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佐藤忠良「鎮魂の像」

2014年10月15日 23時17分00秒 | 街角と道端のアート
承前

 「そらち炭鉱(やま)の記憶アートプロジェクト2014 点から線へ」を巡る旅の続きである。

 ズリ山を降りて、清水沢地区での行程を終えて、車を北方へと走らせる。

 今回のプロジェクトは夕張・清水沢と三笠・奔別 ぽんべつ 、およびその両会場を結ぶ送電線が主役で、夕張・本町地区では、石炭博物館ロビーが関連展示として挙げられている。

 以前にも書いたが、「夕張」というと、市役所があり、かつて「石炭の歴史村」などの観光地があり、夕張駅があり、ホテルがあって国際映画祭の会場となる、本町地区周辺を思い出す人が多いだろう。
 しかし、実際には夕張に限らず、かつての炭鉱町は、複数のヤマからなる連合体のようなものであり、それぞれに商店街や学校を有していた。
 夕張市も、本町地区以外に、真谷地、清水沢、南部といった各地区がある。そして、80年代以降は、本町よりもむしろ清水沢の方が人口も多くなっている。
 筆者自身は、直接夕張の人から聞いたわけではないが、清水沢など夕張の南のほうに住む人は、1980~90年代、巨額の観光予算が本町地区周辺の北のほうにばかり投下されるのを、苦々しい思いで見ていたのではあるまいか。

 それはさておき。
 石炭博物館は以前見たことがあったので、少し悩んだが、いちおう行ってみることにした。

 車は本町地区を横目に走りすぎる。
 美術館は跡形もなくなっており、フェンスに「不要公共施設解体工事」とあった。
 単に「不要施設」だったかもしれない。
 なんだか、切なくなる。

 かつて「石炭の歴史村」として多くの施設が建てられた一帯は、みやげ店などの大半が閉鎖されており、こちらも痛ましい。

 駐車場に車をとめて、えっちらおっちらと坂を上っていったら、博物館の前に、佐藤忠良作の彫刻が設置されていた。

 いうまでもなく、佐藤忠良(1912~2011)は日本を代表する具象彫刻家のひとりである。
 生まれは宮城県だが、幼少時を夕張で過ごし、旧制札幌二中(現札幌西高)に学んだ。
(16日、学校名を訂正しました)

 釧路の幣舞 ぬさまい 橋など、各地に野外彫刻が立てられている。

 ただ、この夕張の作品は、佐藤氏が自ら制作、寄贈したものであるらしい。1986年のこと。

 台座前面には自筆の言葉が刻まれている。
 
 石炭によって発展し
  百年の歴史をつくってきた夕張
 その中で郷土の礎となった
  あまたの炭鉱殉職者に捧ぐ


 立像は、少し顔を下に向け、右肩を前に出している。
 深く沈みこむような表情は、たしかに、希望を表現しているというよりは、歴史に思いをはせているようである。

 なお、この像がたった1986年は、死者62人を出した三菱南大夕張炭鉱ガス爆発事故の翌年である。

 同炭鉱は最新鋭の設備を誇ったが、90年に閉山。夕張にとって、最後の炭鉱となった。

 鎮魂の像は、まだ夕張に炭鉱があり、事故の記憶が生々しい時期に設置されたのである。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
紅葉がきれいです! (怜な)
2014-10-21 09:43:12
おはようございます。

「そらちの記憶アートプロジェクト2014」をめぐる旅、楽しく拝読しています。紅葉の写真がとてもきれいですね。

石炭博物館は夕鉄バス停から5分ほどの所、桜?新緑の季節にでも行きたいと思っています。
返信する
怜なさん、おはようございます (ねむいヤナイ@北海道美術ネット別館)
2014-10-21 19:27:26
紅葉、きれいですよね。
今後も続きますので、よろしくご愛読のほど、お願いします。
返信する

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