ (カルロス)
2007-05-17 23:25:08
バブ様、余計なお世話ですが、中上が「中山」になってますけど・・・あえて?別人?(^^:)
僕もこの「破壊せよ・・・」は昔読みました。なんか気鋭の作家って、眼のつけどころがなんだか違いますね。
それにしても惜しい人をなくしました。
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カルロスさん (バブ)
2007-05-17 23:37:56
ははははは、笑っちゃいますね。
さっそく訂正しなければ
頭変換の恐ろしさです、一度間違うと全部違ってしまう・・・
私も文明の利器に振り回されている一人ですね。
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破壊せよ、とアイラーはいった (平泉澄)
2007-05-18 05:23:46
『破壊せよ、とアイラーはいった』、懐かしくなりました。私も若い頃、文庫本を持っていたのですが、友人に貸したまま返ってきませんでしたね。この本は現在絶版で、全集以外ではなかなか読めない状況にあります。残念です。懐かしかったので、とりあえず、まだ手元にある『ジャズと爆弾 中上健次 VS 村上龍』をめくってみました。
 中上健次は私も大好きな作家です。否、大好きなどということばで言い表せる作歌できないですね。高校時代はじめて『岬』を読んだときの身体の震えを今も覚えています。
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TB させて頂きました。 (NetHero)
2007-05-18 17:19:15
バブさん、ご無沙汰しております。
NetHero@California です。

「破壊せよ!アイラー」ネタで私も先日、書きましたので、TB させて貰いました。

日本もピストルがらみの事件が増えて、段々アメリカに近づいてきたですよね。

コルトレーンの Meditation は持っているのに、最後まで聴き通したことが未だ一度もないアルバムの一つです。
近々、体調の良い時に再度トライしてみます。
因みに Live in Seattle も最後まで聴き通したことが一度もありません。(泣)
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平泉澄さん (バブ)
2007-05-18 21:24:57
コメントありがとうございます。
『岬』で、男性性器を「罪つくりなこんなもん」と女性が叫ぶシーン、鮮明に蘇ります。じつに衝撃的な小説でしたよね。

彼の「紀州サーガ」と呼ばれた独特の土着的作品は、じつに人間臭く、正直な恐ろしさがあったように思います。

小説も読み直したりして(笑)
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NetHeroさん (バブ)
2007-05-18 21:28:18
TBありがとうございます。

ほんとうに、拳銃がらみの事件が増えてしまいました。怖い世の中です。

ふむふむ、最後まで聴き通せませんか・・・
分かります。
分かりますが、A面B面に分けて、最後にはいっしょに、みたいな感じで挑戦してみてください。
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