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佐藤忠良「えぞ鹿」 ユカンボシ川河畔公園彫刻広場(2)

2020年05月20日 08時19分59秒 | 街角と道端のアート
(承前) 

 まずは、図録から引用します。

六歳の時から北海道の風景の中で育てられた私に、恵庭市からの要請で彫刻設置の課題を与えられ、作品構想のためユカンボシ川河畔のせせらぎの現地に立ったとき私は、迷うことなく植物たちが放つ四季の清澄な空気漂う中に「えぞ鹿」を、活き活きと跳ね上がらせ、此処を訪れる人々と共に北の国の忘れ得ぬ空間が共存でき得ればの願いを籠めながらの制作であった。


 佐藤忠良(1912~2011)は、日本を代表する具象彫刻家のひとりで、宮城県生まれ、夕張育ち。学んだ旧制中学は札幌二中(戦後の札幌西高)で、そこから東京美術学校(戦後の東京藝大)に進みました。
 大通公園12丁目の「若い女の像」や、旭川・買物公園の「若い女・夏」などで、このブログを読んでいる道内の人なら、知らない人はいないであろう大きな存在です。
 ちょっと意外なところでは、教科書や絵本でおなじみの「おおきなかぶ」の挿絵を描いた人でもあります。
 札幌芸術の森野外美術館には「佐藤忠良記念子どもアトリエ」があります。


 さて、この作品は、前項冒頭画像の、ユカンボシ川河畔公園彫刻広場の入り口から最も近い位置にあり、いわばこの広場のシンボル的な作品になっています。
 同時に、6点中唯一の具象作品で、彫刻広場への入門としてとっつきやすく、ふさわしい作品と思われます。

 図録の酒井忠康さんの巻頭文によれば
「積雪を考慮に入れて、ちょっと高い設定になっています」
とのこと。
 巨大すぎず、彫刻広場の緑にちょうどとけ込むような大きさです。

 「ユカンボシ」はアイヌ語由来で、語源にはいろいろな説がありそうですが、語頭の「Yuk」がシカであることは間違いなさそうです。
 そのことも、佐藤忠良さんがシカという題材を選んだ一因でしょう。

 エゾシカは、北海道ではそれほど珍しくなく、郊外を車で走っていればちょくちょく目撃します。
 しかし、この彫刻のように、躍り上がっている姿を見ることは多くないでしょう。
 単にたたずんでいるシカだと、緑の中にいても、あまりおもしろくないわけで、こういう動感あふれる姿態につくりあげたことにも、佐藤忠良さんのセンスを感じます。


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恵庭市のユカンボシ川河畔公園彫刻広場
佐藤忠良「えぞ鹿」
渡辺行夫「ドン・コロ」
植松奎二「樹とともに―赤いかたち」
山本正道「時をみつめて」
丸山隆「Cube」
山谷圭司「にぎやかな遡行」




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